不動産を売却するときには、さまざまな費用がかかる。売却価格が大きくなると、かかる費用の金額もそれなりに大きくなるため、売却する前にはいくらぐらいかかるかを把握して、支払いに備えておこう。今回は、不動産売却にかかる費用の種類と、それぞれがどのぐらいかかるかについて徹底解説する。

不動産売却にかかる費用は大きく4つ

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(画像=PIXTA)

不動産売却にかかる費用は、大きく4つに分類できる。それぞれの費用について簡単に見ていこう。

1 仲介手数料
仲介手数料は不動産の売却時に不動産会社に仲介を依頼する場合に必要となる費用だ。不動産会社は、仲介の依頼を受けて売り主が不動産をより良い条件で売却できるように支援する。具体的な仲介業務には、売却物件の広告宣伝活動、売買契約の書類作成や決済の対応などさまざまだ。売買契約が締結されると、これらの業務に対する報酬が発生し、仲介手数料の支払いが必要になる。

仲介手数料は売却価格に対するパーセンテージで決まるため、不動産売却にかかる費用の中でも高額になることも少なくない。売り主と買い主が不動産会社を仲介せずに不動産を売買することもできる。しかし、不動産の売買には、専門性が高い内容が多く登記手続きも付随してくるため、難しいチェックポイントが多い。専門家を通さないと、後々大きなトラブルになる可能性もある。

個人同士で売買取引した場合は「仲介手数料よりもトラブル対応でお金がかかってしまう」といったことになりかない。そのため、不動産売買にはやはり専門家を通すことを基本として、仲介手数料は必要な費用として事前に計算しておくのが賢明だ。

2 売買契約書にかかる印紙税
不動産売却時に締結する売買契約書は、法律で定められている金額の印紙を貼り、印紙税を納めることが必要だ。売買契約書は原則2通作成し、売り主と買い主で1通ずつ所持する。印紙税の金額は、売却価格によって決まっており、例えば売買金額が10万円超50万円以下の場合は200円、50億円超の場合は48万円だ。(軽減措置後の金額、2014年4月1日から2020年3月31日までに作成された不動産売買契約書が対象)

3 抵当権抹消などの登記費用
不動産の売却には登記費用もかかる。住宅ローンを組んでいた場合は、物件に金融機関の抵当権が設定されているため、抵当権の抹消は売り主の責任で行う。また、住所変更登記や氏名変更登記も売り主側で行うことが必要である。買い主側責任では、土地や建物の所有権移転の登記だ。

4 その他費用(解体費・廃棄処分費・測量費など)
1~3までは、不動産売却にはほぼ必須の諸費用だ。しかし、ほかにも状況によっては諸費用がかかる。例えば、古い建物付きの土地では売れない可能性が高いため、建物を解体する場合には解体費用が必要だ。また、建物内に不要なものがある場合は、廃棄処分費もかかる。さらに「土地の境界があいまい」「登記簿に公募面積しか掲載していない」という場合もあるかもしれない。

こういった測量をしないと不動産を売却しにくいケースは測量費が必要となる。売却対象の土地や建物を人に貸し出していて、立ち退きしてもらう場合に必要な立ち退き料も不動産売却にかかる諸費用だ。このようにケースバイケースで不動産売却時に必要な諸費用が増えることもある。「自分のケースはどうなのか」を確認することで、諸費用見積もりの精度を上げていこう。

不動産会社に支払う仲介手数料はいくらかかる?

不動産会社に支払う仲介手数料がいくらになるかは、法律により上限割合が決められているため、売買価格さえ分かれば明確に把握可能だ。仲介手数料の計算の仕方について見ていこう。

仲介手数料は売買価格の3%+6万円+消費税

仲介手数料は、宅地建物取引業法第46条(報酬)と「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号) によって上限が決まっている。その範囲内なら不動産会社は仲介手数料を自由に決めることが可能だ。仲介手数料の上限額を計算する具体的な方法は以下の通りで段階的にパーセンテージは下がっている。

・200万円以下の部分:売買価格の5%以内+消費税
・200万円超~400万円以下の部分:売買価格の4%以内+消費税
・400万円超の部分:売買価格の3%以内+消費税

不動産の売買は、多くの場合400万円を超える取引となるため、便宜上仲介手数料の計算式は「売買価格の3%+6万円+消費税」と記載されることが多い。計算式の「6万円」とは、400万円以下の部分で、売買価格の3%を超えた部分の金額のことだ。この金額を足し込むことで、計算式を簡略化できる。例えば、不動産が3,000万円で売却できたとすると、仲介手数料は96万円+消費税となる。

ただしこの上限には例外がある。低廉な中古住宅の売買を仲介する場合、仲介手数料が非常に安い割に現地調査に時間がかかってしまうため、救済措置があるのだ。このケースでは、仲介手数料以外に現地調査費用などとして上限18万円+消費税を別途請求できることも押さえておきたい。

仲介手数料には上限が設けられていることを知ろう

先ほどの計算式にあてはめて導き出せる仲介手数料は、あくまでも上限額だ。法規制がかかっているため、これ以上の仲介手数料を求めることは法律違反となる。仲介手数料の予算としては、上限額で見積もっておけばいいだろう。また、上限額を知ることは、法律違反を犯して高額の仲介手数料を請求する不動産会社や、異様に安い仲介手数料しか提示していない不動産会社を見分ける材料となる。

計算式は簡単なので売買価格を見積もった時点で、仲介手数料がいくらぐらいになるか確認しておこう。

売買契約書にかかる印紙税とは?

