投資にはさまざまな種類がありますが、投資の目的は1つです。それは資産を増やすことに尽きるでしょう。この目的に最も近いとされているのが、株式投資です。株式投資は富裕層への近道ともいわれているのですが、それはなぜでしょうか。
株式投資のなかでも長期投資は王道の勝ちパターンと見られ、すでに多くの投資家が資産を増やすことに成功しています。なぜ株式投資なのか、なぜ長期投資が有利なのか、その根拠を解説したいと思います。
目次
儲かる投資先は「株」、長期投資が儲かる理由とは?
なぜ、株式投資だと利益を出しやすいのでしょうか。そのなかでも長期投資が有利である理由について概念を理解していただきましょう。
「数ある投資対象のなかでも株式のリターンが大きい」(ジェレミー・シーゲル)
アメリカの経済学者であり、投資に対する造詣が深いジェレミー・シーゲル博士は、自身の著書によって幾度となく株式投資の優位性を説いています。数ある投資のなかでも株式が最もリターンが大きく、配当を再投資することによってリターンが最大化するとも述べています。
投資は長期で続けたほうが利益を出しやすい
投資には「時間を味方につける」という考え方があります。短期よりも長期的に続けたほうが利益を出せる可能性が高くなるため、可能な限り投資は多くの時間を確保することが望ましいでしょう。
その理由は後述しますが、長い時間があれば相場の変動によって値上がり益を出せるチャンスは多くなりますし、株を保有することによって得られる配当収入も多くなります。
コストの面を考えても、短期的に多くの売買を繰り返すよりも長期的に保有し続けるほうが手数料の発生回数が減るため、低コストです。
税金面でも「働くより税金が安い」場合がある
働いて得られる収入には、所得税がかかります。所得税には累進性があるため、所得が高くなるほど税率が高くなる仕組みになっています。こちらは、所得税の税率一覧です。
▽所得金額と所得税の税率および控除額
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
ご覧のように、所得金額が高くなるのにつれて税率も高くなっています。4,000万円以上になると、最高税率の45%となります。一方、株式投資による利益に対する税金は、売買益、配当益ともに20.315%です。もし株式投資で年間4,000万円の利益を上げたとしても税率は変わりません。
この水準になると「働くより税金が安い」という現象が起きるので、所得の高い人のなかには株式投資に取り組む人が多いのです。仮に株で損をしたとしても、それを所得から減ずることができるので、いずれにしても税金面でのメリットがあります。
長期投資で大事なポイント4つ
株+長期投資という最も安全かつリターンを大きくできる投資において、重要なポイントは4つあります。この4点をしっかりと押さえておけば、長期投資によって利益を残していくことができます。
長期投資のポイント1:勉強は必要と心得よう
株式投資はギャンブルではないので、ヤマ勘で売買して勝てるものではありません。しかしその一方で、勉強をして知識を身につけ、経験を積めば確実に勝率は高くなります。
楽をして短期的に儲かるものなどないと心得て、努力を惜しまないスタンスを持ちましょう。
長期投資のポイント2:優良な投資先を選ぶ
株式市場には膨大な数の銘柄が上場され、取引されています。このなかから優良な銘柄を選ぶことが重要で、そのためには財務体質やビジネスモデル、利益率など企業活動が健全かつ将来も有望であるかを精査しましょう。
特に長期投資なので、将来性は重要です。未来のことは誰にもわかりませんが、投資先が描いているビジョンや技術、ノウハウ、さらには外部要因などを検討して長期にわたって成長していく企業を選びましょう。
長期投資のポイント3:コントロールできる「コスト」を低くする
税金など固定されたコストは動かしようがありませんが、自分でコントロールできるコストは可能な限り低くする意識を持ちましょう。株式投資でコントロールできるコストとしては、証券会社の取引手数料が挙げられます。証券会社によって手数料体系が異なるので、ご自身の投資スタンスに最も合致した証券会社を選びましょう。
数ある証券会社のなかでもネット証券は維持コストが抑えられているため、取引手数料も安く設定されています。特にSBI証券や楽天証券、マネックス証券といったネット証券大手は競争関係にあるため、各社魅力的な手数料を設定しています。
長期投資のポイント4:コントロールできる「リスク」を低くする
