東西冷戦時代のシェルターといえば、いずれかの国が核ミサイルのボタンを押す事態に至った際に避難するための場所というイメージが強かった。ベルリンの壁崩壊後はにわかに注目度が薄れていったが、北朝鮮のミサイル発射など、地政学的リスクが高まるたびに一部の人たちが自分のシェルターを建設する動きが活発化している。

そして、足元でも海外の富裕層の間で、シェルターへの関心が高まっているという。今回は戦争やテロなどではなく、新型コロナウイルスの世界的パンデミック (大流行) がきっかけであるようだ。

コロナ禍を逃れ、米国の富裕層が密かにNZのシェルターへ

富裕層が注目する「シェルター」はいくらで購入できる ?
(画像=MoiraM / stock.adobe.com)

ブルームバーグの報道によれば、企業経営者などといった富裕層の間で、新型コロナ禍の米国を離れてニュージーランドにあらかじめ築いていたシェルターに避難するという動きが密かに活発化しているという。かねてからニュージーランドは、地球が危機的状況に陥った場合の避難先として、米国の富裕層から目をつけられてきたようだ。

奇しくも同国は新型コロナの感染拡大防止にも成功しており、米国の富裕層はまさに先見の明があったと言えるかもしれない。ブルームバーグによれば、シェルター建設を手掛ける米国企業のライジングS社はニュージーランドで約10棟の施行実績があり、1棟当たりの費用は300万ドル (約3億2,600万円) だが、豪華バスルームをはじめとするオプションの設備を加えていけば800万ドル (約8億7,000万円) に及ぶケースもあるという。

また、米国内においても中西部などの過疎地に築かれたシェルター的な施設の引き合いが増えているそうだ。朝日新聞の報道によれば、中西部カンザス州にある「サバイバル・コンドー (コンドミニアムの略) 」は150万~500万ドル (約1億6,300万~5億4,400万円) 程度の分譲価格だが、新型コロナの感染者が急増してから問い合わせが相次いでいるという。

日本国内でも生産しているシェルター、専門業者も

そもそもシェルターとは、いわゆる「避難場所」である。ミサイルなどによる物理的攻撃や放射能、毒ガス (細菌兵器) 、さらに地震や津波といった自然災害から身を守るため、地下などに建設されるものだ。

堅牢な造りになっているだけでなく、強力な空気の濾過装置も取り付けられており、安全かつ快適に過ごせる環境が整えられている。当然ながら、飛沫感染の新型コロナウイルスはおろか、空気感染の麻疹や水痘さえ内部にはまず侵入できないだろう。

地上に建設されるタイプもあるが、それらは放射能や毒ガス (細菌兵器) からの被害を防ぐことにフォーカスしている。運悪く爆心地に近かった場合は爆風に耐えられない可能性もあるが、そうでなければ有害物質をほぼ完璧にシャットアウトできるので安全だという。 ここまで海外の事例を紹介してきたが、実は日本でもシェルターを購入でき、実際に所有している人も存在するようだ。たとえば、大阪府の株式会社シェルターはイスラエル製、米国製、スイス製、ドイツ製の製品を50年以上も前から取り扱ってきたという。

また、土木・建築工事、インフラ保全を手掛ける静岡県の株式会社アースシフトが販売しているのが、完全防水耐震地下シェルター「SOTOCHIKA」だ。こちらは自然災害から身を守ることに主眼が置かれており、基本価格は274万5,000円~ (税別) となっている。

さらに、防災シェルターや核シェルターの設計施工・建築・土木・建設コンサルタントを専門に展開しているのが兵庫県の織部精機製作所だ。同社のウェブサイトによれば、広島級の核爆弾が660メートルの至近距離に着弾した場合でも内部の安全性が保たれるという。

このようにシェルターには関心が高まっており、感染症や戦争、テロなどの危機に向けた対策の一つとして、日本でも一般的になる日が来るかもしれない。

(提供:大和ネクスト銀行


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