「正解」を出す力にもう価値はない

感性思考,佐々木康裕
(画像=THE21オンライン)

何かアイデアを出す必要があれば、とりあえず会議室に人を集めてブレスト……。どの会社にもありがちな光景だ。

ただ、実際のブレストは、他者への気兼ねや内向的な人の意見がくみ取れないなど、やり方に相当気を付けないと効率の悪いものになってしまう。

感性思考』(SBクリエイティブ)を上梓したビジネスデザイナーの佐々木 康裕氏にブレストを超える3つのアウトプット法を聞いた。

みんなで効率的にアイデアを生み出すアウトプット法

私はもともとキャリアを総合商社でスタートさせ、主に新規事業開発に従事していました。当時MBA留学も検討していましたが、方針転換をし、米国のデザインスクールへの留学を選びました。理由は、従来のビジネススクールで学ぶような論理思考や戦略思考では解決できない問題に対処できるようになるためです。

デザインスクールでは、クリエイティビティに依存せず、誰でも使用可能なメソッドやフレームワークをベースにしながら、誰でも100個でも200個でもアイデアを生み出せる方法も教わりました。

1つ目は「ブレインライティング」です。これは私が一番よく使う発想法で、チームでアイデアをつくり上げていくプロセスを楽しめます。

感性思考,佐々木康裕
(画像=THE21オンライン)

まず、ブレインライティング用の紙を一人1枚ずつ用意します。1枚の紙を真ん中で1回折り、さらに真ん中で折って4つのマスをつくります。付箋にアイデアを書き込んで1枚の紙に貼っていく方法でもいいと思います。

【ステップ1】

例えば「満員電車を解消するツール」というような一つのテーマを決めたら、それに対するアイデアを自分の紙の1マスに書き込みます。制限時間は3分ぐらい。

【ステップ2】

自分がアイデアを書き込んだ紙を隣の人に渡します。自分は隣の人の紙を受け取り、別のマスに自分のアイデアを書き加えます。

一つ目のアイデアが「空を飛んで通勤できるタケコプターをつくる」だとしましょう。

「飛ぶスピードは3段階で切り替えられるようにする」と本体に関するアイデアを加えてもいいですし、「空が渋滞しないように交通整理するアプリをつくる」と別の切り口からのアイデアも面白くなります。制限時間内に書き込んだら、隣の人に渡します。

これを繰り返すと、4人でやったら12分で4つの洗練されたアイデアが出ます。もう一周すると24分で8つのアイデア。1時間で20個のアイデアが生まれます。

【ステップ3】アイデアを選ぶ

全員が書き終えたら、どれがいいアイデアなのかをみんなでディスカッションします。

ブレインライティングは、全てのアイデアにチームの全員が関われるのが最大のメリットです。

別の言い方をすると、他の手法では、アイデアとアイデアの発想者が明確にひも付いていますが、ブレインライティングは、全てのアイデアが全ての人と結び付いています。

アイデアを選定する際に「これは上司のアイデアだから……」「主担当者の彼の顔を立てないと……」など忖度する必要がなくなります。ブレインライティングは全てのアイデアに全員が関わっているため、誰かの顔色をうかがう必要はありません。

私は、アイデア発想者とアイデアとはつかず離れずの適切な距離感が大事だと考えています。アイデアに愛着があり過ぎると、それがうまくいかない予兆があったとしても、「これはお気に入りのアイデアだしもう少し可能性を探りたい」と判断を鈍らせ、過剰に深追いしてしまうときもあります。

一方、アイデアに愛着がなければ、熱量を持ってアイデア実現のために取り組みづらいこともあるでしょう。そういった観点で、ブレインライティングで出したアイデアは自分のアイデアでもあり、みんなのアイデアでもあるため、つかず離れずの距離感を保つのに有用です。

そして、多くの人にとってアタッチメントのあるアイデアだと、社内で企画を通しやすくなります。ブレインライティングを実践した人たちを見ていると、他のアイデア発想法よりも満足度が高い傾向があります。また、自分のアイデアにチームメートの考えが加わることで、最終的に思いも寄らないアイデアになる醍醐味も味わえます。

これは他のアイデア発想法にも言えますが、「他人のアイデアに乗っかる」というのも実は重要です。

「人のアイデアを盗ってしまうことにならないか」「元のアイデアを否定することになるのでは」と遠慮することはありません。むしろ、優れたアイデアは、何かと何かを足したものから生まれることが多いので、むしろ歓迎すべきでしょう。

人と自分のアイデアをコラボレーションするのだと考えたら、遠慮なく意見を出せるのではないでしょうか。