税金は、公共サービスの主要な財源として国、地方公共団体(自治体)が個人や法人から集めるものです。
公共サービスとは、身近なところでは道路・公園などの建設や維持管理、学校教育、ごみ収集などがあげられます。規模の大きなものでは、社会保障、警察、国防、外交などがあり、いずれも私たちの生活に欠かせないものです。
ここでは、私たちが生活や事業活動のさまざまな場面で負担している税金の種類としくみについて解説します。
1.日本における税金の種類としくみ
日本における税金にはさまざまな種類があります。これらの税金は、「誰が」、「何に」、「どのように」課税しているかという点に着目して分類することができます。
- 誰が:国が課税するか、地方(都道府県、市区町村)が課税するか
- 何に:所得に課税するか、資産の取得・保有に課税するか、消費に課税するか
- どのように:直接税か、間接税か など
財務省のウェブサイトには、以下のように「誰が何に」課税しているかに着目して税金を分類した一覧表が示されています。
1-1.誰が課税しているか(国税・地方税)
誰が課税しているかという点に着目して税金を分類すると、国が課税する「国税」と地方が課税する「地方税」に分けられます。
地方税はさらに、都道府県が課税する「都道府県税」と市区町村が課税する「市区町村税」に分けられます(法律上はそれぞれ「道府県税」、「市町村税」と呼ばれます)。
主な国税には所得税、法人税があります。主な地方税には住民税(都道府県民税、市町村民税、特別区民税)や固定資産税があります。
消費税は通常は一つの税のように扱われていますが、厳密には国税である消費税と地方税である地方消費税で構成されています。レシートや領収書などで消費税等と書かれているのは、2つの税を総称しているためです。
令和元年(2019年)10月1日以降の消費税と地方消費税のそれぞれの税率は次のとおりです。
1-2.何に課税しているか(所得課税・資産課税・消費課税)
何に課税しているかという点に着目して税金を分類すると、おおむね以下の3つに分けることができます。
- 所得課税
- 資産課税
- 消費課税
所得課税の税金は、個人や法人の所得(収入から経費を差し引いたもの)に対して課税するものです。所得税、法人税、住民税などがあてはまります。
資産課税の税金は、個人や法人が行う資産の取得・保有に対して課税するものです。相続税、贈与税など資産の取得に課税する税金のほか、固定資産税のように資産の保有に課税する税金があります。
消費課税の税金は、個人や法人の消費に対して課税するものです。消費税、地方消費税、酒税、揮発油税などがあてはまります。
このほか、領収書や契約書などの文書に課税する印紙税(国税)や、国民健康保険料を税金として徴収する国民健康保険税(地方税)などがあります。これらの税金は、上記の財務省の分類表では「資産課税等」として分類されています。
1-3.どのように課税しているか(直接税・間接税 ほか)
税金をどのように課税しているかという点に着目した分類には、次のようなものがあります。
- 直接税と間接税:税金を納める人と負担する人の関係による分類
- 申告納税と賦課課税:誰が税額を計算するかによる分類
- 普通税と目的税:税収の使いみちによる分類
1-3-1.直接税と間接税 直接税は、税金を納める人(納税義務者)と税金を負担する人(担税者)が一致する税金です。主に所得課税、資産課税の税金があてはまります。
間接税は、納税義務者が販売価格に税金を上乗せすることで消費者に税負担を転嫁するもので、納税義務者と担税者が一致しない税金です。主に消費課税の税金があてはまります。
実際には、賃貸住宅の固定資産税を賃借人が実質的に負担しているケースや、小規模な商店が消費税を転嫁しないケースなど、上記の考え方にあてはまらない例外もあります。
1-3-2.申告納税と賦課課税 申告納税は、原則として納税者が自ら税額を計算して申告する方式です。国税は主に申告納税です。
所得税を例にあげると、納税者は自分で税額を計算して確定申告書を提出します。確定した税額は、自分で納付書に記入して金融機関の窓口などで納付します。
賦課課税は、自治体等が税額を計算して納税者に通知する方式です。地方税は主に賦課課税です。
固定資産税を例にあげると、納税者は特に手続きをすることなく、一定の時期に自治体から税額の通知を受けます。確定した税額は納付書に印字されているので、金融機関の窓口に持参して納付します。事業用の償却資産については申告が必要ですが、償却資産の内容を届け出るだけで、納税者が税額を計算するわけではありません。
1-3-3.普通税と目的税 普通税は、税収の使途を特定しないで一般的な財源に充てる税金です。一般税と呼ばれることもあります。所得税、法人税、住民税などがあてはまります。
目的税は、税収の使途を定めた税金です。狩猟税、都市計画税、入湯税など一部の地方税があてはまります。
2.税金を滞納するとどうなるか
税金は定められた期日までに納めなければなりません。何らかの理由で税金の納付が遅れると、納期限の翌日から延滞税(地方税では延滞金)が課されます。
国税の延滞税の税率は以下のとおりです。
国税の延滞税の税率(平成30年1月1日~令和2年12月31日の期間)
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.6%
- 納期限の翌日から2か月を経過した日以降:年8.9%
地方税の延滞金の割合も国税に準じていますが、納期限の翌日から1か月を経過すると高い方の割合が適用されます。
税金の滞納が長期にわたると、文書や電話による督促が行われます。督促に応じない場合は、財産の差し押さえが行われることもあります。
これらの処分は税収を確保するという目的のほか、期限までに納めた人との公平を図る目的もあります。
税金が払えないときは、滞納するのではなく、まず税務署(または自治体の税務担当窓口)に相談してみることをおすすめします。
わざわざ叱られに行くようで気が進まないかもしれませんが、やむをえない事情がある場合は、納税の猶予や換価の猶予によって納税を待ってもらえる可能性があります。
3.相続税と贈与税
国税では、税の種類ごとに法律が定められています。所得税は所得税法、消費税は消費税法によって課税の要件が定められています。
しかし、相続税と贈与税はそれぞれ異なる税でありながら、どちらも相続税法によって規定されています。贈与税は相続税を補完する目的があるためです。
相続税は、亡くなった人の遺産を相続した人に課税されます。遺産が多いと相続税が高額になるため、生前贈与をしてあらかじめ遺産を減らそうとする人もいます。本来遺産として相続されるはずの財産が生前贈与されれば、相続税が少なくなってしまいます。さらに、生前贈与をしない人との間で不公平になります。
贈与を受けた人に対して贈与税を課税することで、税収を確保し、生前贈与をしない人との間の公平を図っています。
4.まとめ
税金は、私たちが無料あるいは低価格で受けているさまざまな公共サービスの貴重な財源となるものです。税金の種類やしくみに関心を持つと、国や地方公共団体によって、所得、資産、消費など生活や事業活動のさまざまな場面で課税が行われていることがわかります。
自身で納付する必要がある税金は、滞納しないように注意しましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識)