子どものためにより良い教育環境を求めるのは、親として当然のことです。設備が充実した私立小学校や、教育レベルの高い国立小学校へ行かせたいと考えている人もいるでしょう。

しかし、小学校受験には「早すぎる」「意味がない」といったネガティブな意見もあります。

私立・国立小学校は、公立小学校と何が違うのでしょうか。何のために受験をするのでしょうか。受験までの努力を無駄にしないためにも、しっかり見極めることが大切です。

まず、小学校受験の「意味」を考えてみる

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(画像=miya227/stock.adobe.com)

小学校は義務教育です。そのため、学齢に達した子ども全員を受け入れられる公立小学校が用意されています。

一方、私立や国立の小学校に行くためには、受験や面接が必須になります。情報収集や受験対策も、それぞれの家庭で行わなければなりません。受験のための通塾期間は、年中の4月からスタートし、入試本番が年長さんの10月から11月にかけてなので約1年半となります。小学校受験にともない必要になってくる費用は幼児教室や塾の授業料、模擬テスト代、問題集・ドリルなど教材費、受験の服やバッグなどが必要となり、トータルで約125万円かかると言われています。

なぜ、そこまでして小学校受験をしたいと考えるのでしょうか。まずは、それぞれの学校の違いを確認しておきましょう。

公立・国立・私立小学校、それぞれの特徴

公立小学校は、各地方公共団体の教育委員会が管理・運営しています。全国に設置されており、分校も含めると約2万校です。

国立小学校は、国立大学の教育学部などの研究活動の場として設置されています。国立大学の附属校は、原則47都道府県すべてにありますが、小学校とは限りません。

私立小学校は民間の学校法人などが運営しており、それぞれ特色が異なります。

-通学可能な地域が異なる

通学は小学生に体力的な負担をかけるため、学校を選ぶ際は通学時間や安全を考慮することが大切です。

<学校数と通学地域>

公立小学校国立小学校私立小学校
学校数1万9,432校69校237校
通学地域学区域制地域制限あり
(学校による)
地域制限なし
(学校による)

公立小学校には、それぞれ学区域が決められています。住所によって割り当てられる学校は通常1校ですが、学区域の境界に住んでいる場合は複数の小学校から選択できる場合もあります。

国立小学校は、居住地区・地域や通学時間などに制限を設けているところが多いです。中には入学から卒業まで、指定された地域に必ず居住する旨を明記しているところもあります。

私立小学校は、一般的に居住地域に制約はありません。ただし、通学時間に制限が設けられているところが多く、あまりに遠方からの通学はできないのが一般的です。

-学費が異なる

学費については1年分だけでなく、卒業までの総額も把握しておくことが大切です。

<1年間に支払う学校教育費用の平均額>

公立小学校国立小学校私立小学校
授業料・学校教育費用約10万円約10万~25万円約100万~150万円
6年分約60万円約60万~150万円約600万~900万円

公立小学校は、授業料が無料です。ただし給食費や教材費、行事費などで、年間10万円程度は必要です。

国立小学校も公立と同じく授業料は無料で、教材費などがかかります。制服や学用品が指定されている学校が多いため、新規購入や買い換えなどで意外と費用がかかります。また、学校によっては教育機関への寄付金を募っているところもあるため、年間10万~30万円程度を見込んでおきましょう。

私立小学校は、一般的に授業料や施設費、行事費などが高めです。制服や学用品も指定され、学校によっては寄付金などが必要になることもあります。年間100万~150万円ほど、6年間通うと600万~900万円ほどかかります。

-入学選抜方法が異なる

公立小学校は学齢に達すれば入学できますが、私立・国立小学校は入学選抜を受ける必要があります。

<入学選抜方法>

公立小学校国立小学校私立小学校
入学試験なしありあり
入学時抽選なしあり
(学校による)
なし
(学校による)

国立小学校では、試験のほかに抽選を行うところもあります。抽選回数やタイミングは、学校によって異なります。抽選は運です。どんなに試験対策を頑張っても受験資格すら得られないこともあり、試験結果がよくても抽選に漏れてしまうこともあります。

私立小学校は、多くの場合簡単な試験で選抜を行います。試験はペーパーテスト以外に、行動観察や運動、絵画・制作などがあります。面接がある場合は、保護者も一緒に受けることになります。

私立小学校のメリット

私立小学校の最大のメリットは、「教育環境を自分で選ぶことができる」ことです。

それぞれの学校が掲げる教育理念に則った独自のカリキュラムや専門的な設備、各教科専門の教員など、高水準の教育を用意しているところも多くあります。

-設備が充実している

私立の小学校は、保護者が施設設備費を負担している分、教育設備が整っています。冷房・暖房の完備、体育館やプール、図書館の蔵書数、音楽室の楽器の種類など全体的に恵まれた環境で学ぶことができます。また、オンライン授業に必要な施設が充実しているだけではなく、1人1台タブレット端末を使用することも多く、時代に合った教育を受けることができるといえるでしょう。

