(本記事は、井上 達也氏の著書『起業を考えたら必ず読む本』の中から一部を抜粋・編集しています)

今までの仕事の延長線で考える

起業を考えたら必ず読む本
(画像=jenkoataman/stock.adobe.com)

たまに脱サラして、「これは儲かりそうだ」と、今までとは全然関係ない商売をはじめようとする人がいます。残念ですが、成功する可能性は低いでしょう。

業界で長年、さまざまな経験を積み、たくさんの人脈を持っている人でさえ失敗するのが、会社経営です。

ましてや、経験がない素人同然の人が起業してうまくいくというのは、非常に稀なことと言えます。まったく畑違いの仕事に手を出し、借金まみれになり、行方不明になった友人もいます。

だから、最初は、まず自分が働いている会社に関連する仕事で、起業することをお勧めします。前述した通り、できるだけ小さなお金で、できることを考えるとなお、いいでしょう。

とはいえ、あなたが勤めていた会社の取引先が大手企業ばかりの場合、それもなかなか難しいかもしれません。おわかりのように大手企業というのは、実績がない小さな会社を相手にしないからです。

もし、時間的な余裕があれば、自分がやりたい仕事の延長線上の会社に、一度転職してから起業する、というのもひとつの手です。

はやる気持ちはわかりますが、お客様が具体的に見えてくるまでは、起業せずにじっくり待つことも重要なのです。

起業する前にあなたがやるサービスや販売する商品を買ってくれるお客様がすでにいる、つまり見込み客がいる状態ならば、素早くスタートダッシュを切ることができます。後述しますが、起業はスピードの戦いです。

今の仕事の延長線上ならば仕事のノウハウもありますし、現在の仕事をしながら見込み客を増やしていくことができるでしょう。

やりたいことがお金になるとは限らない

これをやりたいから、こんな仕事がしたいから起業するという人がいます。それは悪いことではありません。自分が好きなことなら、時間も忘れてとことん仕事に打ち込むことができるでしょう。

ここで、頭に入れておいてほしいのは、やりたいことがお金になるとは限らないということです。

もちろん、「全然儲からなくていい、私はこの仕事がしたいんだ」という人もいます。そういう人は何をしてもらってもかまいません。

「料理が好きだから飲食店をはじめる」「釣りが好きだから釣具店をはじめる」などと、はじめることは誰でもできますし、人間の幸せとはお金だけとは限らないからです。

しかし、もしこの時、「少しでもお金を儲けたい、生活費ぐらいは稼ぎたい」と考えるならば、お金になる仕事かどうかをまず考えるべきです。

つまり、それが儲かるかどうか、お客様がお金を払ってくれるかどうかは、まったく別の話なのです。

忘れがちですが、事業とは、お金を払ってくれる人がいるかどうか、どこの誰に売れるのかが、重要なのです。

とはいえ、稼げる事業かどうかの判断は、やさしいものではありません。

「こういうことに困っている人がいるはずだ、需要があるはずだ」

このように考えて起業しても、困ってはいるけれどお金を払うほどのことでもないと思われたり、ほしいけれど値段が高すぎるということもあるでしょう。

そこで、大きく外さないためにも、実際にあなたが「これは知り合いの○○さんなら、必ずお金を払ってくれるはずだ」と具体的な名前を言えるものでないと、事業としては成り立たないと考えるべきです。

たとえ、あなたがやりたい仕事がいかに素晴らしい事業で社会貢献にもなるようなものでも、誰もお金を払ってくれないのでは、スグに行き詰まってしまいます。もし自分のやりたいことがお金にならない、儲けにくいならば、違う商売を考えたほうがいいでしょう。

起業を考えたら必ず読む本
井上 達也
1961年生まれ。法政大学経営学部卒。
株式会社日本デジタル研究所(JDL)を経て1991年に株式会社セイショウシステムテクノロジー(現、フリーウェイジャパン)を設立。
同社は、クラウド業務系システムを開発・提供しており、そのユーザー数は11万を超える。
ベンチャーキャピタルからの出資なしで事業を拡大できたのは、著者の斬新な戦略発想に依るところが大きい。
その力を頼って、上場企業を含めた様々な業界の経営者から相談されることも多く、積極的に他社を支援している。
無類のお酒好きで、Facebookなどを通じて読者と交流するなど、多様な面を持ち合わせている。

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