先月までの動き
企業年金・個人年金部会では、制度改正の進捗状況が説明され、これまでの議論で積み残されてきた検討課題と今後の進め方が議論された。年金事業管理部会では、日本年金機構の令和元年度の業務実績書(案)が議論された(1)。
○社会保障審議会 企業年金・個人年金部会
6月17日(第11回) 制度改正の進捗状況と今後の検討課題・進め方、ほか
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11903.html (資料)
○社会保障審議会 年金事業管理部会
6月29日(第49回) 日本年金機構の令和元年度業務実績、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo49_00001.html (資料)
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(1) 両部会とも、新型感染症の影響で報道関係者以外は傍聴できず、ネットでの視聴もできない。ただし、企業年金・個人年金部会の議事録は、通常(約1か月後)よりも早く(9日後に)公開された。
ポイント解説:確定拠出年金等の見直しの方向性
企業年金・個人年金部会では、5月29日に改正法案が成立した直後にもかかわらず、今後の改正に向けた議論が行われた。本稿では、成立した改正内容を踏まえて、今後の見直しの方向性を考察する。
●成立した改正内容と施行時期:確定拠出年金関連が中心。段階実施だが、本格的な施行は2022年
今回の改正には、多くの項目が盛り込まれているが、私的年金では確定拠出年金に関する項目が中心で、その多くは2022年に施行される。なお、法律で「公布から6か月以内」となっていた中小企業向けの確定拠出年金に関する改正は、2020年10月に施行予定であることが、同部会で明らかにされた。
●次期改正への段取り:2022年の確定拠出年金関連の改正に向け、税制関連を優先
今回の改正は多岐に及ぶが、以前からの検討課題が残っている(2)。同部会では、改正の施行に併せつつ、今回の改正過程と同様に税制改正のプロセスも考慮して、論点の優先度を決める方針が示された。今後は、2022年に予定されている確定拠出年金関連の改正施行に向けて、準備期間も考慮しながら議論が進むと思われる。
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(2) 国会審議では検討規定が追加され附帯決議も行われた。本誌2020年6月号参照。
●論点1・拠出限度額:まずはiDeCoの共通化、さらに確定給付企業年金との「穴埋め型」も
税制改正との関係で多くの関係者から要望されているのが、拠出限度額の見直しである。ただ、私的年金の最大の課題は中小企業などでの退職給付の縮減であるため、単純な限度額の引上げとはならないだろう。
まず考えられるのは、iDeCoの限度額の共通化である。現在は複数の種類があり、分かりにくさが指摘されている。普及促進の観点からこれらを共通化するのと同時に、限度額が高いものに揃えられる可能性がある。
さらに考えられるのは、「穴埋め型」とも呼ばれる確定給付企業年金との調整である。現在は、確定給付企業年金に加入していると、その水準に関わらず、確定拠出年金の限度額が一律で半額になる。これが、確定給付企業年金の水準に応じた減額(3)へと見直される可能性がある。その際、確定給付企業年金の水準には上限がないことや、現在は最低でも一定の拠出が認められていることを考慮すれば、図表5のような形になる可能性がある。
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(3)一定の限度額のうち、確定給付企業年金で埋まらない分を確定拠出年金で埋められる形。このため「穴埋め型」とも呼ばれる。
●論点2・特別法人税:凍結が続いているが、撤廃に向けた条件整備は難しい課題
また、特別法人税の撤廃も、多くの関係者が要望している。確定給付企業年金や確定拠出年金では掛金が非課税となっており、それに対応して税制を中立にするために設けられているのが特別法人税である。ただ1999年以降は、普及促進(衰退防止)と低金利下での財務的な健全性確保のため、課税が凍結されている(4)。
これが廃止されると恒久的な優遇税制になるため、拠出の限度や中途引出しの禁止など一定の歯止めが必要となる。この点では、既に拠出限度額等がある確定拠出年金が廃止に向けて有利だが、確定拠出年金のみで廃止されると、従業員のリスクが少ない確定給付企業年金の衰退が予想される。また、確定給付企業年金に何らかの制約を加えれば、それも確定給付企業年金の衰退につながる懸念がある。
最終目的である老後の安心の向上に向けて、公的年金とあわせた総合的な議論を期待したい。
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(4)2020年の税制改正で、2022年度末までの凍結延長が決まっている。
中嶋邦夫(なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任
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