資産運用はギャンブルではありません。将来にわたって安心できるよう、堅実に積み重ねていくものです。とはいえ、仮想通貨や個別株などで1つの銘柄が急騰したような話を聞くと、興味をそそられるのではないでしょうか。コア・サテライト戦略は、無理せず安定と高収益の2つを実現しようとする方法です。
資産を2つに分ける人気の管理方法
コア・サテライト戦略は資産配分における考え方の1つです。資産を堅実なコア部分と高収益を目指すサテライト部分の2つに分けて運用します。投資初心者から年金基金のようなプロまで、幅広い層に支持されている方法です。
個人投資家にとって、資産運用の王道は「長期・分散・積立投資」です。効率的に資産を増やしていくためには、資金の大半を失う危険性を避けつつ、長期的に投資する必要があります。
そのためコア部分の運用には、債券や株価などの指数に連動するインデックス・ファンドを定期的に同額ずつ買い続けるドルコスト平均法が最も適しています。または世界中のさまざまな資産に投資する資産分散型ファンドを対象にするのもよいでしょう。
リスク回避のためとはいえ、このように機械的な取引を退屈に感じる人もいるかもしれません。そこでサテライト部分として、投資に充てられる資金の一部を、市場全体を上回るリターン獲得を目指す積極的な運用に使います。
コア・サテライト戦略では、コア部分の比率を高く保つことによって、確実に必要となる資金を確保しつつ、サテライト部分の積極運用によって、高い収益を目指します。組み合わせ次第では、より幅広い対象への分散投資となり、資産全体のリスクを下げられることもあります。
コア・サテライト戦略におけるポートフォリオの実例2つ
コア・サテライト戦略をとるうえで大切なことは、コア部分とサテライト部分にそれぞれどれくらいの金額を投資するかという資産配分です。
サテライト部分は資産全体の1割~3割程度にしておくのがよいでしょう。それくらいであれば、ハイリスクな投資で失敗しても、取り返しのつかない事態にはなりません。コア部分には現金・預金や保険など、投資以外のローリスクな運用も含めます。
運用パターンの例を2つ挙げます。1つ目は、これから将来に向けて資産運用を始める若い世代です。毎月積み立てる1万円のうち、5,000円を定期預金に、3,000円を米国の株価指数連動型の投資信託に、2,000円を株価指数を上回る運用を目指すアクティブ・ファンドに投資します。8,000円がコア部分、2,000円がサテライト部分にあたります。
この投資パターンでは拠出の時点でコア部分とサテライト部分が明確に分かれているため、投資初心者でもわかりやすいのではないでしょうか。
2つ目は、定年間近で収入も多く、多額の資産を持つ人のパターンです。5,000万円ある金融資産のうち、4,000万円で世界の8種類の資産に投資する資産分散型ファンドを購入。残りの1,000万円は、短期的な収益を目指して個別株を売買したり、特定の銘柄に投資するテーマ型の投資信託を買ったりします。
このパターンでは、サテライト部分はコア部分に比べて価格変動が激しいため、当初よりも比重が大きくなることがあります。その場合、一部を換金して適切な配分に戻すリバランスを行うとよいでしょう。利益を確定でき、リスクを抑えることもできます。
サテライト部分を全て売却し、他の投資対象に振り替える短期売買を行なっても構いません。ただしコア部分は長期投資を続けることが大切です。
もしあのとき資産の1%を仮想通貨に投資していたら……
このように、コア部分は資産運用のセオリーにもとづき、確実に収益を上げていきます。サテライト部分は自分が興味ある銘柄を追求していくことができます。コア・サテライト戦略の強みは、比率配分を明確にしておくことで、両者を両立できることです。
2017年には仮想通貨投資で何百人もの「億り人」が生まれました。その中にはわずか数十万円の資産を数ヶ月で億単位にした人もいます。一方で、ピーク時に高値づかみをし、大損してしまった人も少なくありません。
前章の2例目におけるサテライト部分の中で、仮想通貨を購入していたらどうなっていたでしょうか。ビットコインがキプロス危機で有名になった2013年半ばに、資産全体の1%である50万円分を投資したとします。ビットコイン価格はその後6年間で約100倍になっていますから、2019年半ばには5,000万円になっていたはずです。
一方、コア部分のパフォーマンスを世界の経済成長率と同程度の年3%とすると、6年間で約1.2倍です。4,000万円の投資が4,800万円になります。ビットコイン以外のサテライト部分が半分以下になったとしても、資産総額は運用を始めた当初の2倍になり、1億円に達します。
コア・サテライト戦略を利用することで、もしビットコインをはじめとするサテライト部分を投資の失敗によって全て失ってしまったとしても、コア部分の堅実な収益によっておおむねカバーできます。どちらに偏っても、このような堅実かつ高収益な投資は期待できません。
ハイリスク・ハイリターンな投資の例として仮想通貨を挙げましたが、同じことは個別株やFX投資などにもいえます。コア部分が安定的な収益を生み出しているからこそ、サテライト部分で思い切った決断ができるのです。
安定とチャレンジを両立し相乗効果を出す
投資は将来の生活資金を確保する手段です。同時に、未来の可能性にかけるゲームという側面があります。コア・サテライト戦略は、資産運用という枠組みの中で、これらを両立させながら、相乗効果を生み出していく方法論です。(提供:Wealth Road)