コロナ禍で業績が落ち込む企業が多い中、リモートワークなどのデジタル・トランスフォーメーション (DX) 化が加速し、業績も株価も上昇している「SaaS銘柄」が世界的に目立っている。この記事では、「SaaS銘柄」に投資するなら知っておきたい指標 (KPI) を解説する。
SaaSとは ?
「SaaS」とは、「Software as a Service」の略で、顧客が必要なソフトウェア (アプリ) をネットワーク上のクラウド環境下で提供するサービスの総称だ。サブスクリプション (継続課金、通称サブスク) 利用料を課すビジネスモデルが多いため、安定収益源となるリカーリング・レベニュー (経常収益) を生み出す成長企業が目立つことから株式市場でも注目されている。
企業の「情報システム」は、2000年代半ばまでは自社所有のサーバーやソフトウェアで運用する「オンプレミス」がメインだった。「オンプレミス」は、カスタマイズし易くセキュリティでも優れているメリットがある一方で、コストが高く構築にも時間がかかるというデメリットがあった。
2000年代半ば以降、情報システムを「クラウド」に移行し、ネットワーク経由で運営する傾向が世界的に強まった。「SaaS」を使うことで、企業は開発期間やコスト、アップグレードなどの運営コストを抑えられるからである。
「SaaS」の強み 新型コロナウイルスの影響で、世界的にリモートワークの比重が高まっている。
「SaaS」の強みは、インターネット環境さえあれば、会社でなくてもどこからでもアクセスでき、チームや複数のユーザーでデータの管理・編集などのワークフローをこなすことが得意なことである。リモートワークでの働き方にマッチするため、Web会議システムのZoomやチームのコミュニケーションツールのSlackに代表されるような「SaaS」が売上を伸ばし、株価も上昇している。
SaaS企業の重要業績評価指標 (KPI)
SaaS企業への投資を考えたときに気になるのが今後の成長可能性だが、どこから判断したらいいのだろうか。SaaS企業でチェックしておきたい主な重要業績評価指標 (KPI) を3つ紹介する。
●1.ARR・MRR
SaaS企業で特に重視されるのはリカーリング・レベニュー (経常収益) という安定的に入ってくる収入だ。ARRは年間の経常収益、MRRは月間の経常収益を言う。SaaS企業には成長企業が多く、ARRでは成長の度合いがわかりにくいため、MRRを重要指標とすることが多い。
●2.ARPU
ARPUは1ユーザー当たりの平均売上だ。サブスクモデルの場合、ユーザー数を増やすのが最初の目標であるが、トップラインが伸びなくなってきたときに同時にARPUを増やすことが重要になってくる。
●3.チャーンレート (Churn Rate)
チャーンレートとは解約率のことだ。サブスクモデルの場合、リカーリング・レベニューを毀損する解約率が重要な指標になる。
米国と日本のSaaS企業10社 ! 注目企業を紹介
今注目の米国上場そして日本国内上場のSaaS企業にはどんな会社があるのだろうか。それぞれ5社ずつ、対比しやすい分野で上場企業を簡単に紹介する。
●米国で注目のSaaS企業5社
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ (Zoom Video Communications) 動画によるコミュニケーションプラットフォームを運営している。PCやスマホなど、さまざまなデバイスからビデオ会議やメッセージのやり取りが可能になる。
スラック・テクノロジーズ (Slack Technologies) チームコミュニケーションツールを提供し、グループのワークフローの効率化を可能としている。
ショッピファイ (Shopify) オンラインストアを始めるためのプラットフォームをクラウドベースで提供している。
オクタ (Okta) SaaSで様々なアプリを取り入れるとIDやPWの管理が面倒になるため、一つのIDでシングルサインオン出来るようにした統合ソフトを提供する。
ドキュサイン (DocuSign) 電子契約サービスを世界的に展開しており、約180カ国、56万社以上が導入している。
●日本国内で注目のSaaS企業5社
ブイキューブ<3681> Web会議システムの提供が主力。定額利用料のクラウド型がメインでPC、スマホ、タブレットなどで利用可能。遠隔治療やWebセミナー開催支援も展開している。
Chatwork<4448> クラウド型のワークフローを効率化するためのコミュニケーションツールを提供。テレワーク支援でZOOMと提供するなど中小企業のIT化をサポート。
BASE<4477> 中小事業者のネット販売を支援するプラットフォームを提供。決済機能も備え、デザイン性が高く機能的なネットショップを作成可能。
HENNGE<4475> クラウド上の様々なアプリを統合し、シングルサインオンが出来るサービスを提供。アクセス制限、メールの暗号化、保管など、セキュリティ対策も備えている。
弁護士ドットコム<6027> 弁護士の営業支援サイトと法律相談がメインだが、電子契約である「クラウドサイン」のプラットフォームが「はんこレス」の流れを背景に成長している。
盛り上がりを見せるSaaS銘柄の動向をチェックしてみては ?
紹介した企業を見れば解るとおり、日本でも米国でも同じようなテーマのSaaS銘柄が注目されていることが明白だ。今後もマーケットで注目される可能性が高いだけに、SaaS銘柄の内容、業績、株価動向には注目しておきたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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