(本記事は、加藤俊徳氏の著書「脳が若返る最高の睡眠 寝不足は認知症の最大リスク」小学館の中から一部を抜粋・編集しています)

寝不足は、多くの人が経験しているものだと思います。寝不足の原因にはいくつかの種類があります。眠れるのに故意に眠らなかったり、全く眠れないだけでなく、睡眠には時間と質などのいくつかの問題があります。


 ○「睡眠の質が悪い」……眠りが浅い、寝た気がしない
 ○「入眠困難」……なかなか寝付けない
 ○「中途覚醒」……夜中に何回も目が覚めてしまう
 ○「早朝覚醒」……朝早く目が覚めてしまう
 ○「概日(がいじつ)障害」……眠る時間がずれている
 ○「日中の眠気」……昼間に眠くて仕方ない

これらの症状は寝不足によって起こり、総称して睡眠障害と呼んでいます。

この睡眠障害が一夜であれば、問題はありませんが、数日続くと、事態は少しずつ重いものになります。しかし、それも数日で終了すればまだ大きな問題にはなりません。一番怖いのは睡眠障害の習慣化・慢性化です。この慢性化した状態が不眠症です。ですから、眠れるのに故意に寝不足を自らつくることは避けなければならないのです。

本書では、眠らない場合と眠れない場合の両方を寝不足として、どのように改善していくかを考えていきます。あえて睡眠時間を削った生活を続けていると脳内のホルモンなどのリズムも狂ってきて、本物の不眠症になってしまったり、うつ病を引き起こしかねないからです。

病的な睡眠障害、あるいは、不眠症であれば、専門医への相談等が必要になります。ですので、その判断基準について説明します。

この違いを明確に分ける基準が、米国の精神医学会から発表されています。

みなさんも、簡単に自己診断してみてください。

次の4つの質問に対する答えが全て当てはまれば、「あなたは不眠症である」ということになります。

  • 睡眠の質や長さに対する不満がある
  • 睡眠を開始、・維持する時に、困難を感じる
  • 夜に眠れないことや日中の眠気で、社会的または職業的に、著しい苦痛または重大な障害を引き起こしている
  • 睡眠障害が1週間に3夜以上の状態が、3カ月以上続いている

この基準は、「DSM‐5」と呼ばれるもので、2013年に改訂されました。不眠状態が3カ月以上続くかどうかが重要な判定基準になっています。

寝不足からどのように不眠症になるのか?

下図3の寝不足から認知症になる予測経路にしたがって説明します。「寝不足」から「不眠症」を経て、「認知症」に至る経路をまとめたものです。

脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク
(画像=脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク)
図3

3カ月以上にわたり眠れない状態が続く理由は、大まかに分けて2つあります。

1つは、不眠の原因があるのに、その原因が除去されない場合です。たとえば、睡眠時無呼吸障害などで、夜間に脳が慢性的な低酸素状態にさらされ、それに気付かず、寝不足の症状が続く場合などです。これは、原因が除去されずに脳が懸命に努力しているという、不健康な状態です。結果として、本人の自覚がないまま脳が非常に強い負荷にさらされる、という状態が続くことになります。

2つ目は、外的要因、生活習慣が、改善されない場合です。具体的には、仕事上のストレスなどで、寝不足になってしまい、その状態が長く続いてしまうような場合と、不健康な食事、運動不足などです。不規則な労働環境や、過度の残業などもここに含まれます。この強い「脳への負荷」により、脳の活動が低下し、寝不足が常態化してしまうのです。

では、この「脳への負荷」から「寝不足」「不眠症」「認知症」へとつながる道を途中で断ち切るためには、どのような方法があるのでしょうか?

腸のことだけ考える』
加藤 俊徳
1961年、新潟県出身。医学博士。脳内科医。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。株式会社「脳の学校」代表。発達脳科学・MRI脳画像診断・認知症などの専門家。1991年に開発した脳活動計測「fNIRS法」は世界700カ国以上で脳研究に使用されている。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像法の研究に従事。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、1万人以上の診断、治療を行う。

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