シンガポールの19年7月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比11.1%減(前月:同18.3%減)とマイナス幅が縮小した。輸出の伸び率は、昨年から主力の電子製品の低迷が続くなか、昨年末頃からは更に石油化学製品も減少傾向で推移するなど全体的な輸出不振に陥っている。なお、総輸出額は前年同月比5.7%減(前月:同10.3%減)、総輸入額は同6.2%減(前月:同6.0%減)となり、それぞれ低迷した。結果として、貿易収支が24.7億ドルの黒字となり、前月から6.7億ドル黒字が増加した(図表11)。
輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同24.2%減(前月:同34.4%減)と、8ヵ月連続のマイナスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同24.1%減)をはじめ、PC(同35.5%減)、PC部品(同13.0%減)、ダイオード・トランジスタ(同17.3%減)などが軒並み低迷した。また電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同17.5%減(前月:同13.7%減)と2ヵ月連続で減少した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品(同9.3%減)が低迷したほか、医薬品(同32.7%減)が大きく減少した。
フィリピンの19年7月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比3.5%増と、前月(同3.3%増)から若干上昇した。輸出の伸び率は昨年主力の電子製品を中心とした緩やかな増加傾向で推移した後、12月から電子製品が鈍化して短期的に落ち込んだが、4月以降は小幅の増加傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比4.2%減(前月:同10.4%減)とマイナス幅が縮小した。結果として、貿易収支は33.9億ドルの赤字となり、前月から10.2億ドル赤字が拡大した(図表13)。
輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同2.9%増(前月:同4.6%増)と鈍化したものの、4ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、電子データ処理機(同13.7%減)が減少した一方、主力の半導体デバイス(同2.5%増)が増加基調を維持したほか、家電製品(同61.2%増)が大幅に増加した。その他9品目は総じて増加した品目が多かった。金(同81.8%増)と生鮮バナナ(同34.6%増)、機械・輸送用機器(同23.9%増)、電子機器・部品(同18.9%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同17.6%増)、その他鉱産物(同7.9%増)、その他製造品(同5.7%減)が増加する一方、金属部品(同11.8%減)とコ化学(同2.5%減)が減少した。
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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員
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