(本記事は、加藤俊徳氏の著書「脳が若返る最高の睡眠 寝不足は認知症の最大リスク」小学館の中から一部を抜粋・編集しています)

疲労
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

脳の一部が疲れていても、全身が疲れたと脳は錯覚する

脳には1000億個以上の神経細胞があり、ネットワークが張り巡らされ、神経細胞群が役割の違う脳の働きを分担しています。これらの様子をみていると、脳は部位ごとに、発達していくことが分かってきました。そこで、私は、それらを「脳番地」と名付けました。約120個の脳番地は、それぞれ別々の理由で寝不足になりやすいのだと考えています。

そこで、私は脳を場所ごとに休める方法、「脳番地睡眠法」を考案しました。

最初の発想のヒントは、イルカの睡眠でした。右脳と左脳が脳梁(のうりょう)によってつながらず、独立しているイルカは、右脳と左脳を交互に眠らせることができると言われています。

ところが私たち人間の脳は、下図1のMRI脳画像で示したように、右脳と左脳が脳梁でつながっています。そのため、脳の一部が疲れているだけでも脳全体が疲労していると感じます。右脳の疲れなのか、左脳の疲れなのかさえ、判断がつかないのです。

脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク
(画像=脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク)
図1

さらに、脳は、右脳と左脳に分かれているだけではなく、もっと細かく脳番地で分かれています。

つまり、脳は一部の脳番地の疲れを、脳全体、あるいは、体全体の疲れとして錯覚するのです。逆に、日中同じような仕事や作業ばかりを続けていると、使われなかった脳番地だけは熟睡できなくなるのです。ですから、一番眠れない脳番地を眠らせることができれば、脳全体がスッキリした感覚を持てるのです。一番使っていない脳番地を積極的に昼間活動させておけば、夜疲れて眠りやすくなるはずです。

脳番地睡眠法の例として、たとえば、利き手と反対の手で歯磨きをするなど、普段使っていない手を使い、脳も動かしてあげることです。

「寝不足脳」は、脳番地睡眠法で変える

脳番地は120個ほどありますが、それを脳の機能別に分けると、下図2に示したように8つに大別できます。脳から発生している寝不足の原因も、8つに分けて対処することができます。

脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク
(画像=脳が若返る最高の睡眠: 寝不足は認知症の最大リスク)
図2

① 思考系脳番地

  • 物事を考える時に働くエリアです。意思決定する時にも働きます。
  • 脳の一番前の「前頭葉(ぜんとうよう)」にあり、脳全体の司令塔の役割をします。

②感情系脳番地

  • 喜怒哀楽など、感情を司るエリアです。快・不快を感じたり、自分の気持ちを表わすときにも働きます。
  • 「前頭葉」や「頭頂葉(とうちょうよう)」「側頭葉(そくとうよう)」にあります。特に左右の側頭葉にある「扁桃体(へんとうたい)」は、感情の受信源と発信源として重要な役割を担っています。

③伝達系脳番地

  • 他人とのコミュニケーションをとる時に働くエリアです。左脳は言葉で伝えること、右脳はイメージで伝えることを担当しています。
  • 「前頭葉」の思考系脳番地の隣にあります。

④運動系脳番地

  • 手足や口など、全身を動かす時に働くエリアです。運動だけでなく、楽器演奏や裁縫など、手をこまかく動かす時にも働きます。
  • 頭のつむじ辺りの位置から左右の耳に向かってベルト状に伸びています。

⑤聴覚系脳番地

  • 耳から入る情報を脳に伝えるエリアです。主に左脳は言葉を担当し、右脳は、言葉以外の音を担当します。
  • 耳のすぐ近くの「側頭葉」にあります。

⑥記憶系脳番地

  • 集められた情報を覚えたり、思い出す時に働くエリアです。
  • 脳の側頭葉の内側「海馬」という部分が短期記憶を、「大脳皮質(だいのうひしつ)」が長期記憶を担当すると考えられています。

⑦理解系脳番地

  • 目や耳から入ってきた情報を整理するエリアです。「分かった!」と思う時に働きます。左脳は言葉の理解を、右脳は空間や雰囲気を理解する時に働きます。
  • 耳の後ろ側の脳の「側頭葉」から「頭頂葉」に位置しています。

⑧視覚系脳番地

  • 目から入る情報を脳に伝えるエリアです。主に左脳は文字を、右脳は形を読み取ります。
  • 脳の一番後ろで、「後頭葉(こうとうよう)」という部分にあります。

寝不足対策のための脳番地診断

チェックリスト
(画像=Getty Images)

眠れない自分の脳を知るためには、まず、どの脳番地が眠れていないかを知る必要があります。

私が主宰する「脳の学校」では、脳番地診断SRIとして、インターネット上でできる脳番地診断システムを提供しています。

「脳番地診断SRI」(https://www.nonogakko.com/information/ )は、医療用MRI装置を使った本格的に診断するMRI脳画像診断と違って、問診に答えるだけのシンプルな自己申告型脳診断法です。

