日本とシリコンバレーで計5社を立ち上げたシリアルアントレプレナー(連続起業家)の田所雅之氏が、2020年2月18日に著書『御社のイノベーションはなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学』を出版した。
連載記事第4回目の今回は、日本企業が目指すべき本質的なイノベーションについて伺った(聞き手:山岸裕一、編集構成:菅野陽平)※本インタビューは2020年2月に実施
※画像をクリックするとAmazonに飛びます
日本のイノベーションは「技術革新」しか指さない
―著書の中で「イノベーション」という単語が頻出します。本連載記事の第1回目でも、「イノベーションは目的ではない」とのお話がありました。イノベーションが日本で誤解されていると思われる部分をお聞かせください。
日本には「技術革新」という言葉があります。私はシリコンバレーで投資家もやっていましたが、日本と違って、向こうの発想では「ユーザー・エクスペリエンス」のイノベーションのほうを指すんですよね。
中国のアリババやテンセントが行っているのはDX(デジタル・トランスフォーメーション)で、私はUX(ユーザー・エクスペリエンス)と呼んでいます。
日本では、SIer(システム・インテグレーター)や家電メーカーのSI(システム・インテグレーション)が力を持っているので、商売のネタとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)呼んでいます。
しかし、日本で言うDXは本質を突いておらず、技術革新や従来の文脈の技術イノベーションの延長線上にある話です。
では何のためのイノベーションかというと、本質的には顧客の成功や顧客の生活の質、UXを高めるため。ただし、UXやデザイン・シンキングの思考は実務能力なのでトレーニングしないと身につきません。
一般社員は別として、日本の一般的な大企業の経営層において圧倒的に経験が足りていないと感じます。結論として、イノベーションとは、UXやカスタマーサクセスを起こすための手段です。書籍の中でも詳しく述べています。
―まずは誤った認識を解くべきだと。日本企業は製造業の成功体験に引っ張られた発想が多いので、それとは別の発想が必要だというのがメッセージなんですね。
そうですね。