働き方改革の推進に加え、コロナ禍によって、テレワーク(リモートワーク)を取り入れる企業が急速に増えている。しかし、出勤しての仕事とは色々と異なるため、仕事の進め方や相手への気遣いの仕方に関して戸惑う声も。

そこでテレワーク時代の新しいビジネス作法について、「品格」「モチベーション」「スキル」をベースとする三位一体教育の第一人者である古谷治子氏にアドバイスをいただく(取材・構成 塚田有香)。

※本稿は『THE21』2020年9月号より一部抜粋・編集したものです。

対応をルール化し組織全体で取り組む

オンラインミーティング,ビジネスマナー
(画像=THE21オンライン)

テレワーク時代には、それぞれの社員が在宅でお客様からのクレームに対応する場面も増えます。周囲に上司や同僚がいないため、つい自分一人で対処しようとしがちですが、それが失敗を招く原因になります。

クレームは、個人対応ではなく組織対応が原則です。会社として、チームとして、組織全体で責任を持って取り組んでいる姿勢を示すには、クレームを受けたときの対応をルールとして明確に決めることが重要です。

「臨機応変に対応しろ」と言われても、経験の浅い新人や若手はどうしていいかわからず、場合によってはさらにお客様を怒らせてしまい、二次クレームのリスクが高まります。

ルールを作る際は、「曖昧な回答をしない」「迅速で丁寧な処理をする」の2点を誰もが実践できるよう、対応の手順やトークを具体的に決めましょう。

お客様の話を聞いて自分だけでは回答できないと判断したら、「いったん電話を切って、上司にバトンタッチする」をルールとします。ただし、「クレームから逃げている」という印象を与えないために、電話を切る前に「自分の名前」「折り返し電話する上司の名前」「回答の期限」を伝えることもルール化し、全員で共有してください。

「私は山田と申します。お急ぎのところ大変恐れ入りますが、本日15時までに上司の古谷から回答のご連絡をさせていただけませんでしょうか」

 こうして名乗ることで責任の所在を明らかにし、いつまでに回答するのかを伝えれば、お客様に冷静にお待ちいただくよう促すことができます。

このとき、「なるべく早くご連絡します」といった曖昧な表現を使うのはNG。時間の感覚は人によって異なるので、「30分経っても連絡がないじゃないか」などと、さらなる相手の怒りを招くことになります。

メールでのクレームは電話に切り替える手も

ホームページの問い合わせフォームなどから、メールでクレームを受けることもあるでしょう。文字のみで伝わる情報には限りがあるため、一度の返信では相手が納得しない場合も。

よって、クレームの内容が込み入っていたり、詳細な説明が必要な場合は、電話での対応に切り替えるべきです。

「この件につきまして、口頭で説明させていただけませんでしょうか」と返信したうえで、相手に電話で連絡を取ります。

相手の電話番号がわからない場合は、返信のメールにこちらの電話番号を記載し、「10時から17時の間に電話をおかけくだされば、私が対応いたしますので、お手数ですがご連絡いただいてもよろしいでしょうか」と相手に了承を求めましょう。

クレーム対応を長引かせず、早く解決するコツは、「人を変える」「時間を変える」「場所を変える」の"3変処理"です。

対応する人を部下から上司に変えたり、電話をいったん切って時間を空けたりする方法に加えて、「メールから電話へ」「電話から訪問へ」とお客様との接点(場所)を変えるのも非常に効果的です。

「メールではこじれる一方だったのに、電話で一度話したらすぐ解決した」といったことはよくあるからです。

テレワークで個別の作業が増えるからこそ、チームのリーダーである管理職がクレーム対応のルールを決めて、徹底した組織対応を心がけてください。

古谷治子(マネジメントサポートグループ代表)
(『THE21オンライン』2020年08月07日 公開)

【関連記事THE21オンラインより】
クレームを「処理」しようとする会社は、沈む
「テレワークでは部下がサボる」と心配する上司が知らない"リモートの劇的効果”
ビジネスパーソンが「チャットツールは苦手」では済まされない理由