北海道がコシヒカリ、青森県がみかんの産地に
そして、さらに20年くらい先の2040年頃になると、四つ目の災害として世界的な飢饉が危惧されます。それまで作物が育っていた地域の気候が変わり、農作物が育たなくなるからです。
北海道では、本州とは違う寒さに強い品種の米が栽培されていますが、その頃にはコシヒカリの有力な産地へと気候が変化することになります。青森県は今、りんごの産地ですが、このまま気候変動が続くと、やがてみかんの産地に変わることがシミュレーションで予想されています。
「だったら、作物の品種をシフトしていけば大丈夫だろう」――と思うかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。
日本国内ではコメの品種変更で乗り切れる事態も、南に下って、例えばメコン川流域など熱帯の穀倉地帯のことを考えたら、それでは済まない事態になります。
日本だって、りんごの木を切り倒してみかんの木を植えたとして、それで何年後から収穫できるのかという問題は起きますし、じゃあ今みかんの産地の都道府県ではいったい何を植えたらいいのか、という問題が起きます。
農業にとっては平均気温の2度上昇への対応はそもそも難しい。その中で、世界的にどこかのタイミングで、70億人の世界人口を食べさせることができないほどの不作の年がいずれ起きると予測されている。これは、かなり怖い未来の現実です。
2040年からは湾岸都市が沈み始める
そして五つ目に、海岸線の上昇です。言い換えると、世界の沿岸都市の水没が2040年頃には確実に起きます。
今でも世界中の海岸線は、少しずつ上昇しています。それを、堤防を高くすることで防げている。このような対策は、20年代までは通用すると考えられています。逆に言えば、20年代の10年間は、海岸線の上昇による被害は主に気象災害時にしか起きないという話です。
これが30年代に入ると、いよいよそれでは済まなくなります。地球温暖化の影響は確実に南極の氷を減らしますから、どうしたって海岸線は上昇することになるのです。
これだけの変化が起きることがわかっているとしたら、今の10代の若者たちにとって自分の人生で一番大切な20代から40代の時代は、気候変動との戦いだけで終わってしまうかもしれない。その意味で、グレタさんが怒る理由は十分にあるのです。
鈴木貴博(経営戦略コンサルタント)
(『THE21オンライン』2020年07月06日 公開)
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