コロナ禍によって世界中で経済活動が停滞。その影響で不景気が長く続くと言われているが、それでは、株式投資に対する考え方は変えるべきなのか? 長期厳選投資のアクティブファンドである「おおぶね」ファンドシリーズを展開するNVIC(農林中金バリューインベストメンツ〔株〕)で常務取締役兼CIO(最高投資責任者)を務める奥野一成氏に話を聞いた。
世界経済の成長スピードが落ちても問題のない投資法とは
コロナ禍は、幅広い業種の、数多くの企業に悪影響をおよぼしています。今のところ(7月7日に取材)、株価は下がっていませんが、「いつ暴落するのか?」と気が気でない人もいるでしょう。また、新型コロナウイルスの流行が収束しても長く不景気が続くのではないかと、気がかりな人もいると思います。
私も、コロナ禍の影響で、世界経済の成長スピードは落ちると思います。1970年代の米国では株価が長期低迷し、「株式の死」と呼ばれましたが、これからは世界規模で「株式の死」が起こるかもしれません。
というのは、これまで世界経済は、若い人が多く、人口が増えている途上国が原動力となって成長してきたからです。ところが、コロナ禍を受けて、各国は国境を閉ざしてしまいました。途上国の成長を、先進国が取り込めなくなったのです。
ワクチンが開発されても、医療体制が整っていない途上国に広く行き渡らせるのは難しいでしょうから、今のような新型コロナウイルス対策を続けている限り、先進国は途上国との経済交流を制限することになるのではないでしょうか。
世界経済の成長スピードが落ち、「株式の死」が起こるということは、世界経済の動きと連動するインデックスファンドの運用成績が下がるということです(日本株のインデックスファンドについては、構成企業の新陳代謝がまったく働かないという構造上の欠陥を抱えており、長期的に見て高いリターンは期待できないと私は考えています。日本では30年前から「株式の死」が起こっていると言ってもいいでしょう)。
しかし、厳選した企業の株を長期保有する、バフェット流の投資法をしていれば、もしそんなことになっても問題ありません。不景気になろうとも、株式市場全体が下落しようとも、長期にわたって利益を出し続ける企業はあります。そして、その企業の株価は、長期的に見れば、上がります。
ですから、重要なのは、長期的に利益を出し続ける企業を見極めること。世界経済の成長スピードが落ちれば、これまでは「そこそこ成長できていた企業」でも負け組に転落する可能性があります。コロナ禍前よりもさらに、企業を見極める重要性が高まっているのです。
ちなみに、株価の値上がりよりも配当に期待して株を買う人もいますが、配当の原資は利益です。利益に持続性がなければ、高配当も維持できません。また、配当を高くするということは、将来の成長のための投資を減らすことにつながります。このことは理解しておくべきでしょう。