「どれか」ではなく、3つすべてのスキルが必要

社員を専門職と管理職とに分けている会社もありますが、市場価値を高めるためには、専門職に求められるテクニカルスキルと、管理職に求められるコンセプチュアルスキルとヒューマンスキルの、すべてを高める必要があります。

かつての日本企業は、稼ぐ仕組みをいったん作れば、それを効率的に運用するだけで利益を出せていました。専門職は戦略など考えずに担当業務に専念していればよかったし、管理職は現場の細かい技術的なことはわからなくてもよかったのです。

しかし今は、世の中の変化が激しく、いつまでも勝ち続ける仕組みなど存在しません。稼ぐ仕組みを短期間で作り変え続けなければならない。そのためには、管理職も技術がわかっていなければならないし、専門職もマネジメントができる必要があるのです。

40歳くらいになって転職しようとするなら、実績も不可欠です。ただし、「ビッグプロジェクトに参加していました」ということが重要なのではありません。勤めている会社によってプロジェクトの大きさは変わってきますから、プロジェクトの大きさが個人の能力の尺度にはなりません。重要なのは、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルを、どのように発揮したかです。

これらを高いレベルで発揮していれば、たとえ過去に参加したプロジェクトが失敗していたとしても、そこから学びを得て、次は成果を上げてくれることが期待できます。転職で重視されるのは、過去の成果ではなく、これから成果を上げてくれるかどうか。そして、そのために必要なスキルを持っているかどうか、です。

また、40歳くらいなら、実際にマネジメントをした経験も重視されます。今は社員の年齢構成が逆ピラミッド型になっている会社が多く、40歳くらいになっても部下を持った経験がない方が少なくありません。そんな中、マネジメントの経験があれば、大きな強みになります。

以上のことは、転職するつもりがない方にも無関係ではありません。先ほどもお話ししたように、勝ち続ける仕組みがない時代ですから、今勤めている会社が10年後も20年後も存在し続けている保証はないのです。意図せずとも、転職を余儀なくされることは十分に考えられます。

既に転職を考えている方なら、転職サイトに登録し、どのくらい声がかかるかを見て、自分の市場価値を判断できるでしょうが、そうでない方は、どのようにして自分の市場価値を判断すればいいのか。

なかなか難しいのですが、一つの方法は、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルのそれぞれについて、自分は何ができていて、何ができていないのかを、チェックすることでしょう。欠けているところがあれば、それを意識的に補強するべきです。

また、副業やボランティア、NPO活動をするのもいいと思います。自分が持っているスキルが社外でどれだけ通用するのかが実感できますから。

清水宏昭(しみず・ひろあき)
パーソルキャリア〔株〕iX統括編集長
1973年、千葉県生まれ。1998年、立教大学社会学部観光学科を卒業し、〔株〕オリエンタルランドに入社。東京ディズニーランドのスーパーバイザーを経て、マーケティング部へ異動。東京ディズニーリゾートの事業戦略およびマーケティング戦略の責任者として、企画立案から実行までを統括。在任中に、東京ディズニーシー限定キャラクター「ダッフィー」のブランドマネージャーとして、関連売上げを2倍に引き上げる。2015年、〔株〕インテリジェンス(現・パーソルキャリア〔株〕)入社。転職サービス「DODA」(現・「doda」)のブランド力向上や戦略課題の解決を目的としたリブランディング計画の立案・実行・推進と同時に、広報部の立ち上げにも従事。広報部長として戦略的PRに取り組む。2018年より新規事業開発責任者に就任。ハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX(アイエックス)」を立ち上げる。(『THE21オンライン』2020年01月23日 公開)

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