要旨
- 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で雇用情勢が悪化する中、韓国では全ての就業者に雇用保険を適用する「国民皆雇用保険制度」の導入に関する動きが活発に行われている。
- 韓国における雇用保険制度の被保険者数は2020年3月現在1,378.2万人で、労働力人口の49.5%しか加入していない。韓国の雇用保険の被保険者数が少ない最も大きな理由は雇用保険の強制加入対象ではない自営業者の割合が高いからである。
- 韓国における自営業者の割合は2018年時点で25.1%でOECD加盟国の中で5番目に高く、日本の10.3%を大きく上回っている。韓国における就業者に占める自営業者の割合が高い理由としては、定年が早かったことや公的年金が給付面において成熟していなかったことが挙げられる。
- 韓国政府は自営業者の再就職や生活を支援する目的で2012年から自営業者も任意的に雇用保険制度に加入することを許可しているものの、自営業者の加入率は0.2%に留まっている。
- 雇用保険制度を含む社会保障制度の対象を拡大しようとする動きは、韓国だけではなく世界的に広がっている。今後、労働市場における働き方がより一層多様化していくことを予想すると、既存のセーフティーネットのみならず新しいセーフティーネットの導入を講ずる等、多様な働き方に合わせた多様なセーフティーネットの実施を慎重に考える必要があるだろう。