【経営トップに聞く 第31回】中島一明(ベルフェイス代表取締役)

ベルフェイス,中島一明
(画像=THE21オンライン)

インターネットが発達したとはいえ、営業と言えば、顧客のところへ足を運んで商談をするのが当たり前――。そんな常識を覆しつつあるのが、オンライン商談システム「bellFace」だ。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレワークを導入する企業が増える中、問い合わせが急増しているという。高校中退後、2度目の起業で「bellFace」の運営会社を立ち上げた創業社長に話を聞いた。

ITリテラシーが低い相手にも使える「電話の進化版」

――まず、「bellFace」とはどういうものなのか、改めて教えてください。

中島 ITリテラシーの高い、低いにかかわらず、すべての方に対してスムーズに営業ができるオンライン商談システムです。

WEB会議のシステムにカテゴライズされて、「Zoomとどちらがいいのか」というような話をされることも多いのですが、我々は電話の進化版という定義をしていています。電話はWEB会議の230倍も使われているそうです。それだけ普及している電話というコミュニケーション手法を、一瞬で対面以上に豊かな環境にシフトさせることがコンセプトです。

――そのコンセプトは、具体的にどのようにプロダクトに反映されているのですか?

中島 営業パーソンが、お客様と電話がつながった状態で、「ベルフェイスで検索してください」とお伝えします。そして、お客様がブラウザで「ベルフェイス‐電話しながら、対面以上の商談を」というページを開くと「接続ナンバーを発行」というボタンがあるので、そこをクリックしていただくと4桁の番号が表示されます。その番号を、お客様に電話口で伝えていただくと、お客様の端末に接続でき、資料を見せながらのプレゼンテーションなどができるようになります。

お客様の端末がPCでもタブレットでもスマホでも、Windows でもMacintoshでも、ブラウザがどんなソフトのどんなバージョンでも、接続できます。

――ユーザーに支持されているのも、そのコンセプト?

中島 そうです。今はBtoBの営業に特化して開発しているのですが、法人や事業所の9割は、飲食店や保育園、病院などで、ITリテラシーがそれほど高くありません。事前にアプリをインストールしてもらったり、URLを伝えたりすることは難しいんです。増してや、営業マンがお客様にお願いすることはできません。ですから、お客様が慣れ親しんでいる電話からスムーズにオンラインでの商談に移行できることが、とても重要です。

――あらゆる環境の相手に接続できるようにするのは、技術的に大変なのではないでしょうか?

中島 その通りです。デモを見た方の大半は、一瞬で接続できても特に驚くことはないのですが、4桁の番号だけで千差万別の環境に接続できるプロセスを、何百パターンもの技術の組み合わせによって実現しています。Chromeはグーグル、Internet ExplorerやEdgeはマイクロソフト、Safariはアップルと、ブラウザだけでも作っている会社がバラバラで、それぞれの基準で作っていますし、さらに更新も頻繁に行なっています。セキュリティの環境もそれぞれ違う。それらに対応するため、裏で膨大な更新作業を続けている結果、ユーザーにストレスなく使っていただけているのです。

――すると、御社にはかなりの数のエンジニアがいる?

中島 私の直属の開発責任者が3人いて、それぞれが別のチームを担当しているのですが、その1つが、当社のUSP(ユニーク・セールス・プロポジション)である「必ずつながる・つながったあと快適・早く軽い」という点に特化して開発を続けています。

――あとの2つは?

中島 1つは、新機能の開発をしているチームです。接続ができてこそ、その上に様々な機能が実現できます。例えば、クラウドに保存している資料を素早く呼び出したり、そこに書き込みができたり、お互いに共有したり、その場でダウンロードしていただいたり、また、名刺交換をしたり、肌を綺麗に見せたり痩せて見せたり、といった、営業に使うシステムとしての深掘りを続けているチームです。

もう1つのチームは、営業のビッグデータを分析し、その価値をお客様に提供しています。

――創業から約5年経ちますが、現在、ユーザー数はどれくらいですか?

中島 有料でご契約いただいているユーザーが1,300社を超えています。

――どのようにユーザーを増やしてきたのでしょう?

中島 新型コロナウイルスの流行によって状況が変わりましたが、これまではコツコツと積み重ねてきました。

――bellFaceで営業をして?

中島 はい。我々が誰よりもbellFace使いこなして営業活動をしていくことで、市場の啓蒙にもなりますし、お客様への説得力も増しますので。

――営業先の反応は、どうだったのでしょう?

中島 初期は、どういうマーケットにフィットするのか模索していました。コールセンターや通販会社などにフィットするのではないかと思って持って行ったのですが、「良いアイデアだね」とは言われるものの、具体的にどの領域で活用すれば費用対効果が上がるのかが見つからず、なかなか導入していただけませんでした。

そうする中で最終的に見つけたのが、SaaSなど、BtoBでIT系やWEB系の商材を低価格で提供している企業でした。そこから導入企業が増えていき、そうした企業が求める機能にフォーカスしていきました。

――今は、どんなユーザーが多いのでしょう?

中島 業種も用途も広がっています。〔株〕ユーザベースやSansan〔株〕、〔株〕SmartHR、ウォンテッドリー〔株〕などのIT企業にも、やはり多く使っていただいていますが、さらに上位のユーザーには、ディップ〔株〕、エン・ジャパン〔株〕、リクルートグループやパーソルグループの企業、〔株〕ビズリーチなど、人材業界の企業が多くいます。

それで最近、「ITリテラシーが高くないお客様に対して営業をしている企業」に、ユーザーのペルソナを再定義しました。

――2018年から照英さんが出演しているCMも流していますが、その効果は?

中島 移動する営業パーソンをターゲットに、電車やタクシーの車内を中心に流しました。CMのインパクトが強かったおかげで、認知度を急激に上昇させることができました。

――新型コロナウイルスの流行以前から「働き方改革」が叫ばれていましたが、御社にとって追い風になっていましたか?

中島 当社はもともとフレックス勤務で、在宅ワークもOKにし、人事評価制度も含めて、働き方について様々なチャレンジをしてきました。世の中でも「働き方改革」が言われていましたが、なかなか変わらないなと思っていたところ、新型コロナウイルスの流行によって強制的に働き方が変わったと感じています。bellFaceの申込件数も大幅に増えています。黒船が来ないと開国しなかったように、外部から何かが来ないと変わらないのが日本人の特性なのではないでしょうか。

――今(取材時)、4月末までの申し込みで、5月末までbellFaceを無償で使えるようにしていますね。

中島 これまでの累積の契約者数をはるかに超えるお申込みをいただいていて、改めて今多くの企業様が営業活動に困っている状況にあることと、bellFaceの需要の高さを感じています。