中国で経済活動が正常化する中、消費関連株に改めてフォーカスしてみたい。市民の貯蓄志向が高まる一方、生活をより便利かつ豊かにするための支出は増加傾向だ。ネット、教育、医療関連などが注目される。

中国関連株
(画像=Getty Images)

デパート単日売上が驚異の25億円

「笑っちゃうくらいの混雑ぶりでした」――。

5月16日の賑わいをこう表現する買物客。上海市の繁華街、南京東路にある上海新世界大丸百貨の前には、朝7時から開店待ちの行列ができたという。

10時の営業開始を10分早め、閉店は深夜にずれ込んだ。同百貨はこの日、「消費額500元で300元分の買物券贈呈」のキャンペーンを実施。これを目当てにした買物客が殺到し、高級ブランド品から宝飾品、化粧品、家電製品などが飛ぶように売れた。百貨店全体の売上高は、この日だけでなんと1億7100万元(約25億6000万円)。化粧品は4000万元(約6億円)を売り上げたという。

5月11日に営業を再開した上海ディズニーリゾート。中国最大規模のテーマパークの再開は、経済活動の正常化を印象付けるように現地で大々的に報じられた。入場客のキャパシティーは通常6万人ほどだが、当面は3分の1程度に絞っている。

完全予約制のチケットは、再開初日分が即完売。今も数週間先まで入手困難な状態が続く。小学校が登校再開前ということもあり、園内には子供連れの客が目立つ。米中の緊張関係などどこ吹く風。中国の一般市民は、米国の象徴とも言えるディズニーの雰囲気を思い思いに楽しんでいた。

上海の空の玄関口、虹橋国際空港。一時期は閑散としていたが、出張者や旅行客が徐々に戻ってきた。中国民用航空局は、5月15日のフライト数が1万262便に上り、新型コロナウイルスの感染拡大前の約60%の水準まで戻ったと発表。

2月1日以来、初めて1万便の大台を回復したという。ただ、乗客の“総量規制”も行われている。予約サイト上では満員表示だったフライトも、乗ってみると空席が目立った。3列席の真ん中はあえて空席。“間引き”された機内に緊張感はまだ残る。

「報復性消費」にあらず

 上海市が主催した消費拡大イベント「五五購物節」(5/1~10)の売上高は882億元強(約1兆3000億円)に上った。ネット通販では400億元強(約6000億円)を売り上げた。商業モールやスーパーはこれに合わせて一部商品を「55折(45%引き)」とするなど、市を挙げた一大セールが繰り広げられた。

このような活況は、一部で「報復性消費(リベンジ消費)」と呼ばれている。しかし、一時的かつ限定的なものにとどまるという見方も根強い。アント・フィナンシャル研究院などがまとめた「新型コロナ下の家計調査報告(1~3月)」は、調査世帯の50.2%が「貯金を増やすために消費を抑える」と回答したことを受け、「大規模な消費刺激策がない限り、『報復性消費』の可能性はあまりない」と結論付けた。

外食産業では、景気後退に伴う市民の収入減で“理性的消費”の傾向が強まり、「消費降級(消費のダウングレード)」が進むとの声も出ている。中華料理のファストフード店を展開する九毛九国際HD(09922)は5月12日、一部店舗の閉鎖を発表した。新型コロナの影響を緩和するため、北京、天津、武漢での十数店舗を閉じる。同社は今年1月に香港市場にIPO上場したばかり。調達資金3億1500万香港ドルのうち72%を店舗網拡充に充てる計画だった。比較的資金に余裕がある上場企業でさえこの状況。数多の中小企業が苦境にあることが推察される。

一方、同じ外食産業でも火鍋や燒烤(中華風バーベキュー)などは戻りが速いという。海底撈国際(ハイディーラオ、06862)の店舗にはいつもの行列が見られるようになった。また、贅沢品購入を控え日用品・実用品を優先する“身の丈消費”の高まりを受け、スーパーの業績が伸びている。永輝超市(601933)は2020年1~3月期で前年同期比31.6%増収39.5%増益と好調だった。

高まる貯蓄志向、消費には慎重な見方

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(画像=東洋証券作成)

 新型コロナによる混乱を経て、実際、市民の消費行動に変化はあるのだろうか。中国人民銀行(中央銀行)が四半期に一度まとめている家庭調査報告から読み解いてみる。

最新の20年第1四半期(1~3月)版では、市民の貯蓄志向が高まり、投資と消費への意欲が減退していることが示された。「貯蓄を増やす」と答えた者は全体の53.0%に上り、前四半期の45.7%から急増。ここ10年で最高となった。

