会社員の方の中には、自分の税金がどのように決まっているのか、また自分がどれぐらい税金を払っているのか知らない人も多いのではないでしょうか。iDeCoで節税できると言われても、どのぐらい自分にとってメリットがあるのかピンと来なければ利用しにくいはずです。今回はそんな方のために、iDeCoで節税できる仕組みと、具体的にいくらお得になるのかをご紹介します。

iDeCoの3つの節税効果を知ろう

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(画像=PIXTA)

みなさんが株式や投資信託などの投資を始めるもっとも一般的な方法は、証券会社に行って一般口座(または特定口座)を開設し、その口座で金融商品の売買を行うやり方です。この方法に比べ、iDeCoを利用して投資をした場合は3つの節税メリットがあります。

1つ目は、掛金が全額所得控除になります。普通であれば給料から色々な税金が引かれ、その税金を引かれた後のお金を証券口座に回して投資を始めますが、iDeCoに入金するお金には税金がかかりません。これはiDeCoに「節税効果がある」と言われるもっとも大きな理由なので、後ほど詳しくご紹介します。

2つ目は、運用益が非課税で再投資できることです。普通であれば、金融商品を運用して出た利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoにはかかりません。

3つ目は、受け取るときに控除を利用できることです。iDeCoは年金形式か一時金形式で受け取り方を選べますが、年金形式の時は「公的年金等控除」、一時金形式なら「退職所得控除」の対象になります。

所得控除で税金が安くなる仕組み

iDeCoの3つの節税メリットのうち、1つ目の「所得控除」がどういうものなのかを見ていきましょう。

まず、みなさんの税金は、会社から支給される給与から様々な控除を引いた「課税所得」に対してかかります。この控除とは、みなさん各々の事情に応じて収入から引かれる経費のようなものです。例えば、扶養家族がいる人はそれだけお金がかりますので、扶養控除という控除を受けることができます。

同じ年収でも、控除が多く受けられる人は、少ない人に比べ課税所得が少なくなります。税金は課税所得に対して何%と決まっているので、結果として税金が少なくなります。

iDeCoに掛金を拠出すると、その掛金は老後のための資金ということで控除の対象になります。その結果、課税所得が少なくなり、税金が安くなるという仕組みです。

年収500万円だとどれだけ得をする?

実際に所得控除にどれほどメリットがあるのか見てみましょう。今回は架空の会社員Aさんについてシミュレーションしてみます。

<Aさん>
会社員、女性
年収500万円
独身

会社員のAさんが受けられる控除は、「基礎控除」「給与所得控除」「社会保険料控除」の3つです。他にも保険に加入していたり住宅ローンを組んでいたりすると控除を受けられますが、ここでは考えないものとします。

まず、「基礎控除」は所得がある人すべてが受けられる控除で、所得税では38万円と決まっています。「給与所得控除」は収入によって変わりますが、年収500万円なら154万円控除が受けられます。「社会保険料控除」は厚生年金や健康保険にかかる金額を収入から引ける控除です。会社や地域によって異なりますが、ここでは76万円とします。

すべての控除を引くと、
500万円 − 38万円 − 154万円 − 76万円 = 232万円

となります。この232万円がAさん本来の課税所得です。

iDeCoに加入して掛金を毎月2万円、年間24万円拠出すると、その掛金は全額所得控除の対象となるので、Aさんの課税所得は232万円 − 24万円 = 208万円に減ります。

課税所得が195万を超え330万円以下の人の所得税は、「課税所得 × 10% − 9万7,500円」となるので、iDeCoに加入前と加入後にかかる税金はそれぞれ、
(iDeCoに加入しない場合) 232万円 × 10% − 9万7,500円 = 13万4,500円
(iDeCoに加入する場合)  208万円 × 10% − 9万7,500円 = 11万500円

となり、iDeCoに加入すると2万4,000円、所得税が安くなることがわかります。

また、詳しい計算は省略しますが、課税所得に対して一律10%かかる住民税も、iDeCoに加入することによって同じように年間2万4,000円安くなります。結局、年間の掛金24万円に対して、所得税と住民税を合わせて4万8,000円税金が安くなる、つまり手取りが増えることになります。

節税だけにとらわれず無理のない積み立てを

税金の仕組みと、iDeCoに加入するとどれぐらい手取りが増えるのかをご紹介しましたが、iDeCoにもデメリットはあります。自分で資産を運用するので元本割れの恐れがあることや、老後の準備のためという理由で控除が受けられる代わりに60歳までは原則として引き出せないことなどです。節税効果だけを期待するのではなく、自分が積み立てることができる範囲でうまく制度を利用しましょう。

文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)/fuelle

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