次々に現実化している豪雨災害と熱波の予測
2020年時点で既に現実となっている一つ目の予測が、豪雨災害です。昨年の台風15号、19号による東日本での被害が大規模かつ長期にわたったことは記憶に新しいと思います。
特に台風19号は、サファ・シンプソン・スケールでカテゴリー5に分類される本土上陸としては初めてのスーパータイフーンでした。規模としては、05年にアメリカのニューオーリンズ市に壊滅的な被害をもたらした、ハリケーンカトリーナと同等の台風です。
従来はこのようなカテゴリー5が日本に上陸するのはもっと先の未来だと予想されていましたが、昨年、これが現実になったわけです。
さらに2010年代を通じて台風以上に大きな被害をもたらしたのが集中豪雨災害です。この集中豪雨も地球の平均気温が増加するにつれ甚大化することが予測されていた現象ですが、実際の被害状況を見るとその被害は台風以上に甚大です。この災害が2020年代以降もずっと続くのです。
そしてこれかの10年間においては、さらに二つ目、三つ目の気候災害が出現すると予測されています。
二つ目の気候災害とは、熱波です。これは日本ではまだそれほど深刻さを感じていない気候現象かもしれません。日本でニュースになるのは、真夏日で最高気温が全国各地で更新される日に、熱中症で病院に搬送される市民が増えるといった程度の被害報告でした。
しかし地球規模でみると熱波の影響は違います。03年にはヨーロッパを大熱波が襲いました。この年、パリが一番多くの熱波の被害者を出し、フランス国内の犠牲者は実に1.5万人にものぼりました。
19年の夏もフランスでは熱波が襲い1500人もの死者を出しています。地球温暖化を止めるためのパリ協定が結ばれた原動力は、パリが一番の被災地になっていたことが少なからず影響があると私は考えています。
この熱波が20年代にはいよいよ東京や大阪など日本の大都市を襲うようになるというシミュレーション予測があります。
私たちが「真夏日や熱帯夜が多い」といった認識でいると、実はそれは日本を初めて襲う記録的な死者数をともなう熱波災害かもしれない。そのような新しい災害が、これから起きることが予測されているのです。
日本が熱帯化して外来種の害虫が越冬!?
豪雨、熱波に続く三つめの災害が、疫病です。疫病というと、今年中国から世界に広まった新型コロナウイルスを想起される方は多いと思います。新型コロナウイルスも経済的な被害は甚大です。
しかし、地球温暖化が進むと、それとは別に、熱帯性の風土病が、温帯に位置する先進国の都市部に上陸するようになります。
最近、日本にアジア南方に住む害虫が上陸したというニュースが頻繁にもたらされるようになりました。セアカゴケグモやヒアリといった、日本には棲息していなかったタイプの虫たちが、貨物にまぎれて上陸するようになってきたのです。
従来は、そのような悪性の外来生物は、冬を越すことができずに絶滅するものでした。それが近年、冬が温かくなってきたことで越冬するように事情が変わってきたのです。
そうなると怖いのは熱帯の蚊の繁殖です。日本では蚊はただの嫌な害虫だと思われがちですが、グローバルな常識でいえば蚊はもっともたくさんの人類の命を奪っている最悪の生物です。その凶悪さではサメもワニもハイイログマも敵わない。蚊が人間の命を奪う武器は細菌です。
14年に東京の代々木公園でデング熱の感染事件が起きました。15年のジカ熱の世界的流行も不気味な事象でした。日本ではまだ流行するという話は聞きませんが、マラリアも怖い病気です。そういった疫病の不安は、20年代を通じて拡大していくと予測されているのです。