「査定」は不動産を売却する際に一番重要な要素だ。

しかし不動産の査定で気をつけなければいけないことは、意外に多いことをあなたはご存知だろうか。

不動産の査定通りに売却を完了した後に査定額を計算したら、相当安い価格で売却してしまった。

このようなことが実際に起こりえるのが不動産売却時の査定なのだ。

今回は不動産売却における査定で、少しでも大きな金額を引き出し、売却益を最大化するべく、不動産査定に関する情報を細かく解説していく。

不動産の売却で査定を行う理由とは

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(画像=docstockmedia / Shutterstock.com)

自身が保有する不動産を売却する際に必ず行うのが「査定」だ。

何故、査定をするのかというと、不動産の価格を第三者の目から見た際に「売れる価格」を設定しないといけないから。

よほど良い物件でない限りは、強気の価格設定では売ることができない。

従って、第三者の公正な査定が必要なわけだ。

では査定をどの様に行うのかというと、不動産会社に所属する「不動産鑑定士」に依頼する。

査定依頼をする際に気を付けなければいけないのが、「複数の不動産会社に依頼する」ことである。

不動産会社は後述する項目を見て査定価格を割り出すのだが、不当に低い査定価格を出す不動産会社も多く存在する。

従って、複数の査定会社に依頼することで、多角的に判断して、「一番利益がでて、売れる」公平価格を設定した方が良い。

それでは、不動産鑑定士はどの様な項目をみて判断するのか。

判断基準になるのは、以下の4項目だ。

・近隣の物件の価格
・物件価格を公示価格や路線価ベースで判断
・立地条件から相場を割り出す
・物件の条件から価格を算出

各項目がどの様なものか、どの様な点に注意したらよいのか、それぞれ見ていこう。

近隣の物件から相場を割り出す

不動産価格は地域の相場が、大きく価格に作用する。

簡単なイメージをして見てほしいのだが、いくら条件の良い物件だとしても東京と青森だったら、東京の方が人が集まるため立地条件から東京の方が相場が高くなる形だ。

実際は上記の形で、簡単に決定はしないが、自分が所有する不動産近隣の相場を確認することは大切である。

最新の相場を確認するには、「土地総合情報システム」 を使って確認できる。

・不動産取引価格情報検索
・地価公示都道府県地価調査

上記のデータベースを活用できるので、不動産鑑定士に依頼した金額が不当でないか判断する際の基準としてほしい。

また後述するが相場を確認するだけでなく、相場から大まかな査定価格を算出することが可能だ。

不動産会社が算出した、査定価格と自分が算出した価格を比べて、査定価格を分析してみよう。

公示価格や路線価をベースに物件価格を判断する

公示価格と路線価を知らない方のためにまずは語句の説明をする。

公示価格・・・地価公示法に則って、毎年1月1日に国土交通省土地鑑定委員会が公示する価格のこと

路線価・・・路線価は別名、相続税評価額ともよび、「相続や遺贈」や「贈与により取得した財産に係る相続税や贈与税」の財産評価をする場合に適用する評価基準。毎年7月に政府が発表しており、公示価格と共に信頼できる指標だ。

公示価格は国が決定する土地の価格と分かりやすいが、路線価がしっくりこない人が多いのではないだろうか。

簡単に説明すると、路線価は相続税や路線価を計算する時に必要な評価基準と考えていただければ大丈夫だ。

路線価の割り出し方法は、公示地価の8割が目安となり逆に公示価格が分からない場合は路線価に1.25倍をして算出する。

公示価格や路線価が知りたい方は以下を参照するとよい。

・国土交通省地価公示、都道府県地価調査
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

・財産評価基準書路線価図、評価倍率表
http://www.rosenka.nta.go.jp/index.htm

立地条件から相場を割り出す

前述したが、立地条件は不動産の査定に大きな影響を及ぼす指標の一つだ。

立地条件評価算出の例
・公共交通機関までの距離
・公共施設までの距離
・金融機関との距離
・商業施設との距離
・駐車場との距離
・治安

様々な要因があるが、多くは各施設や公共機関との距離で算出される。

公共交通機関とはバスや電車の事で、ここまでの距離が短いということは、毎日の通勤や通学時間が減るため、物件を購入する人にとって大きなメリットとなる。

公共施設や金融機関、商業施設、駐車場も同様の理由だ。

治安に関しては言うまでもないが、治安がよければ住みやすいし、治安が悪ければ、住みづらい。

これらの条件がよければ、お客様に売りやすい物件なため査定価格の上昇がみこめる。

具体的な数値を出すことはできないが、参考程度にはなるため確認しておこう。

物件の条件から価格を算出

立地条件と共に重要視される指標が「物件の条件」だ。

物件の条件
・物件の外観が大丈夫かどうか(外壁や屋根に損傷がみられないかどうか)
・物件内の設備が充実しているかどうか
・間取り
・防犯対策
・部屋の方角
・眺望