印紙税とは、印紙税法で課税文書と定められた文書に対して納める税金のことである。対象の課税文書に印紙を貼りつけ、消印(印紙の上に印鑑で印をつけること)することで納税は完結。不動産の売買契約書は、印紙税法で第1号文書として定められているため、印紙税を納めなければならない。印紙税の金額は、不動産の売買金額(税抜き価格)によって定められている。

国税庁「売買金額と印紙税額の一覧表」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm

抵当権抹消などの登記費用

不動産売買において必要となる登記のうち、売り主が負担する必要のある登記費用は「抵当権の抹消」「住所変更登記・氏名変更登記」だ。これらの登記費用は、登録免許税と司法書士への報酬を合わせた金額になる。司法書士に登記手続きを委託する場合は司法書士への報酬が含まれる。抵当権の抹消にかかる登録免許税は1物件1,000円だ。

例えば、土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合は2物件とカウントされるため2,000円が必要になる。住所変更登記・氏名変更登記は、不動産売却によって所有権の移転登記をする前にやっておくべき登記である。これらの登記も1物件につき1,000円必要だ。登記は、売り主自身が行うこともできるが、司法書士に頼むこともできる。

司法書士に頼む場合は、司法書士への報酬も必要な費用だ。報酬の金額は司法書士ごとに細かく違いがあるが、合わせて2万円程度は見積もっておきたい。

その他費用

ここからは、必要に応じて支払わなければならない費用について解説する。自分のケースにあてはめて必要な費用を確認してほしい。

引越し費用

マイホームの売却などで、売却に伴って引っ越す場合、引越し費用も見積もっておこう。引越し費用は、引越す世帯の人数や荷物の数、移動距離、引越日といった多くの要因が絡み合い、かなり大きく変動する費用だ。概算でいうと、同一都道府県内で4人家族の引越しなら、ハイシーズンでなければ12万円程度見積もっておくと良い。

買い替えの場合に注意したい点は、売却したマイホームからすんなり買い替え物件に引っ越せないケースがあることだ。この場合は、いったん仮住まいに引越し、買い替え物件への入居が可能となってからもう一度引越さなければならない。引越し先が賃貸物件の場合は、敷金・礼金や家賃なども発生する。できれば避けたいパターンだが、最悪の場合を想定し、2度引越しパターンでかかる費用も計算しておきたい。

リフォーム・クリーニング費用

「建物が老朽化していて現状のままでは売却できない」という場合、リフォームやクリーニングをして、物件の魅力を上げることも時には必要だ。内覧前にリフォームやクリーニングをしておくと、購入希望者の心証も良くなる。このときにかかるリフォーム費用やクリーニング費用も不動産売却に伴って必要となる諸費用に含まれる。

株式会社リクルート住まいカンパニーが行った「2017年大型リフォーム実施者調査」(300万円以上直近3年以内の人を対象)によるとリフォーム費用の平均は610万4,000円だった。そのため物件の状態によっても大きく金額は異なるが築10~20年を目安に600万円程度は見積もっておきたい。部屋全体のクリーニング費用は、キッチンとバスルームなど水回りだけなら3万円ぐらいで済む。

リフォーム・クリーニング費用を節約したい場合は、「売り出価格を安くして買い主側にリフォームをしてもらう」という方法もある。その場合は、売却価格からリフォーム費用分の代金を値引きして売り出すことも時には必要だ。リフォーム費用はかなり大きな金額になるため、慎重に検討してから出費するかどうかを判断しよう。

土地境界確定測量費用

売却する土地の境界がはっきりしなかったり一度確定していた境界線が分かりにくかったりする状態の場合、土地の脅威を確定するための測量が必要だ。土地の境界を確定する測量は、土地家屋調査士が行う。土地の境界線がはっきりせず、確定測量図もない場合はもちろん、確定測量図があっても境界を明確にするフェンスや境界杭がない場合も測量は必要だ。

確定測量図がない物件は、買い主側としてもトラブルの元なので避ける傾向にあり、なかなか売却できない可能性がある。測量結果を「確定測量図」としてまとめるまでの平均的な期間は3~4ヵ月程度。しかし、隣接する土地の所有者が測量を許してくれない場合は、さらに長引くこともありえる。平均的な費用は約40万円で、土地が広い場合や隣接する土地が国有地など公的な土地の場合は費用が高くなりがちだ。

土地境界確定測量はお金も時間もかかるが、やっておかないと物件がなかなか売れない可能性がある点は懸念材料となる。たとえ売れたとしても、あとでトラブルになる可能性もある。隣接する土地の住民にも協力を仰ぐ必要があるため時間もかかるが、確実な売却とトラブル防止のためには確実に測量をしておこう。

費用廃棄物の処分費

不動産を売却する際、もし産業廃棄物が残っていれば、その処分費も検討する必要がある。産業廃棄物をそのままにして不動産を売却することはできない。産業廃棄物として業者に頼む場合、産業廃棄物の残り方にもよるが30万~50万円かかる場合もある。

ローン返済が残っている場合に発生する手数料

不動産売却時に住宅ローンが残っている場合は、一括でローンを返済することが必要だ。ローンの一括返済は金融機関によっても大きく異なるが手数料が1万~3万円程度かかる場合がある。少額ではあるが、この費用も必要に応じて諸費用計算の際組み入れておこう。

購入価格を上回る売却価格の場合は不動産譲渡所得税に注意!

