日本でも新型コロナウイルスの世界的な蔓延を踏まえて、従業員に対する感染予防策として「テレワーク」を導入する企業が続出している。総務省の「2018年通信利用動向調査」で「テレワークを導入している」もしくは「具体的な導入予定がある」と回答した企業は26.3%にすぎなかったが、コロナウイルスの影響により急増しているはずだ。

しかも、今回の“コロナ禍”により「テレワーク」を導入した企業でも、業務の遂行に大きな問題点が生じないことが明らかになれば、今後も定着していく可能性が考えられる。そうすれば、中長期にも導入する企業の数が右肩上がりで推移していくはずだが、こうした「テレワーク」の普及はどういった分野に追い風となるのだろうか ?

そもそも「テレワーク」の働き方には3つのパターンがある

テレワーク
(画像=Shutterstock.com)

そもそも「テレワーク」とは、「tele = 離れた場所」と「work = 働く」を組み合わせた造語で、ICT (Information and Communication Technology=情報通信技術) を活用し、場所や時間の制約に囚われずに働くことを意味する。そして、①自宅利用型 (在宅勤務) 、②モバイルワーク、③施設利用型 (サテライトオフィス勤務など) の3つの形態に分類できる。

①はコロナ対策で最も利用が広がったもので、②は営業職などのようにもっぱら社外で活動する従業員が戸外や勤務先以外のオフィススペースで行う働き方のこと。③は自社の専用もしくは共用、あるいはレンタルのオフィスなどを利用するものである。

日本では2011年3月の東日本大震災で計画停電などが実施されたのを機に、企業の間で「テレワーク」に対する関心が高まっていったという。BCP (Business Continuity Plan=事業継続性計画) という観点においても、非常に重要な取り組みだと位置づけられるようになっていった。

ただ、個人、法人を問わず、ずっと続いてきた出勤という慣習を刷新するのは容易でないのが現実であり、冒頭でも触れたように実際の導入には二の足を踏む企業が多かったものの、今回の騒動で背中を押される恰好となった。

「テレワーク」の三種の神器は「オンラインMTG・ビジネスチャット・クラウド」

では、こうして「テレワーク」が普及していくと、どのような分野に恩恵が及ぶのか ? 企業という集団でビジネスを展開している場合、どうしても不可欠となってくるのが従業員同士のコミュニケーションだ。

それぞれが離れた場所にいても、報告や相談、協議、情報共有などが円滑に進められていくことが求められてくる。ICTが発達した今、オンラインミーティング (MTG) ツールやビジネスチャットツールによってそれらが可能となっている。

言い換えれば、「テレワーク」の浸透はそういったツール (アプリやプラットフォーム) を提供する企業にとって絶好の追い風となってくるわけだ。

実際、米国市場では相場全体が史上最大規模の暴落を記録する中で、ビデオ会議アプリを手掛ける企業の株価が急騰。また、ビジネスチャットアプリを提供する企業の株価もいったんは相場全体に引っ張られる恰好で急落したものの、その後は強烈なピッチで反発した。

また、個々の従業員は情報端末を用いて業務をこなすが、そこでやりとりしているデータはクラウドによって管理されることになる。そのシステム構築はもとより、必要に応じた改善や拡充などといったニーズが持続的に発生していくだろうし、情報漏洩に関しても厳格な防止策が求められてくるはずだ。

SI (システムインテグレータ) においては目先の開発案件受注だけにとどまらず、メンテナンス面の需要も見込まれることになろう。さらに、勤怠や経理などの管理もクラウド上で行われるので、そういったサービスを提供している会社にも商機拡大となりうる。

「テレワーク」関連ビジネス市場は従来の予想を超えて拡大か ?

これからも「テレワーク」が推進されていくとすれば、その市場規模はどの程度まで拡大するのだろうか ? かなり先のことまで展望した調査はまだ見当たらず、市場調査を手掛ける (株) シード・プランニングが2013年12月~2014年4月に実施したリサーチでは、2020年にテレワークソリューションの市場規模が1068億6000万円になると予測している。 (”プレスリリース”,株式会社シード・プランニング, https://www.seedplanning.co.jp/press/2014/2014041601.html) 一方、 (株) 矢野経済研究所は2018年10月の時点で、国内のワークスタイル変革ソリューション市場が2022年度に5618億4000万円に達すると推察。 (”プレスリリース,株式会社矢野経済研究所, https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1996) いずれにしても、大きく拡大していくという道筋は一致しており、最新の予想はさらに高い数字となってくる可能性も考えられる。

こうして市場が拡大していけば、「テレワーク」関連ビジネスの成長もいっそう加速していくことが期待できよう。(提供:大和ネクスト銀行


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