コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント縮小

消費者物価
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総務省が9月20日に公表した消費者物価指数によると、19年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.5%(7月:同0.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.5%、当社予想も0.5%)通りの結果であった。コアCPI上昇率は19年4月の前年比0.9%をピークに鈍化傾向が続き、17年7月(同0.5%)以来の低い水準となった。

消費者物価
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生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.6%(7月:同0.6%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品の下落率が7月の前年比▲0.7%から同▲4.9%へと拡大したため、総合は前年比0.3%(7月:同0.5%)とコアCPIの伸びを下回った。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(7月:前年比▲4.3%→8月:同▲4.8%)、灯油(7月:前年比▲1.1%→8月:同▲1.3%)の下落幅が拡大し、電気代(7月:前年比2.7%→8月:同1.8%)、ガス代(7月:前年比3.0%→8月:同1.8%)の上昇幅が縮小したことから、エネルギー価格が前年比▲0.3%(7月:同0.6%)と2年7ヵ月ぶりの下落となった。

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また、18年8月に高齢者の高額療養費に対する自己負担額の上限が引き上げられた影響が一巡し、診療代の上昇率が7月の前年比1.4%から同0.0%へと低下したこともコアCPIを押し下げた。

一方、食料(生鮮食品を除く)は前年比1.1%(7月:同1.2%)と4ヵ月連続で1%台の伸びとなった。人件費、原材料費、物流費の上昇を背景とした値上げの動きが継続している。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.02%(7月:0.04%)、食料(生鮮食品を除く)が0.25%(7月:0.30%)、その他が0.26%(7月:0.26%)であった。

上昇品目数の割合は高水準を維持

消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は298品目(7月は302品目)、下落品目数は164品目(7月は164品目)となり、上昇品目数が前月から若干減少した。上昇品目数の割合は57.0%(7月は57.7%)、下落品目数の割合は31.4%(7月は31.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は25.6%(7月は26.4%)であった。

コアCPI上昇率が鈍化傾向を続ける中でも、現時点では、上昇品目数は高水準を維持している。ただし、消費税率引き上げ後には消費の低迷が見込まれるため、値下げの動きが広がる可能性がある。

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コアCPI上昇率は消費税率引き上げ後も1%を下回る見込み

コアCPIを押し上げてきたエネルギー価格の上昇率は、2年7ヵ月ぶりのマイナスとなった。原油価格(ドバイ)は、サウジアラビアの石油施設への攻撃を受け、一時1バレル=50ドル台後半から60ドル台後半へと急上昇したが、その後、9月末までに産油量が攻撃前の水準まで戻るとの見通しが示されたことなどから60ドル台前半まで下落している。エネルギー価格の下落幅は年末にかけて拡大する公算が大きい。

外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きは継続しており、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。9月のコアCPI上昇率は0.3%程度まで鈍化する可能性が高い。

また、10月の消費税率引き上げによる影響は前回増税時に比べれば小さいものの、個人消費が一定程度減少し、需給面からの物価上昇圧力が弱まることは避けられないだろう。

10月以降のコアCPI上昇率は、消費税率引き上げによって1%ポイント程度押し上げられる(ただし、電気代、ガス代、通信料(固定電話、携帯電話)などは新税率の適用が11月以降となる)一方、幼児教育無償化によって▲0.6%ポイント程度押し下げられる。これらの制度変更要因も含めたコアCPI上昇率は10月以降も1%を下回る水準で推移することが予想される。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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