2020年4月27日から「東証インフラファンド指数」の算出が始まった。「インフラファンド」は、年金資金の分散投資のアセットとして魅力があるだけでなく、再生可能エネルギーへのESG投資として市場からも注目されている。東証REIT指数のように今後市場規模が急拡大するとの期待は大きい。今回は、インフラファンドについて解説する。
インフラファンドとは ?
インフラファンドとは、発電所、空港、道路、鉄道、学校などの社会基盤 (インフラストラクチャー) に投資し、そのインフラから得られる収益を分配金として配当するファンドのことである。長期に渡って収益が見通せる資産の裏づけがあり、資産が生む収益を分配金として配当するため、REIT (不動産投資信託) に似た仕組みといえる。
●インフラファンド市場の考案
アベノミクスでの日本の成長戦略の一つとして、インフラファンドの上場市場である「インフラファンド市場」が発案された。これは、インフラ投資に民間資金を呼び込む狙いがあり、財務省と金融庁はインフラファンドが魅力的な分配金を維持できるよう、インフラファンドの利益に対する法人税の非課税期間を10年から20年に延長するなど、投信法および税制などの整備を進めた。
2015年4月、ついに東証にインフラファンド市場が創設された。日本での上場第1号となるのは2016年6月の「タカラレーベン・インフラ投資法人 (9281) 」で太陽光発電設備に投資するファンドだった。現在、東証上場のファンドは7銘柄まで増えている。
●東証インフラファンド指数の算出開始
「東証インフラファンド指数」は、東証に上場する全インフラファンドを浮動株ベースで加重平均して算出する指数のことである。2020年3月27日を基準の1,000として4月27日から公表が始まった。現在東証に上場しているインフラファンドは以下の7銘柄であり、算出開始時 (2020年4月27日時点) の各ファンドのウエイトは (表1) のようになっている。
(表1)
※2020年4月27日時点
インフラ市場では、様々なインフラに投資するファンドを想定しているが、現在上場している7銘柄はすべて、「再生可能エネルギー発電設備」を保有している。太陽光などの再生可能エネルギーに対しては、固定価格買取制度があるため安定的な収益と好分配のファンドが組成できるためだろう。7銘柄の予想配当金利回りは (表1) のように6%台のものが多く、利回りとしては十分に魅力的といえる。
インフラファンドの認知度が高まる可能性がある
日本の債券は日銀のマイナス金利政策で低金利が続き、コロナショックなどの影響で世界的に見ても債券は低金利にある。運用で高利回りを求めるのは難しい環境と言わざるをえない。こうした環境下で年金などの長期資金を運用する機関投資家は、株式や債券といった伝統的資産以外のアセットで不動産やヘッジファンドなど景気の変動の影響を受けにくい資産であるオルタナティブ投資のウエイトを高めている。インフラファンドもこうしたオルタナティブ資産のひとつである。
さらに、インフラファンドは「再生可能エネルギー発電設備」に投資するファンドであることからESG投資の側面でも注目されている。特に年金運用においてはESGが重要な要件であるだけに、インフラファンドに対する期待は大きい。
日本の公的年金を運用しているGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) は2020年4月27日、国内外の機関投資家に日本および新興国のインフラファンドに関する情報提供を求める通達を出した。今回の情報提供についてGPIFは、「投資判断を行うものではない」とはしているが、指数の開始とGPIFの調査開始はインフラファンドへの認知度を一気に高める可能性がある。
日本のインフラファンド市場はまだ7銘柄で時価総額は910億円しかなく (表1) 、流動性も低い。指数ができたことで、今後はETFが組成される可能性もあり、市場が拡大し売り買いが容易になるとの期待は大きいだろう。J-REIT市場は2020年4月末時点で、上場銘柄数は63銘柄、時価総額は12兆円まで拡大し、高い分配金利回りのオルタナティブ資産となった。そして、機関投資家だけでなく個人投資家にも人気がある市場へと成長した。インフラファンドもそれに続く可能性は高いだろう。今後に期待だ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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