売却する不動産の購入価格を上回る価格で売れた場合、不動産の譲渡で得た所得となり、所得税・住民税を支払う義務が生じる。マイホームを売却する場合は3,000万円の特別控除があるため、3,000万円以下であれば税金はかからない。3,000万円の特別控除を用いても譲渡所得が残る場合、取得費や譲渡費用を差し引いて、残った金額に対して課税金額を計算する。

取得費とは、売却不動産を購入したときにかかった費用で、譲渡費用は売却時にかかった費用のことだ。取得費が大昔で契約書などもなく内容が不明な場合などは、売却価格の5%と見なして差し引いて良いというルールがある。しかし、実際に購入した費用などが分かるほうが支払う税金は低くなるだろう。そのため、取得費や譲渡費用を証明する領収証などの必要書類は、意識して集めておいて確定申告の際に提出できるようにしておこう。

不動産の所有期間が、売却した年の1月1日時点で5年を超えている場合は、長期譲渡所得として軽減税率が採用される。長期譲渡所得・短期譲渡所得それぞれの税率は以下の通りだ。

・短期譲渡所得
所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%=合計39.64%

・長期譲渡所得
所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%=合計20.315%

例えば、譲渡所得が3,600万円で8年間住んでいたマイホームを売却した場合は、長期譲渡所得となり以下の計算で譲渡所得税が計算できる。

・3,600万円-3,000万円×0.20315=121万8,900円

不動産売却によって利益を得た場合は、かかってくる税金も確実に支払おう。

不動産売却の手数料を安く抑えるためには

ここまで見てきた通り、不動産売却に伴って得られる売却価格が高く、購入価格よりも上回っている場合は、いくつか用意されている特別控除を調べてみよう。売却する不動産の条件によっては、大きな特別控除を受けられる。以下に、特別控除の種類をまとめたので活用してほしい。

特別控除を受けよう

不動産を売却して譲渡益を得られる状態なら、以下の特別控除が使えないかどうかを確認しよう。これらの控除を確認して、利用できそうな特別控除は以下の通り。それぞれの細かな適用条件については、国税庁のサイトをチェックしてほしい。

【3,000万円特別控除】
マイホームを売却した場合に利用できる特別控除。「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」として、一定の条件を満たした場合に3,000万円の特別控除が受けられる。

国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

【1,000万円特別控除】
2009年および2010年に取得した土地で、その土地が国内にある場合は、1,000万円の特別控除の特例が受けられる。かなり限定的な条件だが、この時期に取得していた土地なら1,000万円の特別控除が受けられるためチェックしておこう。

国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3225.htm

【被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除】
親族が住んでいた家を空き家状態で相続していて、その空き家を売却する場合にも、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」により、3,000万円の特別控除が受けられる。相続してからの年数など、細かい条件が付いているので自分の場合は該当するのかどうかをしっかり確認しておこう。

国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

【所有期間10年超の軽減税率の特例】
マイホームを売却した年の1月1日時点で所有期間が10年以上経過している場合、長期譲渡所得の6,000万円分にかかる所得税が15%から10%に軽減される。10年間以上所有していたことを証明するには、「売った居住用家屋やその敷地の登記事項証明書」を法務局から取得して確定申告しなければならない。

国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm

事前に必要な費用の概算を把握しておこう

不動産売却における手数料や税金などについて解説した。ここまでで取り上げた費用と、その概算をまとめておこう。

・仲介手数料:売買価格の3%+6万円+消費税(400万円以上の取引の上限の金額)
・印紙税:売買価格によって定められている、売り主は必要ないケースが多い
・登録免許税:抵当権の抹消、住所変更登記、氏名変更登記は1物件あたり1,000円
・司法書士への報酬:2万円程度
・引越し費用:4人家族で同一都道府県内として12万円目安
・リフォーム費用:600万円程度(築10~20年の場合)
・クリーニング費用:3万円程度
・土地境界確定測量費用:40万円程度から、条件によってはさらに高額になる
・産業廃棄物の処分:30万~50万円(残置されている場合)
・住宅ローンの繰り上げ返済手数料:1万~3万円程度
・不動産譲渡所得税:5年以下の場合税率39.64%、5年を超える場合税率20.315%

諸費用の中でも仲介手数料は高い。また建物をリフォームして売却する場合は、リフォーム費用もかかる。自分のケースでは、どの費用が必要になるかをチェックして事前に準備しておこう。