相続税の対象となる財産は原則として「相続発生時の時価」で評価されます。上場株式についても同様ですが、現金預金などは他の金融商品と評価方法の考え方が違う部分があり、また上場株式特有の計算方法も存在します。今回は上場株式の相続税評価額の「最終価格」の考え方について解説します。
上場株式の評価の原則
上場株式の価額は常に変動していますが、相続財産としての価額はその株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(被相続人の死亡日)の最終価格(終値)を基に評価します。
ただし、課税時期の最終価格よりも下記の3つの価額のいずれかが低くなる場合には、そのもっとも低い価額によって評価します。
1.課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
2.課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
3.課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
このように上場株式は、上記4つのうちもっとも低い価額で評価されます。
なお株式によっては終値に1円未満の端数が出る場合がありますが、その端数は切り捨てることができます。また複数の株式がある場合には、それぞれの株式ごとに上記4つのうちもっとも低い時期の価額を選択できます。
株式の「権利落等」が関係してくる場合の特例
上場株式の相続税評価額は上記で計算しますが、「権利落・配当落(権利落等)」が関係してくる場合には「課税時期の最終価格」の考え方が変わってきます。
株式分割・増資などで新株を取得する権利や配当を受け取る権利は、「権利確定日」時点において株主名簿に登録されている株主にあります。その権利を得るためには権利確定日の2営業日前の「権利付最終日」までに株式を購入する必要があります。
この権利付最終日の翌営業日が「権利落ち日」となり、この日以降に株式を購入しても株式や配当に関する権利を取得することができず、理論的には株価は下がります。
このように株価が下がった状態の時期において相続が発生した場合には、その株式の評価額は権利落の額とすべきなのか、権利落前の額とすべきなのかという問題が生じます。
そのため課税時期が「権利落等の日」から「株式の割当て等の基準日」までの間にあるときは、「その権利落等の日の前日以前の最終価格のうち、課税時期にもっとも近い日の最終価格を課税時期とする」という特例が設けられています。
ちなみに以前の上場株式の受け渡しは取引日を含めて4営業日(T+3)でしたが、2019年7月16日より3営業日(T+2)に変更されました。また「権利付最終日」から「権利確定日」までも4営業日あったのが現在では同様に3営業日となっています。
株式の最終価格が無い場合の特例
また、課税時期が土日・祝日・年末年始などで株式の最終価格が無い場合には、次の3つの方法により評価します。
1.課税時期の前日以前の最終価格または翌日以後の最終価格のうち、課税時期にもっとも近い日の最終価格で、最終価格が2つある場合にはその平均額を最終価格として採用されます。
上記例での課税時期の最終価格は102円。
2.課税時期が権利落等の日の前日以前で、上記1による最終価格が権利落等の日以後のもののみである場合、または権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものと2つある場合には、課税時期の前日以前の最終価格のうち、課税時期にもっとも近い日の最終価格が採用されます。
上記例では、101円よりも76円の方が課税時期に近いのですが、76円は権利落等の日以後の最終価格のため、最終価格は101円。
3.課税時期が株式の割当てなどの基準日の翌日以後で、上記1による最終価格がその基準日にかかる権利落等の日の前日以前のもののみの場合、または権利落等の日の前日以前のものと権利落等の日以後のものと2つある場合には、課税時期の翌日以後の最終価格のうち課税時期にもっとも近い日の最終価格が採用されます。
上記例では、100円の方が75円より課税時期に近いのですが、100円は権利落等の日以前の最終価格のため、課税時期の最終価格は75円となります。
課税時期の終値もしくは過去3ヵ月間の終値平均の低い額を選べる
このように、上場株式の評価は原則として課税時期の最終価格(終値)となりますが、課税時期の月を含めた過去3ヵ月間の終値の平均のうちもっとも低い額を採用することもできます。また権利落等が関係してくる場合には、計算の基準となる最終価格の考え方が変わってきますので注意が必要です。(提供:相続MEMO)
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