現状の投資傾向を把握するために、投資信託の販売状況をチェックするという方法があります。どのような投資信託が売れているのかを確認すれば、直近の投資に対する世の中の考え方や心証が見えてくるでしょう。そこには現状の資産管理と未来の投資傾向を知るヒントがあるかもしれません。

相次ぐ「無料化」で市場規模は拡大の様相

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(画像=leungchopan/Shutterstock.com)

まず近年の動向として大きいのは、大手ネット証券各社による手数料無料化の動きです。株の売買において、SBI証券、楽天証券、松井証券は2019年12月から売買手数料を1日50万円まで無料としました。また投資信託においても、SBI証券、楽天証券、auカブコム証券、マネックス証券、松井証券は、2020年1月時点で購入時手数料を無料としています。

こうした動きは、証券各社がビジネスモデルの転換を画策しているとも考えられ、利用者としては動向を注視しておくべきでしょう。いずれにしても、投資市場への個人の資金の流入は加速し、市場規模は拡大すると見ることができます。

人気の投信に共通する特徴と傾向

ネット証券各社を中心とした手数料無料化により、さらなる市場の拡大が見込まれている投資信託ですが、現状どのような商品が選ばれているのでしょうか。

楽天証券投資信託ランキング(ファンドスコア上位銘柄「月次買付ランキング」2020年5月8日時点)によると、「全銘柄」「積立」「NISA」ともに、信託報酬の安さに定評がある「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が上位にランクインしています。このことからも明らかなように、やはり手数料が重要な指標となっているようです。

また、QUICK資産運用研究所が2019年に行った調査によると、富裕層向けの投資一任サービス(SMA)専用ファンドにおける純資産残高増加額ランキングにおいて、2019年1-10月で最も増加額が大きかったのは「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドAコース(野村SMA・EW向け)」でした。同ファンドの為替リスクヘッジなしタイプが4位に入っており、為替リスクのヘッジの有無を選べる、ハイイールド債などリスクの高い債券も投資対象の一部に含めるなど、株式ほどのリスクは取りたくないが、一方で利回りを確保したいなどといった多様なニーズに細かく対応している点が評価されているようです。

このほか、他のランキングなどから人気投信の動向を見てみると、おおむね以下の3つの理由が多い傾向です。

1.相対的にコストが安い
投資信託に限らず資産運用において重要なのは、投資成績とコストです。どんなに優秀な成績を収めているファンドであっても獲得した利益を相殺してしまうだけのコストがかかるようでは意味がありません。ネット証券において手数料の無料化が進んでいることも踏まえ、今後はさらに低コストの投資信託が選ばれるのではないでしょうか。

2.「テーマ型」投資信託
投資対象として、時にものすごく人気が高まるのは「テーマ型」の投資信託です。テーマ型の投資信託では、「フィンテック」「バイオテクノロジー」などそれぞれのテーマに関連する銘柄を選び投資します。投資に慣れていない日本人にとって投資先がイメージしやすいことが人気になる要因かもしれません。

3.顧客ニーズへの対応力
投資一任サービス専用ファンドにおける純資産残高増加額ランキングでも見られたように、顧客ニーズへの対応力も重要だといえるでしょう。顧客である投資家の多様なニーズにどこまで対応できるかどうかは、一般的な金融以外の商品やプロダクトと同様に、人気を左右する要因となりそうです。

需要が高まる投資信託。ますます投資しやすい環境に

自分で個別の株式銘柄や債券を選ばなくていい投資信託は、運用成績とリスク、そして手数料などのコストに注意しておけば投資しやすい金融商品です。特に証券各社が購入時手数料の無料化へと舵を切っており、投資信託の需要はさらに高まることが予想されます。顧客獲得競争が激化するため、より良い条件で投資できる可能性は今後も広がる可能性があります。ぜひ資産管理の選択肢に投資信託を加えてみてはいかがでしょうか。

※上記文中の個別企業、商品名称はあくまで事例であり、当該投資信託の売買を推奨するものではありません。(提供:Wealth Road