本記事は、門賀美央子氏の著書『この先の、稼ぎ方がわからない。50歳から考えるお仕事図鑑』(清流出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ハンドメイド
(画像=tilialucida / stock.adobe.com)

手作り作品が商品

ハンドメイド作家とは、自分でデザインした手芸品や工芸品を制作販売している人たちのことを言います。販売物は、アクセサリーや雑貨、洋服から木工品、ガラス製品など様々です。

かつては、たとえ販売に耐えうるレベルの作品を作れたとしても、販売ルートを開拓するのが大変でした。実店舗を構えるとなるとハードルが高く、いいところバザーやフリーマーケットなどで細々と売るのが関の山です。

しかし、近年はインターネットの普及によるeコマースの発展により、個人が作品を販売するための仮想市場が広く利用されるようになりました。これらを利用するにあたっては特別な資格や開業手続きなどは必要ありません。

現時点ではこれという特技がなくても、興味を持てる手工技術を見つけられさえすれば、ワークショップに参加したり、カルチャーセンターに入学して学んだりすることができます。YouTubeなどの動画サイトを見て独学することも可能です。コツコツと練習して、商品とするに足るレベルに至れば、ハンドメイド作家としてデビューできるかもしれません。

収入は、作品の種類や単価、そして言うまでもなく作家自身のスキルによって大きく変わってきます。多くの場合、月に数万円稼げれば御の字のようですが、人気が出れば本業としても遜色ない程度の収入を得ることができます。

ハンドメイド作家として仕事をするメリットは、やはり自分が作った作品を人に買ってもらう喜びをダイレクトに味わえることでしょう。また、自宅を仕事場にすれば、開業時に発生するコストは材料費ぐらいで抑えることができる、低リスク起業です。後半人生の仕事としては、自分のペースで仕事ができるのも魅力です。

もちろん、難しい面もあります。

まずは商売として軌道に乗せるのがなかなか大変、という点です。

先ほど触れたように、現在はインターネット上に個人がハンドメイド作品を販売する場がたくさんあります。ですので、まずはそうしたサイトに登録し、販売スペースを持つのが現実的です。販売サイトには、登録自体は無料で、販売が発生してはじめて手数料を支払う形を取るものもあります。ですので、初期費用の心配はありませんが、仮想店舗をオープンしたからといって、すぐにお客さんがつくものではありません。自分で集客の工夫をする必要があります。アクセサリーや布製品など、比較的人気が高い分野だと、その分競争も激しくなっています。

また、売れたあとの流通管理や事務作業も発生するので、作るのは得意だけれども管理や事務作業が苦手であれば、誰かに手伝ってもらうなど、なんらかの手を講じる必要はあるでしょう。

かつては“主婦の手慰み”や“年寄りの暇つぶし”扱いだった手芸や日曜大工も、eコマースが端々まで広がったことで立派に商売として成り立つようになりました。

私も最近は小物類やバッグを中心に、ハンドメイド作品販売サイトで探すことが多くなっています。好みにマッチする個性的な商品をリーズナブルに購入することができるからです。

気に入った商品に関してはリピートすることも多いですし、同じ作家さんの作品でトータルコーディネートすることもあります。商品は概ね満足できるレベルで、失敗したと感じたことはほとんどありません。それだけしっかりとプロ意識を持つ人たちがやっているのでしょう。

ハンドメイド作家には、当然ながら創造性と手先の器用さ、そして何よりオリジナリティがいの一番に求められます。

宣伝力を身につけるのも重要

作家として成功するには、高品質な作品を作ることはもちろん、ターゲットとなる顧客を明確にすることやマーケティング戦略も必要です。また、個対個の取引になる分、企業取引以上に顧客を大切にできなければリピーターの確保は難しいでしょう。

またeコマースではW‌E‌B上での宣伝や告知が不可欠です。ということは、写真撮影の技術や、InstagramやTikTokなどのS‌N‌Sツールを使いこなす必要が出てきます。SNSは苦手、などと内にこもっている余地はなさそうです。満足な収入を得るには、根気と向上心を持って、作品作りや販売に取り組まなければならないということなのですね。

しかし、逆に考えれば、企画から販売、アフターサービスまで1人で考え、実現できるのは最高の楽しみでもあります。余計な口を挟んでくる上司も、思うように動いてくれない部下もいないわけですから。ある程度自己完結できるスキルさえあれば、最高にストレスレスな働き方と言えるのかもしれません。販売などの実務に関してもW‌E‌B上でノウハウが公開されているので、それを見れば最低限の知識は学べます。

また、人気が高くなれば講師として人に教えたり、実用書を出版するなど、派生する収入源を持つこともできます。さらに、近頃ではYouTubeなどにノウハウを伝授する動画をアップするハンドメイド作家も増えています。こちらは、よほどの人気にならない限り収入自体はあてになりませんが、自作品の宣伝としては有効です。どんどん挑戦するべきかと思われます。

収入「だけじゃない」魅力

ここまでは「収入を得る」という観点からつらつらと述べてまいりましたが、最後に少し甘酸っぱい本音を申し述べるとすると、物作りの楽しさはやはり自分の手で何かを生み出すこと、それに尽きるのだと思います。

AIの進歩によって、人の力、特に知的生産については、人間にしかできない分野はどんどん狭くなっていっています。しかしながら、AIは設計図やデザイン画は出せたとしても、それを現実世界で形にすることは人間にしかできないことです(今のところ)。

人手不足の時代とはいえ、シニア層の求人は単純労働/肉体労働に偏りがちです。しかし、収入の柱を単純労働にしつつも、クリエイティビティ発揮の場も持っておけば、心のリスク管理につながるのではないでしょうか。

自分の作品が人から求められる喜びは、間違いなく後半人生を彩ってくれるはずです。

こんなタイプにぴったり!
  • ・クリエイティブな仕事が好き。
  • ・手先が器用。
  • ・マーケティングや顧客開拓の知識がある。
こんなタイプはやめておいたほうが……
  • アマチュア気分が抜けない。
  • 納期が守れない。
『この先の、稼ぎ方がわからない。50歳から考えるお仕事図鑑』より引用
門賀美央子(もんが・みおこ)
1971年、大阪府生まれ。フリーランス・ライター、文筆家。著書に『文豪の死に様』(誠文堂新光社)、『死に方がわからない』、『老い方がわからない』(共に双葉社)など多数。好きなものは旅と猫と酒。

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