先月までの動き

先月は多数の部会が開かれました。このうち企業年金・個人年金部会と年金部会では、通常国会での法案提出に向けて、議論の整理が取りまとめられた。

○社会保障審議会  年金事業管理部会 情報セキュリティ・システム専門委員会
12月12日(第13回)  年金業務のシステムに関する情報セキュリティ対策及び刷新
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208363_00005.html  (案内)

○社会保障審議会  資金運用部会
12月19日(第12回)  積立金基本指針の改正(報告)、GPIFの次期中期目標等
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08380.html  (資料)

○社会保障審議会  年金数理部会
12月23日(第82回)  平成30年度財政状況(厚生年金保険第1号、国民年金)、財政検証結果
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00009.html  (資料)

○社会保障審議会  年金記録訂正分科会
12月24日(第7回)  年金記録の訂正に関する事業状況(平成30年度状況及び令和元年度上期概況)
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_08477.html  (資料)

○社会保障審議会  企業年金・個人年金部会
12月25日(第10回)  社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理(案)
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08642.html  (資料)
12月25日  社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理
URL https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000581021.pdf  (資料)

○社会保障審議会  年金部会
12月25日(第15回)  社会保障審議会年金部会における議論の整理(案)
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212815_00018.html  (資料)
12月27日  社会保障審議会年金部会における議論の整理
URL https://www.mhlw.go.jp/content/12501000/000581907.pdf  (資料)

ポイント解説: 公私年金改正案の要点と課題

先月の年金部会と企業年金・個人年金部会では議論の整理が取りまとめられ、これらを基にした改正法案が2020年3月に国会へ提出される見込である*1。本稿では、取りまとめられた改正案の要点と将来的な課題を確認する。

*1 公的年金の改正と企業年金・個人年金(iDeCo)の改正とが一体になった1つの改正法案になる予定。

●改正案の要点:加入対象者が公私年金で連動する形へ

大きな改正点は、公的年金では厚生年金の適用拡大、私的年金(企業年金・個人年金)では確定拠出年金の加入可能要件の拡大であり、これらが連動しているのが今回の要点と言えよう。

厚生年金の適用拡大では、短時間(パート)労働者の場合、対象となる企業規模が正社員2 501人以上から51人以上となり、勤務期間要件が正社員と同じく2か月超の雇用見込みとなる。加えて、正社員も含めて2か月超の雇用見込みがある場合は、雇用契約の当初から厚生年金の適用対象となる3。

確定拠出年金の加入可能要件は、企業型は厚生年金加入者、個人型(iDeCo)は国民年金加入者へと改められる。拡大規模は大きくないが*4、公的年金の適用対象との自動連動化がポイントである。加えて、個々の企業年金での加入資格については、「同一労働同一賃金ガイドライン」の基本的な考え方の踏襲が法令解釈通知に明記される見込みであり、企業年金の非正規労働者への拡大が期待されている。

年金改革ウォッチ,公私年金改正案
(画像=ニッセイ基礎研究所)

--------------------------
2 人の生死に係るような終身保険、定期保険など生命保険を第1分野、自動車保険や火災保険などの損害保険を第2分野というのに続き、医療保険、介護保険など、その中間でどちらともいえないものを第3分野という。現在は生命保険会社、損害保険会社両方で扱える。
3 人の生死に係るような終身保険、定期保険など生命保険を第1分野、自動車保険や火災保険などの損害保険を第2分野というのに続き、医療保険、介護保険など、その中間でどちらともいえないものを第3分野という。現在は生命保険会社、損害保険会社両方で扱える。

●将来的な課題:公私年金の役割分担の再整理

今回の改正では、公的年金給付の今後の目減りを考慮して、厚生年金と私的年金の対象者が拡大され、繰下げ受給による毎年の年金額の増額も促進される。しかし、今後の公的年金の目減りは基礎年金が中心であるため、現役時代に賃金が少ないほど年金額全体の目減りが大きくなる5。私的年金への加入や公的年金の繰下げ受給には企業や個人の経済的な余力が必要であることを考えれば、公私年金の役割分担を再整理しながら、各制度の将来的な見直しを検討していく必要があるだろう6。

--------------------------
5 例えば、拙稿「年金改革ウォッチ 2018年7月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下」を参照。
6 例えば英国では、日本の厚生年金(2階部分)に当たる制度を定額給付に変更し、私的年金の優遇枠を青天井に近い形とし、低~中所得者には企業拠出を伴う私的年金への加入を半強制化し、私的年金の受給方法の制約を緩和した。ただし英国等の諸外国を参照する際は、制度改正が成功したか否かや日本との環境の違いに十分留意する必要がある。

中嶋邦夫(なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
年金改革ウォッチ 2018年7月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下
年金改革ウォッチ 2018年9月号~ポイント解説:基礎年金の水準低下への対策
年金改革ウォッチ 2019年11月号~ポイント解説:公私年金と年齢との関係の見直し
厚生年金の適用拡大に向けた議論
年金改革ウォッチ 2018年11月号~ポイント解説:高齢者就労と公的年金の関係