アメリカに「ブラック企業」がない理由

ところで、こうした話をすると「ドライな外資系企業で働くなんて、とんでもない」とあからさまに拒絶反応をする人が多くいます。ただ、日本企業と外資系企業の両方で働いたことのある経験から言わせてもらうと、それは明らかに「食わず嫌い」です。少なくとも、「日本企業のほうが社員に優しい」というイメージは、完全に誤解です。

確かに外資系企業のほうが個人の業績に対してシビアだったり、社員の解雇を厭わないといった側面はあるでしょう。ただ、少なくともアメリカでは、日本でしょっちゅう問題になっている「ブラック企業」の話題はまったく聞いたことがありません。

理由は簡単で、人材の流動性が高いアメリカでは、社員をただ働きさせたり、暴言を吐いて服従させたりするような問題のある企業からは、すぐに人が辞めてしまうからです。つまり、ブラック企業は存在しえないのです。

私もモルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)時代に、部下をつい怒鳴ってしまうことがありましたが、その一方で「怒ってごめんね」とすぐに謝っていました。

優秀な部下に辞められたら大変です。このように、上司と部下の間に緊張関係があるのです。

終身雇用制がまだ継続されているのならば、多少我慢してでもブラックな企業にしがみつく意味もあったかもしれません。しかし、現在は大手企業ですらリストラに着手せざるを得ない時代です。「日本企業は社員に優しい」というイメージはもはや、過去のものなのです。

現在はコロナショックにより、人の移動が困難になっています。ただ、それは一時的なものであり、アフターコロナ時代はこれまで以上にグローバル化が進み、あなたの仕事にも確実に影響を与えるでしょう。今からそれに備えておくことを強くお勧めします。

藤巻健史(経済評論家)
(『THE21オンライン』2020年08月27日 公開)

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