本記事は、門賀美央子氏の著書『この先の、稼ぎ方がわからない。50歳から考えるお仕事図鑑』(清流出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

飲食店
(画像=rrice / stock.adobe.com)

求人はたくさんあるが……

現在のところ大手チェーン店はパートやアルバイトの求人が多く、年齢制限もないため、高齢者にも比較的就きやすい仕事と言えるでしょう。

ほとんどが最低賃金ギリギリという、低賃金傾向の強い物販や飲食の非正規雇用ですが、近頃は人手不足のあおりを受け、最低賃金にプラス100~200円程度上乗せされた時給も増えてきました。ですので、フルタイムで働いたら月20万ほどは確保できることになります。年金の不足分を補う程度であれば十分な収入ではないでしょうか。

ところで、チェーン店での接客については、未経験者ほど「誰にでもできる」と考える傾向にありますが、まったくそのようなことはありません。確実に適性があります。それも心身両面で。

世の中、店員に対して横柄な人は少なくありません。そういう困った人物を軽くいなせるか、何か言われても馬耳東風できるかがひとつの大きな関門になることでしょう。いちいち傷ついていては到底やっていけません。こういうところだけは中高年の厚かましさ全開でOKなのだと思います。繊細な方にはお勧めしません。

とはいえ、比較的参入しやすい職なのはたしかです。

もし、接客業をやったことがない人がこの分野に挑戦してみようと思うのであれば、初心者の受け入れ態勢が整っている大手飲食系からやってみるのがベストかと思います。

たとえば、大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドでは不定期でクルー体験会というのが開催されています。

これはアルバイトをしたいけれども雰囲気などがわからず不安……という人に向けて、30分程度の時間で開かれるプチ説明会です。日程さえ合えば参加者が1人でも開催してくれます。

説明会では店の責任者がタブレットなどを使っておおよその仕事内容を解説したあと、少しだけ現場に立たせてくれます。

実は私も体験してみました。

説明は丁寧でわかりやすく、調理体験では些細なことでも褒めちぎるという具合で、非常に今どきの教育姿勢であるとの印象を受けました。体験会はもちろんリクルーティングの一貫ではあるけれども、働きに来る人もまた一顧客であることを会社全体が理解していることの表れでしょう。作ったハンバーガーは体験終了後に食べさせてくれました。たいへん美味しゅうございました。

その後、すぐに入社を迫られることもなく、後追いの電話連絡などもない、たいへん気楽な内容でした。あれこれ不安に思うタイプの方ほど、一度説明会を体験してみるといいかもしれません。

第一関門は脚力

さて、中高年が小売や飲食の仕事をするにあたって、最初の関門になるのはなんでしょう。

物覚え? スマイル? いいえ、違います。

ずばり、脚力です。

大手チェーン店での仕事はほとんどが立ち仕事です。ずっと立ちっぱなしというのは、慣れていないと相当足に負担がかかります。おそらく、今まで一度もやったことがなければ、初日は3時間もすれば足の裏がかなり痛くなってくることでしょう。

もちろんやっていくうちに慣れはしますが、最初のうちは音を上げてしまうかもしれません。また、数日出勤が重なれば驚くほど手足がむくんだりもします。

ウォーキングやスポーツをしているから大丈夫だわ、と自信がある方もいらっしゃるでしょうが、遊びと仕事では使う筋肉がまったく違います。最初のうちは湿布など用意しておいて、それなりの覚悟で挑んだほうがよいでしょう。

レジや注文の無人化で変わる光景

大手チェーン店では、現在急速に注文や会計の無人化が進んでいます。また、料理の配膳もロボット任せにする店が出てきました。こちらはまだエンターテインメントの域を出ていないですが、客側が慣れたら配膳ロボットの本格導入が始まるかもしれません。それはつまり、求人が少なくなっていくことを意味します。

もちろん、100%無人になることは当面ないでしょう。ロボットはまだまだ人間の管理なしでは稼働できないし、注文や会計をすべてセルフでこなせないお客さんも多いからです。

しかし将来的に単純作業や登録作業のセルフ化が進めば、人間には問題解決能力だけが求められることになります。その場合、むしろシニアのほうが有利になるかもしれません。トラブル解決や少し複雑な要求に適宜対応する能力は、総じて中高年のほうが高いからです。つまり、意外と最後まで中高年に開かれた職場として残る可能性があるわけです。

コンビニは熟練工の活躍の場に?

一方コンビニエンスストアでは、最近少しおもしろい流れができています。店員のフリーランス化です。

今、日雇いアルバイトのマッチングサイトなどを見ると、特定のコンビニで働いたことのあるスタッフをスポット雇用したいという求人が山のようにあります。

人手不足の昨今、店舗を回すのにどうしても人が足りないケースがある。そんな場合、経験者に来てもらえたら一番であるわけですが、身近な人脈だけだとなかなかそううまくタイミングが合いません。しかし、マッチングサイトの増加によって、教育不要人員を必要な時だけ臨時雇いできるようになったのです。

これは雇用の安定という意味ではあまりよろしくない傾向ですが、個人が自由に働く時間を選択できるという意味では「自由な働き方」だと言えるでしょう。

少しだけ稼ぎたいリタイア層の場合、まずレギュラーアルバイトとして店に入り、経験を積んで「コンビニ熟練工」となったあとは、こうした仕組みを使って自由時間と稼ぐ時間のバランスを取る方法もあるのです。

こんなタイプにぴったり!
  • 心身ともにタフ。
  • 最低限の愛想はある。
  • 人間観察が好き。
こんなタイプはやめておいたほうが……
  • 何か言われたらすぐに凹む。
  • 人の好き嫌いが激しい。
  • 忙しい時間と暇な時間の落差が苦手。
『この先の、稼ぎ方がわからない。50歳から考えるお仕事図鑑』より引用
門賀美央子(もんが・みおこ)
1971年、大阪府生まれ。フリーランス・ライター、文筆家。著書に『文豪の死に様』(誠文堂新光社)、『死に方がわからない』、『老い方がわからない』(共に双葉社)など多数。好きなものは旅と猫と酒。

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