20~30年間伸びている企業の参入障壁を考えよう
何があっても、その企業から買うということは、言い換えれば、他社が参入できないということ。つまり、参入障壁が高いということです。
参入障壁には様々な形があります。
例えば、ブランド。コカ・コーラは過去からの広告宣伝投資の蓄積と世界中にディストリビューションルートを持っていることで、世界のほとんどの国で炭酸飲料と言えばコカ・コーラかペプシコーラしかないと言っても過言ではない状況を築いています。つまり、今さらコカ・コーラの向こうを張って炭酸飲料市場に参入しようとすれば、巨額の投資が必要になるということです。日本では日本メーカーの炭酸飲料もたくさん売られていますが、世界でコカ・コーラと伍して戦うことは難しいでしょう。ですから、コカ・コーラは長期にわたって利益を出し続けると考えられます。
他には、規模の経済が働いていること。信越化学工業は、半導体基盤の素材になるシリコンウエハーで世界シェア33%を持ってます。シリコンウエハー自体はある意味単純な財なのですが、規模の経済が働くことによって、高い参入障壁ができています。しかも、半導体は今や電子機器だけでなく、自動車や産業機械など、あらゆるものに使われますから、需要がどんどん増えています。半導体自体は技術革新のスピードが速く、今使われているものが来年は全然別のものになっているということが普通に起こりますが、その素材が別のものに取って代わられる状況は想定されません。陳腐化しない需要も、参入障壁になります。
歯磨き粉で世界シェアの4割以上を占めているコルゲートも、ブランドと規模の経済という参入障壁を築いています。
チャートを見て購入する株を検討する人も多いですが、見るべきは20~30年間のチャート。そこで株価が上がっている企業を見つけたら、なぜ上がっているのか、参入障壁は高いかを考えてください。この10年間は世界経済全体が順調に伸びていたので、10年間のチャートを見て伸びていても、あまり参考になりません。
会社員の方であれば、参入障壁を考える習慣を身につけると、自分の仕事にも役立つと思います。たとえ自分の手が届く範囲の狭い領域の話であっても、いかに参入障壁を高めるかを考え、実践することができれば、自分が働いている会社が利益を出し続けることに貢献できるはずですから
奥野一成(NVIC常務兼CIO)
(『THE21オンライン』2020年08月11日 公開)
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