2015年1月(改正後)の相続税計算の事例

前述した例を改正後で検討してみます。甲家の相続財産が、預貯金1億円、株5千万円(時価)、債券5千万(時価)で合わせて2億円、相続人は、甲さんの妻、長男、次男の3人です。基礎控除額は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円になります。

したがって、基礎控除後の課税課価格としては、2億円-4,800万円=1億5,200万円となります。これを法定相続分に応じて、取得すると、妻が1億5,200万円×1/2=7,600万円、長男が1億5,200万円×1/4=3,800万円、次男が1億5,200万円×1/4=3,800万円になります。

そして、法定相続分に応じた相続税額は、妻が1,580万円、長男が560万円、次男が560万円となります。したがって、総額が1,580万円+560万円+560万円=2,700万円となります。これを、各人が法定相続分で財産を取得したとして、各人の納付税額を算出すると、妻が2,700万円×1/2=1,350万円ですが、配偶者税額軽減を受けると、0円になります。長男が2,700万円×1/4=675万円、次男が2,700万円×1/4=675万円になります。総額で675万円×2=1,350万円となります。したがって、改正後で、甲家の場合、1,350万円-950万円=400万円の増税になります。

これに対して、乙家の相続財産が時価相当額で土地1億円が路線価で4,000万円、時価相当額で建物1億円が固定資産税評価額で4,000万円、相続人は、乙さんの妻、長男、次男の3人です。相続の財産価格は、4,000万円+4,000万円=8,000万円です。基礎控除が、甲家と同じく4,800万円です。

したがって、基礎控除後の課税課価格としては、8,000万円-4,800万円=3,200万円となります。これを法定相続分に応じて、取得すると、妻が3,200万円×1/2=1,600万円、長男が3,200万円×1/4=800万円、次男が3,200万円×1/4=800万円になります。そして、法定相続分に応じた相続税額は、妻が190万円、長男が80万円、次男が80万円となります。総額が190万円+80万円+80万円=270万円となります。

これを、各人が法定相続分で財産を取得したとして、各人の納付税額を算出すると、妻が270万円×1/2=135万円ですが、配偶者税額軽減を受けると、0円になります。長男が270万円×1/4=67万5千円、次男が2,700万円×1/4=67万5千円になります。総額で67万5千円×2=135万円となり、改正後は、改正前の0円から135万円の増税になります。


相続税対策による不動産の活用

前述した甲家と乙家の事例で分かるように、金融相続より、不動産相続のほうが、不動産の評価額にもよりますが、相続税は少なくてすみます。したがって、金融資産は、不動産に代えたほうが相続税対策になります。さらに、居住用ではなく、賃貸アパートなどにすることで、建物や土地の評価額を引き下げることもできます。そして、その際に、借入をした場合、借入金の残高を建物や土地の評価額から引くことも出来ます。したがって、相続税対策としては、不動産を活用することがポイントになるといえます。


2015年の相続税増税に向けての不動産による対策

直系尊属からの住宅等資金の贈与税の非課税枠が平成27年から3,000万円に拡大される予定です。したがって、預貯金を多く有している人は、自分の子供や孫に住宅資金を贈与し、子や孫に不動産を所有させるというのが相続税対策として、考えられます。また、居住用に不動産を有している人は、一度、評価額を確認して、相続税の試算をしてみて、残された家族にどのように、財産を引き継ぐのかというプランを早急に立てる必要があるといえます。

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