-エスカレーター式に進学できる

一般的に、私立小学校は中学校や高校、大学など上級学校が併設されているところが多いため、上の学校へ進学しやすいこともメリットといえるでしょう。

しかし、中には外部受験生と同等の選抜試験が行われるところもあり、必ずしも確実にエスカレーター式に進学できるとは限りません。

-家庭環境の近い子どもと親しくなれる

保護者面接のある小学校では、親も審査を受けます。そのため、学校の基準をクリアした家庭の子どもが通っているという安心感があります。

また、同じ小学校に魅力を感じ受験をさせたという共通点があるため、教育熱心な家庭の子ども同士が親しくなれるというメリットもあります。

-学級崩壊などが起こりにくい

公立小学校と違い、私立小学校教員は頻繁な異動がありません。よって教員の質を保ちやすく、学級崩壊などが起こりにくいといわれています。

また、専門のカウンセラーなどが常駐しているところも多く、児童のケアも重視されています。

国立大附属小学校のメリット

国立小学校は、国立大学の教育学部などの研究活動の場として設立された教育研究機関です。大学や教育学部で研究している最新の教育を、安い学費で受けられることが最大のメリットといえます。教員も熱心で、興味を引きやすく面白い授業が多いといわれています。

公立小学校のメリット

公立小学校では、地域差はあるもののカリキュラムなどは一定の基準があります。

最大のメリットは、学費が無料であることでしょう。また、家から近いため通いやすく、近隣に住む友達と同じ学校に行けるという楽しみもあります。

デメリットも見落とさない

どんなことでも、メリットがあればデメリットもあるものです。小学校は6年間通うため、入学してからデメリットを感じると、苦労することになるでしょう。よって、デメリットも見落とさずに把握しておくことが大切です。

-私立小学校のデメリット

学費の高さや家からの距離などをデメリットと感じることが多いでしょう。

また学校や地域によっては、保護者同士の付き合いが大変なこともあるようです。学校によっては、保護者の学校行事などに駆り出されることが公立と比べても多いという話もあります。

ママ友同士の付き合いの苦労は公立でもありますが、私立では出費を伴う苦労もあるかもしれません。

-国立小学校のデメリット

国立小学校は、保護者参加行事や行事運営の手伝いなどが多いことがデメリットとして挙げられます。PTA活動も多く、6年間で一度は何らかの役職を担う必要があるところもあります。また学童のないところが多いため、共働き家庭では通わせるのが難しいこともあるでしょう。

また、小学校から大学まで附属校が続いているとは限りません。中学・高校がないところや、途中から男子校・女子校になってしまうところ、附属校があっても内部進学枠が少ないところもあります。そのため、進路情報は必ず確認するようにしましょう。

-公立小学校のデメリット

地域や年度によって、教育環境の質が変わることがデメリットです。

地域の治安状況などによって荒れている小学校もあれば、児童が問題なく過ごせる小学校もあります。教育熱心な先生が集まる年度もあれば、多くの先生が入れ替わることでギクシャクしてしまう年度もあるのです。

また、通っている児童はたまたま近隣に住んでいる子どもたちであるため、家庭環境や考えが異なります。学区域内での格差があることが、学校が荒れる原因になっているところもあります。

中には、「地元の公立小学校に行かせたくない」という理由で小学校受験を検討する家庭もあるでしょう。

進路の選択肢は、多様化している

私立や国立小学校を受験する理由には、「高校受験や大学受験で苦労させたくない」という親心もあるのではないでしょうか。

しかし、デメリットのところでもお伝えしたように、必ずしも進学に有利とは限りません。また、最近は卒業後の進路が多様化しています。中学受験に強い私立小学校に通わせて、別の有名私立中学校への進学を狙う家庭もあります。

小学校だけでなく、その先の進路も見据えて受験を検討することが大切です。

意味を持たせられるかどうかは自分次第

一般的に、小学校受験は親の意志から始まります。自主的に調べたり検討したりするのは親や祖父母でしょう。しかし、実際に通うのは子どもです。

子供にどういった教育環境を提供するのかが重要であり、学校の理念と各ご家庭の教育理念とがうまく重ならないと、意味を持たせることはできなくなります。合格した小学校に通い始めてから「受験なんて意味がなかった」と後悔しないためにも、じっくりと検討したいものですね。(提供:Wealth Road