この度は、新型コロナウイルスに罹患された皆様及び関係者の皆様には謹んでお見舞い申し上げると共に、一日も早いご快復を心よりお祈り申し上げます。
また、医療従事者をはじめとする感染防止、国民生活の維持に尽力されている方々に対して深謝申し上げます。
税理士法人トゥモローズでは、新型コロナウイルスの影響により、相続税の申告や納税、若しくは相続税申告のための資料準備などを行いたくても行えない相続人の方々から多数のご相談をいただいております。
今回は、そんな相続人の方々が不安に感じている相続に関する主だった疑問点について分かり易くまとめていきます。
閉鎖的な状況が続く中、さらに相続という煩雑で不慣れな手続きについて、当コラムが相続人の皆様にとって一助となることができましたら幸いです。
相続税の申告期限の延長
相続税の申告納付の期限は、原則として相続の開始があった(お亡くなりになった)ことを知った日から10カ月以内です。
この申告納付の期限について、コロナの影響を受けて4月16日に国税庁より「相続税の期限の個別延長について」が公表されています。
少し回りくどい説明がされていますが、要するにコロナの影響により外出を控えている相続人であれば、コロナの影響がなくなった後に申告・納税ができるようになった時点で「一定の記載をした申告書を提出した日」が、その相続税申告の申告納付期限となるということです。
では、コロナの影響がなくなった後とは、いつのことなのかという疑問も生じるでしょうが、現時点では、これはあくまで個人の判断となってくると考えられます。
実際に税務署に電話で問い合わせて聞いてみましたが、明言はないもののこの様なふわっとした回答でした。
例えば、外出を控えるのをやめたのが自粛解除から半年とか1年といった場合でも柔軟に対応されるかもしれませんが、この辺りは国の対応によって国税庁から追って取り扱いが出るかもしれませんし、申告を代理する税理士の判断が必要となるでしょう。
また、申告書への「一定の記載」については、非常に簡便で下記のとおり申告書の1枚目の右上に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と一行を記載するのみとなります。
※ 一部の相続人や受遺者が延長申請する場合には、その者の氏名を一行下に括弧書きで記載する
申告書をe-taxにより提出される方は、申告書1枚目に記載することができませんので、その代わりに、送信表の特記事項欄に同様の記載をして送信する必要があります。
準確定申告の申告納付期限
準確定申告の期限は、原則として相続の開始があった(お亡くなりになった)ことを知った日から4カ月以内です。
この被相続人の準確定申告についても、相続税と同様の考え方により申告納付の期限は、コロナの影響により外出を控えているのであれば、コロナの影響がなくなった後に申告・納税ができるようになった時点で「一定の記載をした申告書を提出した日」が、その準確定申告の申告納付期限となります。
また、申告書への「一定の記載」についても、同様に下記のとおり申告書の1枚目の右上に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と一行を記載するのみとなります。
資産の評価に影響はあるのか?
現時点では、コロナが不動産や株式等の有価証券に与える影響は計り知れないものがあります。コロナショックとして、既に世界経済は急激な悪化に見舞われていますが、今後も様々な影響が顕在化していく中で見通しは不透明としかいえません。
ただ、現時点においても、株価は乱高下を繰り返しながら下降していることは間違いありませんし、不動産についても今後の時価下落が予想されています。
では、この様なコロナの影響が、被相続人が所有していた各資産評価に対して、どの様に影響するのかという疑問が生じています。
この論点については、現時点では明確な取り扱いは取り上げられていませんが、過去の「東日本大震災」のときの取り扱いから以下の様な対応も考えられます。
・土地
東日本大震災のときには、被災者等の負担の軽減を図るため震災特例法が施行され、震災前に相続等により取得した被害を受けた一定の土地について、その取得の時の時価によらず、震災後を基準とした価額として「特定非常災害の発生直後の価額」によることができました。
具体的には、被災地域ごとの調整率を定めて、路線価や評価倍率(1月1日時点)に乗じて計算をすることとされていました。
【計算例】
路線価………100,000 円
調整率……… 0.80※
(路線価) (調整率)
100,000 円 × 0.80※ = 80,000 円
・有価証券
震災地域として指定された地域に3割以上の一定の財産を保有する非上場会社の株式については、震災日前に相続等により取得した非上場株式であっても、震災の影響を加味させた震災後の時価によって評価ができました。
なお、非上場株式以外の上場株式等については、東日本大震災時は約17%下がったといわれていますが、相続税の評価については特段評価減などの特例は設けられませんでした。
これらの評価減については、あくまで現時点における筆者の個人的な推測であり、リーマンショックのときには相続税について特段こういった特例はありませんでしたので、今後の動向に注視していく必要があります(提供:税理士法人トゥモローズ)