人との接触が減ると判断が偏りやすくなる
――特に人との接触が減った「自粛」期間中は、右脳が働きにくい環境になっているので、注意が必要だ。
「一人で過ごす時間が増え、ネットやSNSの文字情報ばかり追っていると、どうしても左脳が働きやすくなります。
一方、人と対面で話していれば、相手から感覚を受け取れるので、右脳が働きやすくなります。人間の脳内にはミラーニューロンという神経細胞があり、他人を見ると自動的に相手の脳の状態を真似ることが証明されています。
また、多くの人に会っていれば、情報に対する世の中の判断の平均値を取れます。
例えば5人の話を聞けば、ある情報を信じている人が2人、信じていない人が2人、中立的な人が1人といったように、考え方が分かれているのが普通です。
そして、ミラーニューロンの働きによって、無意識のうちにお互いの脳がコミュニケーションを取るので、情報を信じている人の脳にも、信じていない人や中立的な人の感覚が移ってくる。だから、多くの人と会話をするうちに、最終的にバランスの取れた判断に落ち着きます。
ところが人との会話が減ると、この作業を自分一人でやらなくてはいけない。バランス感覚が働かなくなり、判断が偏りやすくなります。だから、ある情報を100%信じたり、逆に全否定したりしてしまうわけです」
――外出自粛要請が解除されても、当面は人との接触を減らし、「新しい生活様式」の実践が求められている。右脳が働きにくい状況が続く限り、私たちがデマや噂に振り回されやすい心理状態を克服することはできないのだろうか。
「そんなことはありません。デマや噂に振り回されないための方法は、とても簡単です。
それは、『全部嘘』と思うこと。
テレビのニュースを聞いても、『全部嘘』。ネットやSNSの情報を見ても、『全部嘘』。まずは嘘から入ればいいのです。
これにより、左脳の論理的な働きをいったんオフにできます。すると右脳の感覚が働き出し、空間認識能力を適切に使えるようになる。そうすれば、一人でいても、自然と判断のバランスが取れるようになります。
すべてを疑っていたら大事な情報まで見逃してしまうのではないか、と心配になるかもしれません。でも右脳の感覚を取り戻せば、嘘をどんどん排除して行った先に、自分が本当に信じられる情報だけが残るので大丈夫。嘘の中から本当のことを取捨選択できるようになります。
だから皆さんには、『本当かよ!?』を魔法の言葉として使ってほしいですね。どんな情報に接しても、まずは『本当かよ!?』と口に出してみる。すると左脳のスイッチがいったん切れて、疑うことから始められます」
右脳が感じている「快・不快」に従おう
――余計な不安やストレスを溜めないためにも、右脳の働きを使うことが大事だという。
「自分が不快だと思うことはやらない。これが不安やストレスを溜めない一番の方法です。右脳は常に快/不快を判断しているので、その感覚に素直に従えばいい。
『人が多い場所に行くと新型コロナウイルスに感染しそうでイヤだな』と感じたら、その日は家で過ごせばいい。『1日中家に閉じこもっているのはつらい』と感じたら、3密を避けながら散歩でもすればいいのです」
――とはいえ、不快なことをやらざるを得ないこともあるだろう。
「『本当は外に出たくないのに、会社がテレワークを導入してくれないので出社している』といった人もいるでしょうね。でも、その不快は、本当に自分のものでしょうか。
もしかしたら、同僚が『テレワークを許可しないなんて、うちの会社はひどいよね』と話しているのを聞いて、自分もそうだと思わされているだけかもしれません。
ですからこの場合も、自分の不快をいったん疑ってみてください。
すると右脳が働き出して、『皆がテレワークをする中、頑張って会社に行く自分』をちょっと楽しんでいることに気づくかもしれない。
どんな状況下でも、不快ではない、快の感覚がどこかに必ずあるもの。その快を感じ取れば、不安やストレスが消えます。心穏やかに過ごすためにも、ぜひ意識的に右脳を働かせてください」
大嶋信頼(心理カウンセラー)
(『THE21オンライン』2020年07月13日 公開)
【関連記事THE21オンラインより】
・「ずるい人」を寄せつけない方法
・嫌いな相手を「すごい」と言えば怒りが消えていく
・ずるい人から“騙されない”ための「青木雄二氏の知恵」