物件の条件では、物件全体の状態を判断する他にも、住みやすいかという住環境も重視される。

居住者が不動産を決める際の重要な要因の一つのため、どの様な点に着目されているのかを覚えておきたい。

こちらの項目も立地条件と同じく、不動産会社が物件を手にした時に、「果たして売れるのか?」というところからきている。

立地条件と同じく、数値を計算できるものではないため、正確な査定予想は不可能である。

従って、参考程度にはなるものの、しっかり確認しておこう。

優良な企業に査定を依頼するには

自身の不動産を売却する際は、少しでも高い価格で売却をしたいもの。

しかし、優良な不動産会社を探すのは骨が折れる。

何故このように面倒なのかというと、不動産会社が利益を上げるために査定価格をいじってくるのもそうだが、判断基準が多すぎるのが大きな理由だ。

不動産売却の査定は、様々な形で相場を計算することができ、計算以外にも要素が複雑に絡み合う。

従って、各不動産会社において査定価格が大きく違ってしまうのが問題だ。

それでは、どのようにして優良な不動産会社を見つけるのか。

優良な不動産会社を探すために必要な要素を二つ挙げると「相場を自分で理解している」ことと、「依頼した不動産会社が近隣物件の情報を開示してくれるか」どうかだ。

上記2つについて、詳しく説明していく。

相場を自分で理解している

不動産査定をする際の判断基準を説明してきた訳だが、「自分が査定する訳ではなから詳しく勉強する必要はない」と考える方が多いのではないだろうか。

しかし、上述した通り不動産会社の中には不当な査定をしてくる場所も多い。

従って、不動産査定の判断基準を自分で知っていないと、損失をだしてしまう可能性が高くなってしまうのだ。

前述した不動産査定の基準を勉強していれば、不動産鑑定士が査定を行うほど正確ではないにしても、大まかな査定を自身で算出可能である。

自分が不動産会社に査定を依頼した際に、自分が出した査定と大きく価格が異なるのであれば、査定に対して、疑問を持つことが可能だ。

また実際に相場を計算する方法を解説していくので、自分が査定に出した価格がどうなのか確かめよう。

路線価から大まかな相場を予想する

前述した「路線価」は実際の相場を計算する上で非常に役立つ指標だ。

土地の大まかな相場は路線価を公示価格に戻し、流通性比率を掛けることで算出する。

「流通性比率」とは、不動産会社が「物件が実際に売れるかどうか」を割合とした数値である。

不動産を購入する層との認識のズレや査定する物件地域の不動産受給を考えて「流通性比率」が算出される。(流通性比率は1が基準となり、0.93%~1.07%の間で変動)

