「情動の涙」が自律神経に作用する

では、すべての涙にストレス解消の効果があるのかと言えば、答えはノーです。

一般的に、涙には3種類あると言われています。

一つ目は、反射による涙。例えば、目にゴミが入ったときに流れる涙です。

二つ目は、基礎分泌の涙。健康であれば、眼が乾いてドライアイになってしまわないのは、基礎分泌の涙が流れているからです。

残念ながら、この2種類の涙は、ストレス解消には役に立ちません。

ストレス解消に役立つのは、情動の涙です。

先ほどお話しした、交感神経優位から副交感神経優位への切り替えは、脳の大脳皮質にある前頭前野が興奮することで起きます。そして、共感脳とも呼ばれる前頭前野は、感情を動かされたときに興奮するのです。

映画を観たり、小説を読んだりして感動の涙を流すと、スッキリした気分になった経験が誰しもあると思いますが、その理由はここにあります。

感情が動いて流れる涙であれば喜怒哀楽のどれでもいいのですが、特に効果があるのは感動の涙です。

悲しくて流す涙にも効果はありますが、ストレス解消のためにわざわざ悲しい気持ちになることは、あまりお勧めしていません。

「泣きのツボ」の見つけ方・増やし方

とはいえ、四六時中、涙を流しているわけにはいかないでしょう。でも、ご安心ください。1度涙を流せば、その効果は1週間続くと言われるほど、涙の効果は絶大なのです。

ですから、1週間に1度でいいので、泣く習慣を身につけてください。そうすることで、ストレスが解消できるだけでなく、ストレスが溜まりにくくなるという予防効果も期待できます。

「そんなに都合よく泣けるようになるの?」と疑問を持たれる方もいるかと思いますが、ご自身の「泣きのツボ」がわかれば、次第に涙腺がやわらなくなり、感動体質になって、色々なことに感情移入して泣けるようになります。

人によって、泣きのツボは様々です。恋愛映画で泣く人もいれば、大自然の映像を観て泣く人もいます。あるいは、青春漫画やスポーツの中継に涙を流す人もいます。自分の泣きのツボがわからない人は、色々なジャンルの映像や作品に触れてみてください。

また、作品に自分の人生経験を投影して観たり読んだりすると、感情移入して泣きやすい傾向がありますから、自分の過去を振り返ることも泣きのツボ探しに有効です。

例えば、私のもとに「泣けない」と相談に来た方で、面談をしたところ、幼少期に父親から厳しく育てられた経験があることがわかった方がいました。そこで私は、「父親を題材にした映画を観てください」とお伝えしました。すると、後日、「泣けるようになりました!」と連絡をいただくことができました。

泣きのツボはいくつあっても困りません。自分の泣きのツボが一つ見つかったあとも、新たな泣きのツボの開拓、発見を続けてください。

そのための方法としては、涙活セミナーでも実施している「涙友タイム」も有効です。他の人の泣きのツボを教えてもらい、なぜ泣けるのかを聞くのです。すると、そのツボでも泣けるようになることがあります。

実は、私ももとは泣けない体質でした。それでも、テレビで泣ける映画ランキングをチェックしたり、ネットで泣ける動画を見つけたりと、毎日、泣くための題材を探し回るうちに、だんだんと涙腺がやわらなくなりました。