「新型コロナで不安」という人は、コロナ禍以前から不安だった人。これまでは逃げていただけだ――。「性格リフォームの匠」である心理カウンセラー・心屋仁之助氏はそう話す。

拭いきれない不安が世界をも覆うなか、不安な感情にさいなまれがちな「不安持ち」の人はどう自分と向き合うべきなのか? 心がラクになるヒントを心屋氏が伝える。

(取材・構成 林加愛)

※本稿は『THE21』2020年7月号より一部抜粋・編集したものです。

心の中にいる小さい子供と向き合おう

不安,心屋仁之助
(画像=THE21オンライン)

――不安に駆られているなら、この際、とことん不安になってみよう、と心屋氏は勧める。

「不安は、『本当の自分を生きていない』という違和感に他なりません。それを、コロナ禍が起こるまでは『頑張る』ことで紛らわせて、ひたすら逃げてきたのです。

しかし、不安は犬と同じ。逃げれば逃げるほど追いかけてきて、決して振り切れるものではありません。

ならば、グルリと振り向いて、犬と対峙するのがいい。その違和感がいつから始まっているかを突き止めるのです。

『親の価値観に囚われすぎているのかも』『学校で恥をかいたことで臆病になっているのかも』『いじめられた経験で自分を無力だと思いすぎているのかも』……というように、自分の過去と向き合ってみましょう」

――そうした古傷について考え出すと、どこまでも気持ちが後ろ向きになってしまわないだろうか。

「なっても構いません。根こそぎ思い出して、『つらかったね』『悔しかったね』『怖かったね』『バカだったね』『情けなかったね』……と泣けばいい。

それを今までやってこなかったから、ここまで引きずっているのです。大丈夫。徹底的にやれば、いつかきっと飽きますから(笑)」

――時折思い出してはイヤな気分になってサッと払いのける、といった程度では「徹底的」とは言えない。

「昔のイヤな思い出が前触れもなくフッとよみがえる現象は、昔の自分が話しかけてきているということです。『放っておかないで』『一緒に泣いて』と小さい子供が訴えているのです。なのに目を背けるなんて、可哀想ではありませんか?」

過去を責めていると未来も冴えない

――思わず目を背けてしまうのは、過去の自分をまだ責めているからだと、心屋氏は指摘する。

「これも不安な人によく見られる傾向です。責めてしまうのは、今に満足していないからです。『昔こうだったから、今、こんなに冴えないのだ』と。

その考えに従うと、今が冴えないなら未来も冴えない、ということになってしまいます。過去を許せない人は、未来を良くすることもできないのです」

――必要なのは、過去を過去として終わらせることだ。

「心の中の小さい子供と一緒に泣いてあげることは、自分が昔は無力だったこと、情けなかったことを認めるということです。心底、認めれば、子供が訴えかけてくることはなくなります。

そのうえで、過去の自分と現在の自分は違う人間である、と切り分けることが大事です」

――しかし、違う人間だとは、にわかには信じがたい。成長したとはいえ、同じ身体を持ち、記憶もあるのに、切り分けることなど可能なのだろうか。

「子供の頃、大人の食べるものが嫌いではありませんでしたか? 牡蠣、もずく酢、ブラックコーヒーなどなど。これらはたいてい、大人になると好きになるでしょう?子供の頃の自分を切り分けることなんてできないと言い張る人は『今も牡蠣が嫌いだ』と思って生きているのと同じです。

もちろん、子供の頃と変わっていないところもあるでしょう。それは、壁についたシミのようなものです。カッコ悪いからと、上から何か塗って隠そうとしても、シミ自体が消えるわけではありません。

ならば、シミがあるままの自分を認めましょう。過去の自分も今の自分も責めることなく、ありのままに受け取ること。これができて初めて、過去をズルズルと引きずることなく、次に行けます。過去・現在・未来の『3枚おろし』に、ぜひ挑戦してみましょう」