(本記事は、世古口俊介氏の監修・編書「しっかり1億円貯める月1万円投資術」あさ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
日本人とアメリカ人では投資に対する考え方が全く違う
よく、「日本人は貯蓄を好む」と言われます。
それはあながち間違いではなく、第一生命経済研究所の調べによると、日本の個人金融資産1800兆円のうち、約52%が預貯金で運用されているようです。年金や保険が約29%でほとんど円建てだと思いますので、実質的には個人金融資産の8割以上が貯蓄に回っていると考えられます。
こうした流れは、団塊の世代と彼らより上の世代の人々によって代々受け継がれてきました。彼らが生きたのは、手厚い年金制度と終身雇用に伴う退職金があり、銀行の預金金利が5%を超える時代。投資など不必要なものでした。
しかし、時が流れ、必ずしも国家が生活を守ってくれるわけではない時代へと移り変わったにもかかわらず、今だにそうした貯蓄のマインドが色濃く残っています。
また現在、日本で投資というとバブル時代の過激な株式投資や不動産投資のイメージが残っているのか「当たれば億万長者だが、当たらなければ借金まみれになるもの」という間違った投資像が定着してしまい、「投資は怖い」というイメージを持っている人が多いのです。私も新卒で入社した大手証券会社で飛び込み営業を毎日していましたが、これでもかというくらい訪問先で嫌な顔をされました。
一方、アメリカでは投資が盛んに行われています。
なぜなら、アメリカは小学生の頃から投資やファイナンスについて学校で学ぶ機会があるからです。株式会社の仕組みや経済、株式市場、クレジットカードの使い方までお金に関する知識を身に付ける教育プログラムがきちんと整備されています。また家でも親が子どもにお金について教えることは当たり前です。
大学生くらいになれば、自分の判断で積極的に株を売買する学生もいます。
こんなこと、日本では考えられないと思います。
さらに、アメリカでは借りられるものはできるだけ借りるというレバレッジ(借入)を活用するという考え方が浸透しており、自宅も車も投資も当然のようにローンを組んで購入します。
日本人は「借金は悪だ」とかたくなに思い込んでいる人が多く、キャッシュでの購入が基本です。お金に対するマインドが正反対なのです。
近年では、日本人の投資や金融に対する教育レベルの低下を危惧する声もたくさん上がってきてはいますが、一度定着してしまったイメージを払しょくすることはなかなか難しいというのが現状です。
しかし、このような間違った固定観念を根っこから覆していかなければ、日本の将来、そして個人の将来のためにもよくないことだということは間違いありません。
借金は悪ではない!どんどんレバレッジを活用しよう
投資に明るいアメリカ人は日本人の4倍以上資産を増やす
ではそのようなお金に対するマインドの違いが、私たちにどのような影響を与えているのでしょうか。それは数字にはっきりと表れています。
過去20年間で日本人、イギリス人、アメリカ人の資産がどれぐらい増えたかという金融庁のデータによると、日本人の資産は1.47倍、イギリス人で2.8倍、アメリカ人では3.1倍と大きく差が開いていることがわかります。
日本人の資産がアメリカ人の資産に対してどれぐらい少ないかというと、アメリカ人は20年間で日本人の4倍以上資産を増やしていることになります。
日本が投資後進国に甘んじているうちに、アメリカなど欧米諸国との格差はどんどん広がっているのです。
その最大の理由は、やはり日本人は資産構成の半分以上が預金で資産運用を行わないということに尽きます。ちなみに、それ以外の保有資産も大半が円建ての保険や年金などとなっており、資産が増えるはずがありません。
一方でアメリカ人は預金が13%しかなく、株や投資信託(多くの投資家からお金を集めて、さまざまな資産に投資する方法)などの投資で資産運用を行っている人が非常に多い。その差は歴然です。
またアメリカのベンチャー企業では、会社に入社して「ストックオプション」という、会社が発行する株式を購入する権利をもらうことができます。
その会社が上場して価値が数億円に跳ね上がり、その株式を売却した資金を今度はエンジェル投資家となってベンチャー企業に投資するという良い投資の循環が整っているのも大きな要因でしょう。
欧米諸国との差を埋めるには、預金をやめて投資を行うしかない