何故このような比率があるのかというと、不動産会社側も実際に売れるかどうかを見なければいけないため、査定価格を大きく出さずに自身の利益を保守するためだ。

従って、いくら他の条件が良かったからといって、「流通性比率」が悪かったら、低い査定価格が出てしまうことを頭の隅に入れておこう。

以下が路線価を使用した大まかな相場の計算方法だ。

大まかな相場=路線価÷0.8÷0.93

上記では、流通性比率を一番低い「0.93%」にしており、「0.8」は上述の公示価格の8割が路線価からきている。

上記出された、大まかな相場に土地の面積を掛けると、おおよその査定価格を計算できるので査定価格が不当かどうか確認する目的で計算してみよう。

固定資産税評価額から大まかな相場を算出

不動産、特に土地を所有している人は、一年に一度送られてくる「固定資産税評価額」を見たことがあるだろう。

路線価は公示価格の8割だったが、固定資産税評価額は公示価格の7割程度の価格となっている。

そのため、固定資産税評価額を0.7で割った数値が大まかな相場となる。

固定資産税評価額は、市町村が発行する書類のため、非常に信頼性が高く算出がしやすい。

先程、路線価での算出方法も記載したが、「流通性比率」の性質上、算出結果の信用性が低い。

信用性が低いとする理由は、流通性比率が変化するだけで、査定価格が数百万円以上変化することからも明らかだ。

従って、大まかな相場を算出する方法としては、「固定資産税評価額」を用いるのが、オススメだ。

原価法を使用して算出する

原価法とは、不動産の再調達原価から大まかな相場を算出する方法だ。

原価法は不動産鑑定士が評価を行う方法となるので、内容が少し難しい。

まず原価法を用いる際に重要になってくるのが、再調達原価というものだ。

再調達原価とは、今の不動産をもう一度立て直すとしたら費用がいくらなのかという指標。

次に減価修正と呼ばれる、築年数によってどれくらい価値が低下しているかを差し引く。

原価法の特徴は、過去に建築した時の価格を参考にするのではなく、「現在立てたらいくらか」を基準とするため、より正確な数字が期待できるという訳だ。

近隣物件の情報について開示してくれるか

不動産会社は上述した不動産査定の項目以外にも、「近隣物件の販売状況」や「近隣の販売実績」に関しても情報を得ている。

実際に不動産会社が物件を手にした際に物件が売れないのでは意味がない。

従って、「近隣物件の販売状況」や「近隣の販売実績」は不動産会社が把握している可能性が非常に高い。

これらの情報を親切に開示してくれる不動産会社は、査定に関する情報を開示する透明性の高い会社だということだ。

しかし、これらの情報を開示しない場合は不当な査定額にしている可能性があるため、不動産会社に質問するなどしてよく確認する必要がある。

不動産査定に関しては、ただ不動産会社に査定を頼むだけでなく、不動産査定会社を見極める姿勢で臨んでいくのがベストだ。

また少し手間はかかるが地域の不動産会社などに「近隣の販売状況」や「近隣の販売実績」を聞くのも手だ。

そこまでやるのかと考えるかもしれないが、不動産界隈はクローズドな環境のため、少しでも生の情報を取得することは大切。

近隣の物件情報もそうだが、集められる情報は集められるだけ、揃えて査定に臨もう。

また、信用性が高い調査方法のみを選択するのではなく、様々な方法で調査をして多角的に判断することを心がけよう。

不動産の価値を高めて高い利益を出すためのコツ

不動産の査定価格を少しでも高くするためにはどうしたら良いのだろうか?

不動産の価値を高める手段としては、リフォームやリノベーション、大規模修繕といったものがあるが、今回は査定の際に、不動産の価値を高める方法を解説していく。

不動産の価値を高めるには多くの手法があるが、代表的なものは、次の3つだ。

・複数の業者に査定の依頼を出す

こちらについては

・節税についての知識をつけておく
・1〜3月に売却すると価格が高まる

小さな積み重ねが多く、手を抜きたくなってしまうが、こういった部分を積み重ねれば、最終的な売却益は大きな差がつく。

それでは、1つずつみていこう。

複数の業者に査定の依頼を出す

不動産を売却する際に、必ずやらなければいけないのが「複数の業者に査定依頼をだすこと」だ。

前述しているが、不動産会社の中には不当な査定結果を出す業者も多い。

上述しているが不動産の物件価値の取得方法は多岐渡るため同じ査定価格が出る方が珍しくやり方によっては数百万円以上異なる。

そのため、複数の業者に査定を依頼して一番価格が高い不動産会社に依頼を行うのがベストだ。

節税について知識をつけておく

不動産を売却する際は、「不動産会社に売却して終わり」というわけではない。

事業者の方はご存知だと思うが、利益に対しては必ず税金が発生する。

今回の不動産売却もしっかり課税され、不動産売却益の課税譲渡所得金額に課税がされる。

課税譲渡所得金額は譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除で算出される。

・譲渡価額は不動産の売却益
・取得費は不動産を取得する際に掛けた金額。購入価格から減価償却を引いたもの
・譲渡費用は不動産を売却する際にかかった仲介手数料など
・特別控除は特定の条件をみたすと、控除してもらうことが可能

普段、税金になれていないと、理解しにくいが、売上から上記の項目を引くと課税譲渡所得金額が算出されるということだ。

それでは不動産を売却した際の税金をみていこう。

不動産を売却した場合は、「不動産譲渡所得税」というものが掛かる。

・短期(5年以下) 長期(5年越) 長期(10年超)
居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% ・課税譲渡所得6千万円以下の部分 所得税10.21%+住民税4%=合計14.21%

・課税譲渡所得6千万円以下の部分
所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%
非居住用 所得税30.63%+住民税9%=合計39.63% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315% 所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%

不動産購入後5年以内に売却してしまうと所得税30.63%と住民税9%あわせて合計39.63%も税金がかかってしまうが10年以上所有した物件であれば税率が課税譲渡所得6千万円以下の部分が所得税10.21%と住民税4%で合計14.21%、課税譲渡所得6千万円以下の部分が所得税15.315%と住民税5%で合計20.315%となる。

以上のことから不動譲渡所得税や住民税は長期でもっていた場合は軽減税率が使用されるため、10%以上節税することが可能だ。

また控除の中には3千万円や5千万円といった額を控除できる場合もあるので、自分のケースがどのパターンに当てはまるのかをしっかり確認しておこう。

しかし売り時によっては節税以上の利益がでるときもあるため一度計算することが大切だ。

1〜3月に売却すると価格が高まる

1~3月時期というのは4月年度が変わることから住宅の購入考える人が多い傾向にある。

従って1~3月は不動産会社にとって住宅を売却しやすい時期ということもあり、売却額が高くなるのだ。

3月を過ぎてしまうと一旦不動産は売れない時期に突入してしまい1~3月の次に売買が活発になる9月が狙い目だ。

また不動産の売却タイミングは空き家状況など他のタイミングもみた方がよい

不動産は一度の売却益が非常に高いことから慎重に売却タイミングを見極めよう。

信用できる業者で査定を済ませて物件の売却を

今回は、不動産売却の査定に関して解説してきた。

査定ときくと、ただ物件を不動産会社へ査定にだすだけと考えてしまうが、そう簡単ではないことが分かったはずだ。

特に、不動産売却の大まかな相場を自分で算出して、多角的に判断するのは非常識に大切であるため必ず行おう。

また不動産の価値を高めて、売却益を高めることも忘れてはならない。

こういった小さな積み重ねが、最終的な売却益を大きく変えることとなる。

不動産の売却は不動産投資の中でも出口戦略に関わってくる重要な部分だ。

不動産の売却益を最大化するために手を抜かず、しっかり対策をおこなっていこう。