昨年9月以来のファンド全体への資金流入

投信動向
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2020年1月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、1月はバランス型に2,800億円と大規模な資金流入があった【図表1】。さらに、外国株式、その他(主にマルチ・ストラテジー)、国内REIT、外国REITにも資金流入があった。また、国内債券はほとんど資金の動きがなく、国内株式と外国債券は資金流出でこそあったが、昨年12月と比べると流出は鈍化した。そのためファンド全体でみると、12月の1,400億円の資金流出から1月は2,900億円の資金流入に転じた。ファンド全体で流入超過になったのは、昨年9月以来4カ月ぶりである。

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バランス型に1月は2,800億円の資金流入と、昨年12月の1,800億円の資金流入から1,000億円ほど増加した。バランス型の確定拠出年金専用ファンドへの資金流入が、12月は100億円満たなかったのが、1月に1,100億円と急増したことが寄与した。個別ファンドごとにみると、1月に100億円以上の資金流入があったファンドが9本(うち4本は【図表2】青太字、その他に確定拠出年金専用ファンド3本を含む)あり、確定拠出年金からの影響を控除しても引き続き投資家の人気が高かった。

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外国株式については、12月の445億円の資金流出から1月は800億円の資金流入に転じた。特定の外国株式の人気ファンドが牽引した様子である。資金流入が大きかった4本(【図表2】赤太字)の流入金額が合計で1,900億円に迫っており、外国株式全体の流入金額を大きく上回った。このように外国株式では資金流入が大きいファンドがある一方で、一部のテーマ型ファンドなど資金流出するファンドも多かった。それでも1月に流出が大きかった外国株式ファンドの多くが、12月と比べると資金流出は鈍化していた。1月は世界的に株価が横ばいもしくはやや軟調だったこともあり、12月よりは売却に動く投資家が少なかったのかもしれない。

国内株式はアクティブ・ファンドからの資金流出が止まらず

国内株式についても資金流出こそしていたが、3,000億円もの資金流出があった12月と比べると、1月は1,000億円の資金流出と3分の1になった。特に、昨年9月から続いていた国内株式のインデックス・ファンド(青棒)からの資金流出が1月に止まった【図表3】。1月は、月初に中東問題、月末にかけて中国発の新型肺炎に揺らされ、国内株式が下落したことに合わせて国内株式のインデックス・ファンドに資金流入があり、流入超過となった。中旬に株価が昨年の高値圏に戻った際にインデックス・ファンドから資金が流出したこともあり1月の流入金額は250億円と大きくなかったが、インデックス・ファンドでの逆張り投資は健在であった。

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その一方で国内株式のアクティブ・ファンド(黄棒)では、流出金額こそ12月の2,300億円から半減したが、1月も引き続き1,100億円の資金流出があった。株価が下落した月の上旬や下旬には資金流出がやや鈍化していたものの、国内株式のアクティブ・ファンドからの資金流出は止まらなかった。インデックス・ファンドのように株価が下落したところで買い戻す動きはほとんどみられなかった。

そもそもアクティブ運用(ファンド)の効果は短期間で得られにくく、それに加えてアクティブ・ファンドはインデックス・ファンドと比べて売買コストがかかる傾向がある。そのためアクティブ・ファンドはインデックス・ファンドでみられる短期の反発を狙った逆張り投資に不向きで、中長期で腰を据えて投資する必要がある。1月に国内株式は昨年8月以来5カ月ぶりに下落したとはいえ、下落幅は月間で2%程度と小幅であった。そのため1月の国内株式のアクティブ・ファンドの資金の動きは、短期的に反発するかもしれないがまだまだ高値圏にあると考えている投資家が多かったのかもしれない。それに加えて、中長期的にみて国内株式の先行きに対して不透明感がある、もしくは不透明が高まったと考え、国内株式を敬遠する投資家もいたように思われる。

米国ハイテク株ファンドの一部が好調

1月にパフォーマンスが良好であったファンドをみると、米国のハイテク株ファンドの一部が好調であった【図表4】。1月は米国株式全体でみるとほぼ横ばいであったが、一部のハイテク企業で好決算が相次いだため、その恩恵を受けたファンドが好調であった。

なお、中国本土(A株)のハイテク株ファンドの収益率が最も高かった。この結果に違和感がある人も多いのではないだろうか。これは1月中旬までは米中問題の進展などを好感して中国本土株、特にハイテク株が好調だった上に、春節により下旬以降が中国本土の株式市場が休場であったためである。1月は下旬に新型肺炎の悪影響が危惧され世界的に株価が下落したが、このファンドの月末の基準価格は休場前の株価をもとに算出されている。つまり、このファンドの1月の収益率は月末にかけて危惧された新型肺炎の悪影響が反映されていない(実際には得ることができない)。このファンドが売買できるようになった2月4日の基準価格は前日比で7%以上下落している。それを考慮すると実質的には1月の収益率はプラスでこそあったが、一部の米国ハイテク株ファンド比べてそこまで高パフォーマンスではなかったといえよう。

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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