7-9月のGDPはサービス業回復の遅れで市場予想を下回った

10月19日に発表された7-9月のGDP成長率は前年比+4.9%と、4-6月の同+3.2%からは高まったものの、市場予想(Bloomberg)の同+5.5%を下回った。GDPと相関が高い鉱工業生産指数は7-9月に同+5.8%へ高まったが、サービス業生産指数が同+4.3%にとどまり、未だ成長の重石となっていることを示した。 同時に発表された9月の経済指標は、固定資産投資の伸びが若干鈍化したものの、鉱工業生産や小売売上高は8月実績や市場予想を上回った。特に、鉱工業生産は前年比+6.9%(市場予想:同+5.8%、8月実績:同+5.6%)と、19年通年の伸び(同+5.7%)を上回る高い伸びとなった。“モノ”の生産は9月も順調に回復しているようだ。

図表1:GDP成長率、鉱工業生産指数、 サービス業生産指数

東洋証券
(画像=東洋証券)

注:2月数値は1-2月累計 出所:CEIC、中国国家統計局より東洋証券作成

サービス業の回復で10-12月は昨年並みの成長へ

9月の小売売上高が前年比+3.3%(8月同+0.5%)となり、消費の回復を印象付けるが、好調なのは“モノ”消費。外食は同▲2.9%にとどまるなど、サービス業の回復は遅れているようだ。ただ、9月の国内航空旅客数をみると、同▲2.0%(8月同▲16.4%)と、前年近くまで回復。人々のコロナに対する懸念が後退し、旅行に対する意欲が出てきたようだ。10月の国慶節の祝休日では1日あたりの小売売上高が同+4.9%と一段と高まった。今後はサービス業も遅ればせながら回復に貢献しよう。そうなれば、“モノ”、“サービス”共に回復し、10-12月のGDP成長率は、昨年並みの+6%を上回る成長に戻ると見込まれる。

図表2:小売売上高、外食、国内外航空旅客数

東洋証券
(画像=東洋証券)

注:小売売上高、外食の2月数値は1-2月累計 出所:CEIC、中国国家統計局他より東洋証券作成

第14次五カ年計画はIoTと消費にフォーカスへ

10月26-29日には党中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催され、来年から始まる第14次五カ年計画の方針が示される。第14次五カ年計画では、IoT(モノのインターネット)、消費などにフォーカスがあてられるであろう。今後10年間で、IoTを含む5Gの間接効果が年率24%増で拡大し、30年には10兆元(157兆円)を越えると見込まれる。IoTの推進に必要な5G投資は来年以降も更に拡大しよう。また、消費についても、25年にはGDPの約60%(19年は55%)を占めるとみられ、19年比ではオンライン販売等を中心とした新型消費が拡大しよう。

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(画像=東証証券)

出所:Bloombergデータをもとに東洋証券作成

「世界最大の経済大国」への期待感を織り込む相場へ

10月19日の中国株式市場は、7-9月GDP成長率の発表前は上昇していたものの、発表値が予想を下回ったことを嫌気し、その後上げ幅を縮め、本土市場は前日より低下して引けた。 13日に発表されたIMFの「世界経済見通し」の米中の予想成長率を使い計算すると、中国のGDPは28年に米国を上回り世界最大の経済大国になるとみられる。すなわち、第14次五カ年計画(21-25年)は、中国が世界最大の経済大国になるための重要な計画といえよう。中国株式市場は5中全会を控え、次第にしっかりとした基調に戻ると見込まれる。

白岩千幸
東洋証券 シニア・エコノミスト/ストラテジスト
東京外国語大学時代にエジプト留学、卒業後に大手証券会社で自動車、機械等のアナリスト。
ハーバード大学大学院で開発経済学を専攻、世界銀行で調査、国連では途上国の開発プロジェクトに従事。その後、当時英国最大の運用会社で中国を含むアジア株ファンドマネージャーを経て、日本の大手証券会社で中国経済のエコノミスト。現在は東洋証券で中国経済、株式の調査に従事。CFA(米国証券アナリスト資格)、日本の証券アナリスト検定会員、中国経済経営学会会員、著書「ポスト団塊世代の資産運用」(共著)

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