(本記事は、藤原正明氏の著書『収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

賃貸需要が見込めないエリアの土地活用戦略

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(画像=terng99 / Shutterstock.com)

賃貸需要が中長期的に厳しい地方を中心に、無理に建築しないほうがよいエリアも少なくありません。そうした場合、収益性と相続税対策を両立させた賃貸経営はできないのでしょうか。実は、自身の土地に賃貸物件を建てるのと同様の効果を得る方法があります。それは賃貸需要が見込まれる都市部の収益物件を購入するという選択です。

自身の土地以外の場所で、賃貸経営をするというこの方法を取る場合、鍵となるのが資金調達です。潤沢な現金をお持ちの場合は別ですが、現金にそこまでの余裕がない土地オーナーとしては、基本的に2つの道筋があります。

1つはお持ちの土地を担保にして、金融機関から融資を受けるという道です。たとえば賃貸需要が厳しい地方に土地を持っている場合でも、その土地を担保にすることで、土地を持たない不動産投資家に比べて有利な条件での融資を受けられる可能性があります。

物件の購入時には購入諸費用がかかるため、多少の現金が必要となりますが、金融機関からの担保評価が高かったり、ある程度の現金をお持ちであれば、より有利な融資を受けられ、投下する自己資金を抑えられます。

この道を選ぶ最大のメリットは、愛着ある土地を手放す必要がないことです。

流れとしては右の図表48のようになります。

5-1
(画像=『収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則』より)

もう1つの道は、その土地を売却、現金化して、賃貸需要が見込まれる都市部の収益物件を購入するというものです。そうすることで資産が組み変わり、かつ相続税対策、そしてキャッシュフローを得ることができます。

この道筋のデメリットは、土地を売却することです。先祖より受け継いできた土地を手放すことに抵抗のある土地オーナーは使えません。

メリットは資産組み換えにより地方の土地が都市部の収益不動産になるため、長期的なキャッシュフローをもたらし資産性が維持されやすいことにあります。加えて、自身の土地に建築することと同様に相続税評価も圧縮可能です。

流れとしては次のようになります。

5-2
(画像=『収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則』より)

次に、賃貸需要が見込めないエリアに土地をお持ちの場合の土地活用ケーススタディを検討してみましょう。

賃貸需要が見込めないエリアの土地活用ケーススタディ

後述するような賃貸需要が長期的に厳しい立地の土地をお持ちの場合は、無理に建築をするのではなく、その土地を担保として活用し、賃貸需要があるエリアの収益不動産を購入することで、相続税対策および安定収益源の確保ができます。

なお、所有する土地はそのままのため、賃貸住宅以外の用途として、資材置き場や青空駐車場といった別の土地活用によって、第2の収益を得るということも可能になります。

土地概要

対象地    奈良県某市
土地①    500㎡(建蔽率60%、容積率200%)
       第一種住居地域(借地権割合60%)
相続税評価額 1,500万円(路線価3万円/㎡)

土地②    400㎡(建ぺい率60%、容積率200%)
       第一種住居地域(借地権割合60%)
相続税評価額 1,400万円(路線価3.5万円/㎡)

そのほか複数の土地を保有しており、土地全体の相続税評価額は1億円

土地診断

複数個所に土地を所有し、合計で1億円という相続税評価はあるものの、立地としては長期的な賃貸経営が厳しい状態でした。代々受け継いでこられた土地であることから、売却する選択肢はないとのことだったため、本土地はそのままの状態にし、別途都市部の収益不動産を購入するのがよいと考えられます。

購入プラン

エリア 大阪市内 
ファミリーマンション
築20年
RC造 4階建

購入費用

物件価格   1億5,000万円(税込)
購入諸費用  600万円
総投資額   1億5,600万円
相続税評価額 8,000万円
 ※土地・建物の合計。貸家建付地・貸家の評価減適用済

家賃収入等

年間家賃収入  1,200万円(表面利回り8.0%)
空室損・滞納損 50万円
運営費     250万円
NOI      900万円(FCR5.77%)

融資条件

借入金額  1億5,600万円
金利    1.0%
期間    27年
年間返済額 659万円

融資に際しては、上記所有の土地を共同担保として活用することで、物件価格に加え諸費用までを融資で受けることができました。結果として、自己資金ゼロを実現しています。

1年目の税引前CF
=NOI 900万円−年間返済額659万円
=241万円

相続税評価額はどのようになったのでしょうか。

土地活用前

所有土地=1億円

**土地活用(収益不動産購入)後v

所有土地 =1億円
収益不動産 =8,000万円
借入金 =1億5,600万円

合計=所有土地1億円+収益不動産8,000万円
   −借入金1億5,600万円
   =2,400万円

収益不動産購入前と比較すると、7,600万円(1億円-2,400万円)の相続税評価を圧縮できました。

収益性と相続税対策を両立する土地活用の成功法則
藤原正明(ふじわら・まさあき)
大和財託株式会社 代表取締役CEO。1980年生まれ、岩手県出身。三井不動産レジデンシャル株式会社を経て、ベンチャー企業で実務経験を積む。2013年に大和財託株式会社を設立。東京・大阪で収益不動産を活用した資産運用コンサルティング事業を展開。全国の投資家や土地オーナーの悩みを解決し、絶大な支持を得ている。著書に『はじめての不動産投資 成功の法則』、『中小企業経営者こそ収益不動産に投資しなさい』など。

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