この方法を簡略化して不眠対策用の脳番地診断をしてみましょう。

次の24問に○と×で答えてください。ここ1か月間の生活で該当するものにチェックをしてください。


1. 家に帰っても、残った仕事のことを考えている。
2. 明日の予定を考えていて、止まらない。
3. お金が足りなくなりそうと心配になる。
4. 昼間のできごとが気になって頭から離れない。
5. 10年前のつらい思い出がよみがえる。
6. 他人に嫌われたと思うと、そのことが頭から離れない。
7. 明日、人と会う。どうしようと不安になる。
8. カラオケや飲み会など、好きじゃないものに誘われても断れない。
9. 発表会やプレゼンなど、人前に出ることが苦手。
10. テレビの怖い場面が、頭に残って離れない。
11. 人と目を合わすことが苦手。
12. 夜間によくコンビニに行く。
13. 人に言われた嫌みな言葉が残っている。
14. 好きな音楽が、耳から離れない。
15. 嫌な音が聞こえる時がある。
16. ブレーキとアクセルを踏み間違えることがたまにある。
17. ふと、ゴルフのスイングをやってしまう。
18. 駅で人とぶつかりそうになる。
19. 部屋の中がぐちゃぐちゃ。
20. 人とのトラブルが解決しない。
21. 他人の言っている意味が理解できないことが多い。
22. 上司と合わない、やってられない。
23. 昔の失敗が気になる。
24. 家族や友人とケンカしがち。

寝不足脳番地診断の結果判定法

どこに〇が付いたかで、眠れなくなっている脳番地が判定できます。


 ○1〜3.  → 思考系脳番地
 ○4〜6.  → 記憶系脳番地
 ○7〜9.  → 伝達系脳番地
 ○10〜12. → 視覚系脳番地
 ○13〜15. → 聴覚系脳番地
 ○16〜18. → 運動系脳番地
 ○19〜21. → 理解系脳番地
 ○22〜24. → 感情系脳番地

さて24問中、合計で何問〇が付いたでしょうか?

  • ○の数が0〜5問→快適な睡眠を継続できています。
  • 6〜12問、睡眠障害の危険性が高まっています。
  • 13問以上の方は、積極的に脳番地睡眠法を実践していきましょう。

さらに、各脳番地3問中2問以上〇が付いたら、その脳番地があなたの弱い脳番地と考えて、集中的に対処していきましょう。

脳番地睡眠法の基本は、日中に歩くこと

寝不足になりやすい脳番地が分かったところで、さっそく脳番地睡眠法を実践していきましょう。

脳番地睡眠法は、寝不足に陥りやすい脳番地を日中に集中的に攻略する方法です。この方法は、私が、「脳番地トレーニング」と呼んでいるものです。使っていない脳番地は眠りにくいので、そこを意識してトレーニングすることで日中に脳全体を活性化し、夜間に眠りやすくする、という方法です。

さらに、寝不足に陥りやすい脳番地を、入眠時にいろいろな方法で休息させ、スムースに睡眠へ導くという方法です。

日中、私たちは活動のために、目を開き、耳を使い、手足を動かし、他の人と会話をします。つまり、視覚系・聴覚系・運動系・伝達系の4つの脳番地を活動させます。この4つの脳番地の活動の中心は、運動系脳番地です。この脳番地は、動いて行動するだけで、また、人と会うことだけで、自ずと活性化します。

一方、部屋に閉じこもり、ほとんど誰にも会わないという「ひきこもり」などの状態では、夜間にこれらの脳番地の眠る理由がなくなります。

ですから、いつまでたっても寝付けないで寝不足になったときには、むしろ、日中に歩いてください。どのくらい歩くべきかといいますと、私の経験も踏まえて、毎日1時間です。30分では少なすぎます。ただし、家事をしたり、室内で日中に動き回っている人は、30分でも十分でしょう。日中に歩くことで、夜間にスムースに入眠できる脳がつくれるのです。

次に対処すべきは、理解系・感情系・思考系・記憶系の4つの脳番地です。この4つの脳番地は、人が感じて考える時に働く部分で、夜間も活動を継続していると、徐波睡眠に移行できず、睡眠が深くなりません。また、レム睡眠中もこの4つの脳番地は働くので、とてもコントロールすることが厄介です。

それに対して、視覚系・聴覚系・運動系・伝達系の4つの脳番地は夜間、直接的な情報入力はほとんどなくなります。睡眠時は、顕著です。目は閉じ、耳はほとんど使わず、動かず、もちろん話はしません。そして、外部からの情報もほとんどなくなります。暗くて、静かです。

この刺激の少ない夜間の脳では、記憶系の整理が始まります。同時に思考系脳番地にある「様々な考え」がよみがえり、感情系脳番地も働きます。これらが、眠りを妨げます。「考え」も「快」「不快」も、脳活動を引き起こし、眠りに落ちることを許してくれないのです。このように、理解系・感情系・思考系・記憶系の4つの脳番地を夜間にコントロールすることが、重要な課題になります。その方法は1日の出来事を日記に書くことです。

腸のことだけ考える』
加藤 俊徳
1961年、新潟県出身。医学博士。脳内科医。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。株式会社「脳の学校」代表。発達脳科学・MRI脳画像診断・認知症などの専門家。1991年に開発した脳活動計測「fNIRS法」は世界700カ国以上で脳研究に使用されている。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像法の研究に従事。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、1万人以上の診断、治療を行う。

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