最近、相続税に関してのセミナーが活気を帯びています。2015年より相続税の基礎控除額が引き下げられ、相続財産の価格によっては相続税の税率が引き上がるためです。今回は、2015年の改正点と相続税計算のシミュレーション対策について、検討します。
2015年の相続税改正点について
基礎控除額の金額
改正前では、5,000万円+1,000万円×法定相続人の数でしたが、改正後は3,000万円+600万円×法定相続人の数に引き下げられます。
相続税の税率
相続人の財産の取得金額により税率は変わってきます。改正前は最高の3億円超の場合で相続税額が「財産の取得金額×50%-4,700万円」、改正後は3億円超6億円以下で「財産の取得金額×50%-4,200万円」、6億円超で「財産の取得金額×55%-7,200万円」となります。この基礎控除と税額計算を踏まえた上で、相続税の計算のシミュレーションをしてみます。
2014年12月(改正前)の相続税計算の事例
例えば、甲家の相続財産が、預貯金1億円、株5千万円(時価)、債券5千万(時価)で合わせて2億円としましょう。
相続人は、甲さんの妻、長男、次男の3人とします。基礎控除は、「5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円」になります。したがって、基礎控除後の課税課価格としては「2億円-8,000万円=1億2,000万円」となります。
これを法定相続分に応じて取得すると、
妻が1億2,000万円×1/2=6,000万円
長男が1億2,000万円×1/4=3,000万円
次男が1億2,000万円×1/4=3,000万円
になります。そして、法定相続分に応じた相続税額は、妻が1,100万円、長男が400万円、次男が400万円となります。
したがって、総額が1,100万円+400万円+400万円=1,900万円となります。これを各人が法定相続分で財産を取得したとし、各人の納付税額を算出すると、妻が1,900万円×1/2=950万円ですが、配偶者税額軽減を受けると、0円になります。長男が1,900万円×1/4=475万円、次男が1,900万円×1/4=475万円になります。総額で475万円×2=950万円となります。
これにたいして、乙家の相続財産が、時価相当額で土地1億円が路線価で4,000万円、時価相当額で建物1億円が固定資産税評価額で4,000万円とします。相続人は、乙さんの妻、長男、次男の3人とします。相続財産の価格は、不動産の場合、時価ではなく、路線価や固定資産税評価額になり、通常、時価より低くなります。したがって、4,000万円+4,000万円=8,000万円で、基礎控除が、甲家と同じく8,000万円ですから、課税価格は0円となります。