一方、元々低下傾向にあった「投資を増やす」は25.0%で、こちらはここ10年で最低。じわり右肩上がりで推移していた「消費を増やす」は22.0%まで低下した。景気の先行き不安が反映されているのだろう。消費者心理はかなり慎重なことがうかがえる。

一方、消費支出対象でも顕著な変化が見られる。「向こう3カ月で支出を増やす項目」という設問(複数選択)に対し、「医療・保健」と答えた者が29.4%となった。ここ数年で順調に増えており、今回の新型コロナ禍で一気に上昇。医療や健康への支出を惜しまない傾向が表れている。また「保険」も17.1%まで上昇した。

一方、これまで30%前後だった「旅行」は19.0%まで急低下し、「不動産」は19.2%、「高額品」は18.0%と20%を割り込んだ。余分な出費を避ける消費性向になるのだろうか。

医療・保健・教育分野への支出増

中国経済を分析し、投資戦略を考える上で、これまでは経済規模の拡大や市民の所得向上など大局的な見方が有効だった。しかし今後は、特に消費面に関して、現場の足元動向や市民の消費意識の変化など、より細かい視点が重視されるだろう。

例えば、前述の消費支出対象のトップの「教育」は、今後の伸びも期待される有望分野。オンライン学習ソリューションを手がける科大訊飛(アイフライテック、002230)やオンライン教育事業に進出した網龍網絡HD(ネットドラゴン・ウェブソフト、00777)、新東方在線科技(01797)などの銘柄に注目が集まると見られる。

医療を重視する傾向の高まりは、中長期的に江蘇恒瑞医薬(600276)や石薬集団(01093)など製薬大手の商機拡大につながるだろう。また、阿里健康信息技術(アリヘルス、00241)や平安健康医療科技(ピンアンヘルスケア、01833)などへの物色も強まりそうだ。健康意識の向上という意味では、スポーツ需要の高まりで安踏体育用品(アンタスポーツ、02020)も恩恵を受けると思われる。

旅行ニーズは短期的には縮小傾向となりそうだが、市民の根強い外出意欲は不変。同程藝龍控股(00780)などの関連株は中長期的視点で見て行きたい。

主役はネット消費

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(画像=東洋証券作成)

中国の消費市場でのキーワードはやはりネットだ。新型コロナ禍の中でも、ネット通販やフードデリバリー、ライブコマースなどが大きな話題となった。

ネット小売総額の伸びは近年、20%前後で安定していたが、20年2月はさすがに前年同月比3.0%増まで減速した。ただ、その後は5.9%増(3月)、8.6%増(4月)と徐々に成長ペースを上げている。小売市場全体が20.5%減(2月)、19.0%減(3月)、16.2%減(4月)と落ち込んでいるのとは対照的だ。一方、小売全体に占めるネット比率は着実に上昇中。19年11月に20.4%と初めて20%台にのせ、20年4月は24.1%と過去最高値となった。

ネット消費者は若者層に限らず、中高年層も存在感を増してきた。ネット通販の利用率(アント・フィナンシャル研究院などまとめ)を見ると、40~60歳の家庭で23.1%(13年)⇒48.0%(19年)に大きく上昇。60歳以上の家庭でも7.8%(同)⇒15.6%(同)まで伸びた。新型コロナ禍でやむを得ずネットスーパーなどを使い、その便利さを評価したリピーターもいるだろう。ネット消費の裾野拡大が進んでいる。

ただ、注意したいのは、20年前半はビジネスチャンスを逸し、ネット関連の大手でも業績不振に陥るケースがあるということだ。例えばフードデリバリー最大手の美団点評(メイトゥアン、03690)。新型コロナ禍での外出制限により商機が拡大したと思いきや、20年1~3月期は前年同期比12.6%減収で営業赤字を計上した。需要自体の減少に加え、ホテル・旅行予約部門が大きく落ち込んだ。

同社は、向こう数四半期にわたってマイナス影響が続く恐れがあるとする。もっとも、株価は5月に入り上場来高値を更新する場面もあり、なかなか一筋縄ではいかないところ。足元業績と今後の成長性をにらみながらの銘柄選択を心掛けたい。

図表
(画像=各種資料より東洋証券作成)

(上海駐在員事務所 奥山)

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