要旨
- 欧州各国は3月以降、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に見舞われたことから、ロックダウン(都市封鎖)などの厳しい封じ込め政策の実施を余儀なくされ、欧州経済は急減速した。
- 4-6月期のユーロ圏GDPは前期比▲11.8%と低下した。大国ではスペイン(▲18.5%)、フランス(▲13.8%)、イタリア(▲12.8%)の落ち込みが特に深刻であった。
- 消費活動や生産活動は4月を底に回復を続けているが、対面サービス産業の回復力は弱く、また世界的な需要の減速などから生産もコロナ禍前の水準までは戻っていない。
- 一方、7月のEU首脳会議(欧州理事会)では中長期の経済支援策として復興基金(「次世代EU」、7500億ユーロ)が合意された。EU一体で危機を乗り切る姿勢が示され、各国の財政出動余地も広がったと言える。
- 足もとの欧州では感染拡大第2波の懸念が高まっている。現在のところ医療崩壊リスクは限定的であることから、ロックダウンや外出制限のような経済活動への影響の大きい封じ込め政策は行われず、経済活動維持と感染拡大防止の両立が図られている。
- 今後も感染拡大防止策・予防策は引き続き講じられるが、厳しい行動制限は避けられ、経済活動は大きく改善すると予想する。ただし、業種・地域を限定した行動制限や、ソーシャルディスタンス確保といった感染予防策は取られることから、7-9月期の成長率は大幅に反発するものの、コロナ禍前より水準は低く、その後の回復力も弱いだろう。
- ユーロ圏成長率は2020年▲8.2%、21年5.1%と予想する(図表1・2)。
- 先行きの不確実性は依然として高く、感染再拡大に伴い医療崩壊リスクが高まれば封じ込め政策の再強化が求められるなど、ダウンサイドリスクも引き続き大きい。