超富裕層を魅了する都市は、富の創出にかかわる投資・ビジネスチャンスに溢れているだけでなく、交通インフラや快適で安全に暮らせる生活環境、高い教育水準、医療制度が整っています。しかし、時代とともに超富裕層が都市に求める要素も変化しています。ロンドンを拠点とする国際不動産コンサル企業ナイトフランク(以下、ナイトフランク社)の調査から、5年後に超富裕層の人口が急増していると予想される5都市と、その理由をご紹介します。

イノベーション力の高い都市が超富裕層を魅了する

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(画像=saiko3p/Shutterstock.com)

世界500社以上のクライアントへ富裕層向けのデータ分析とコンサルティングを行うWealth X社の定義によると、超富裕層とは純資産を3,000万ドル以上所有している層のことで、2018年は世界に26万5,490人おり、総資産額は32兆3,000億ドルとされています。これが2023年には35万人を超え、総資産額は43 兆ドルに達すると予想されています。

一般的に超富裕層が都市に求める要素は、資産の保護と増加が期待できることや、生活面とビジネス面の快適性や利便性ですが、近年は投資やビジネスの観点から、都市としての成長力やイノベーションを重視する超富裕層も増えています。

超富裕層の急増が予想される世界の5大都市

ナイトフランク社が2023年までに超富裕層が急増すると予想するのは以下の5都市です。いずれもイノベーションの促進やインフラの整備に積極的で、未来の世界経済をリードする可能性を秘めています。

都市1 バンガロール(インド):5年間の超富裕層の予測増加率40%

「インドのシリコンバレー」とも呼ばれるバンガロールは、インド南部のカルナータカ州に位置するテクノロジー都市です。同国最大のeコマースFlipkartや世界有数のITコンサル企業Infosys、ITサービス大手Wiproなどのほか、Microsoft、Hitachi、Samsungを含む400社以上の多国籍企業が拠点を構えています。

イノベーションを促進する多様なエコシステムのほか、科学研究所や国立航空宇宙研究所など教育機関への投資にも注力するなど、将来はムンバイと肩を並べる国際都市に成長することが期待されています。

オックスフォード大学の研究機関であるオックスフォード・エコノミクスのデータによると、同市の2018~2023年の実質GDPは約60%増加する見込みです。

都市2 杭州市(中国):5年間の超富裕層の予測増加率34%

アジア最大規模のeコマースを運営する阿里巴巴集団の拠点である杭州市。中国屈指のテクノロジー都市として、国際的に有名です。

オックスフォード・エコノミクスのデータによると、輸送、貯蔵、情報通信サービス部門は過去5年間で2倍以上に拡大、今後5年間でさらに46%拡大すると予想されています。

上海から高速列車で1時間という好立地であり、鉄道、道路、航空路など交通インフラが充実していることも魅力です。

都市3 ストックホルム(スウェーデン):5年間の超富裕層の予測増加率23%

音楽ストリーミングプラットフォームSpotifyなど、市場をリードする多国籍企業発祥の地であるストックホルムは、イノベーション都市として欧州トップの地位を築いています。先駆的なアイデアを育む福祉制度と持続可能性を重視するアプローチは、欧州委員会のお墨付きです。

仏ビジネススクールINSEADが世界119ヵ国90都市のイノベーション力や起業家精神などを評価した「2018年版国際人材競争力指数(Global Talent Competitiveness Index)」では、世界5位に選ばれています。

都市4 ケンブリッジ(英国):5年間の超富裕層の予測増加率19%

美しく優雅な街並みで知られる英国のケンブリッジは、名門ケンブリッジ大学が有名です。同大学が世界トップクラスの技術者や研究者を輩出しているほか、AppleやMicrosoft、Amazonなど大手IT企業の技術開発拠点としても知られています。

2018年に新駅(ケンブリッジ・ノース)を開設、2025年には地下鉄の運行開始(アイザック・ニュートン線)が予定されています。さらに、2031年までに1万4,000棟の住宅建設を計画しているなど、インフラを含めた都市の発展にも積極的です。

都市5 ボストン(米国):5年間の超富裕層の予測増加率15%

米国マサチューセッツ州のボストンは、ニューヨークとサンフランシスコに代わる、魅力的で手頃な投資先として人気が高まっています。

マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学を擁するトップクラスの人材候補の宝庫であり、AmazonやFacebook、Uberがオフィスを構えています。

米非営利調査組織Center for American Entrepreneurshipの調査によると、2015年から2017年までに同市に投じられたベンチャーキャピタル(VC)の総額は245億ドルにのぼり、世界で5番目のVC都市です。

いま超富裕層人口の多い東京、ロンドン、ニューヨークはどう変わる?

現在、超富裕層人口の多いロンドンや東京、ニューヨークといった大都市の国内総生産(GDP)は引き続き成長を維持し、超富裕層人口も増加する見込みです。

しかし東京は2023年までに超富裕層人口の増加が失速し、アジア最大の超富裕層都市の地位をシンガポールに譲ると予想されています。東京の超富裕層の予測増加率が10.5%であるのに対し、シンガポールや北京、ソウルなどは20~30%前後と、大きな差をつけられています。

超富裕層人口の増加は、各都市の経済やビジネスの発展力・成長力の指標のひとつと言えます。超富裕層人口の動きを観察することは、投資判断にも役立つでしょう。(提供:Wealth Road