そもそもデータ化がされていない……
続いて両氏が紹介してくれたのは、次のようなパターンだ。
【パターン2】
金融機関のB社では、資料のトリプルチェックをしたり、同じ情報を業務ごとに別のシステムに入力したりと、人手が多く必要で、非効率であることが経営課題となっている。そこで、コスト削減を目的に、データ統合プロジェクトが始動した。
ところが、大量の情報がデータ化されずに、紙の状態で倉庫に保管されていることがわかった。データ化されている情報もあるが、支店によって違うシステムを使っている。同じシステムを使っていても、職業欄に職業以外のメモをしていたりと、支店によって使い方がまちまちで、とても統合できる状態になっていない――。
こんな状態の企業はいくらでもあるそうだ。こうしたケースでは、とにかくRPAやOCRなどを使って、情報のデジタル化を進めること。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する小峰氏は、データ入力のためにクライアント企業を訪ねることも多いという。
「支点・力点・作用点」を一貫させ、一つひとつに工夫を
両氏が所属するベイカレント・コンサルティングでは、データを価値に変える確度とインパクトを高めるためには、「テコの支点・力点・作用点」を一貫させ、一つひとつを工夫するべきだと考えている。
「パターン1の場合は、データは大量にあるので『力点』は問題ないのですが、それをどういう打ち手につなげるのかという『作用点』と、そのためにどのようにデータ分析をするのかという『支点』が欠けています。
一方、パターン2の場合は、コスト削減という目的がはっきりしているので『作用点』はいいのですが、『力点』が欠けているのが問題です」(小峰氏)
「力点」については、データの件数を増やすとともに、種類を増やすことも重要だ。
「支点」については、実現可能なアクションにつながる分析をすることが重要。先述したように、「年収300万円の人がよく買う」という分析ではアクションにつなげられないが、「デート中に購入する人が多い」という分析なら、来店客を見て接客に活かすことができる。
そして、「作用点」については、データに基づいたものにすることが重要となる。
「長年の経験とカンは、多くの場合は正しいのですが、それだけで仕事をしていると新しい発見がありません。データに基づいたアクションの中には、経験とカンに反するものもあるはずですが、それでも試してみる勇気が必要です。試しているうちに、経験が増え、カンもさらに磨かれるとともに、データの限界も見えてくるでしょう。そうしたら、さらに進化した経験とカンで仕事をすればいいのです」(則武氏)
則武譲二・小峰弘雅(デジタル・イノベーション・ラボ)
(『THE21オンライン』2020年06月26日 公開)
【関連記事THE21オンラインより】
・ソニー銀行「データアナリストを育成し、新商品を生み出す」
・40代がこれから直面するヤバい「職場の大激変」とは?
・違和感のあるデータにこそチャンスがある!