京都市の伏見に「中小企業の企画を代行する」というサービスを提供する「シュンビン株式会社」がある。伏見は、兵庫県の灘と並ぶ日本酒の2大産地。シュンビン株式会社の前身は、そんな土地柄ゆえ生まれた、一升びんを洗浄する「洗びん業」だった。時代の変化によりその需要が急減する中、がむしゃらにもがきながら、これまでありそうでなかったデザイン&マーケティングコンサル事業に転業したストーリーに迫る。
中小企業の企画部を代行する会社とは
「経営者が、川上からいくら考えても仕方がない。常に現場で考えることが大切なのです」
徹底した現場意識からシュンビン株式会社が生み出した独自のブランド構築プログラムは、いつからか「伝説の15時間」とよばれている。
現在、シュンビン株式会社の売り上げを順調に伸ばす主軸業務は、中小企業のデザイン&マーケティングコンサルティング。独自のノウハウを用い、クライアントの経営者、幹部と膝を付け合わせた15時間のブランド戦略検討会でブランディングの道筋を決定する。検討会後に、プロジェクトのコンセプト立案、パッケージデザイン、販売方法などを提案する一連のサービスを120万円で提供している。
「 『やりたいことが思うようにできていない』中小企業様の最大の弱みは、ブランディングができてないことであることが多いんです。かといって、『ブランディングとはいったい何か?どうすればいいのか?』を自社で一から学び、探求していくのは時間もかかる大変なこと。私たちは、その段階を代行しています」
例えば、お茶農家さんであるお客様から京都のお茶を売りたいと相談を受ける。お客様の最初の商品イメージは『ワインのような高級ボトルティー』だったが、あいにくすでに話題となった先行事例がある。まずは、伝説の15時間で、いくつかのステップを踏みながら丁寧にヒアリングを重ねる。
「普段、ペットボトル飲料に慣れきっている私たち現代人が、茶葉を使うようになるにはどうしたらいいか。茶葉の専門家ではないからこそ、消費者目線の客観的な視点を大切にしながら、トライ&エラーを繰り返し、お客様の『本当にやりたいこと』を形にしていきます。
実際に、ネーミング、パッケージまで一緒にダミーで作りこんで改めてギフトショーや商談会に出向いてもらい、その違いを実感していただきました。また、クラウドファンディングにも挑戦して、商品を流通する前に『世の中に需要がある』ことを実証していったのです」
茶葉の良し悪しを語っても、若い世代には響かない。代わりに、シーンや機能をフィーチャーしたのが当たった。パッケージデザインだけでなく、商品コンセプトから、内容、クラウドファンディングによる資金調達、ECサイトによる販路づくりまで、クリエイティブな業務全般を代行するのが、ほかの企業にはないシュンビンの強み。
「社外パートナーとしてどこまで一緒にやるか。その線引きがまだ難しいのですが、目安は『お客さんが自走できるまで』が私たちの仕事だと思っています」