コストともう1つ、自分でコントロールできるものがあります。それは、リスクです。株式投資は元本保証ではありませんが、投資の方法によってはリスクを適切に管理することができます。
長期投資の強みを発揮できる投資方法としておすすめなのが、ドルコスト平均法です。ドルコスト平均法とは毎月や毎週といった一定の期間ごとに一定額を投資し続ける方法のことで、株など価格変動のある金融商品を買い進めるのに適しています。
一度に手持ち資金のすべてを投じるのではなく、一定額ずつ買い増していけば安いときに多く買い、高いときには少なく買うことで取得価格を平均化することができます。これが長期になればなるほど価格変動リスクが平均化されていくので、長期投資においてはぜひ活用したい手法です。
長期投資のメリット・デメリット
株式投資に長期的な視点で取り組む長期投資について、ここではメリットとデメリットのそれぞれ3つずつを解説します。
長期投資のメリット3つ
・長期投資のメリット1:複利効果で資産が増えやすい
長期投資では複利効果をいかすことができます。複利効果をいかすと、運用によって得られた利益を再投資すると運用元本がどんどん大きくなっていくため、同じ利回りであっても加速度的に資産を増やしていくことができます。株式投資では配当収入を使って株を買い増していくと、複利効果を発揮できます。
・長期投資のメリット2:取引手数料の発生回数が減る
デイトレードのように短期売買を何度も繰り返しているとその都度取引手数料がかかるため、どうしてもコストを意識せざるを得ません。しかし長期投資であれば買った株を長期的に保有するため、取引手数料の発生回数が大幅に減ります。これによってコストを抑え、トータルリターンを増やすことにつながります。
・長期投資のメリット3:時間がない人でも手掛けやすい
短期売買ではチャート画面に張り付いてトレードをすることになりますが、長期投資の場合は短期的な株価変動に関係なく保有し続けるため、忙しくて株式市場を見ている時間を取れないという人であっても無理なく続けることができます。
長期投資のデメリット3つ
・長期投資のデメリット1:短期的な利益確定が見込めない
短期投資では小刻みに利益を確定していきますが、長期投資は原則として株を保有し続けるため、短期的な利益確定は見込めません。配当収入は確定利益ですが、株価の上昇によって出ている利益は含み益であり、それを売るまでは確定しません。
・長期投資のデメリット2:短期的な値動きに一喜一憂する人は継続が難しい
デイトレードなど短期売買を好む投資家の多くは、株価の変動に対してとても敏感です。しかし長期投資は短期的な株価の上下にはあまり関心を持つ必要がないので、逆に短期的な値動きに一喜一憂してしまうようなタイプの人には向いていないかもしれません。
日々の値動きを気にすることなく長期的に株を持ち続けることが苦にならないメンタルは、長期投資をするうえで重要です。
・長期投資のデメリット3:銘柄選びに失敗すると投資を続けても利益が伸びない
株式投資は銘柄選びで決まるといっても過言ではなく、それは長期投資においても同様です。むしろ長期投資の場合は銘柄選びの影響が長期にわたって続くため、結果の差も大きくなります。もちろん時間はたくさんあるので途中で軌道修正をすることは十分可能ですが、最初に銘柄選びに失敗したままだと長期投資をしてもそのメリットは得られないかもしれません。
税制メリットも大きい長期投資向きの「NISA」とは?
長期投資にはもう1つ、税制面で優遇されるメリットがあります。名前を見聞きしたことがある方は多いかもしれませんが、それは「NISA」(ニーサ、少額投資非課税制度)や「iDeCo」(イデコ、個人型確定拠出年金)です。iDeCoについては次章で触れますので、ここではNISAについて解説します。
一般NISAの概要
NISAとは一定規模までの投資による利益を無税にする優遇制度のことです。先ほど株式投資による利益には20.315%の税金がかかると述べましたが、NISAではそれが非課税になります。NISAには一般NISAやつみたてNISAなどがありますが、ここで解説しているのは一般NISAについてです。
一般NISAで非課税になる枠は、1年で120万円までです。これを最長で5年間適用できるので、合計600万円までの非課税枠を利用することができます。
一般NISAのメリット、デメリット
一般NISAのメリットは、なんといっても最大で600万円まで使える非課税枠です。20.315%の税金がかからないので、利益が大きいほどより一層のメリットを享受できることになります。
デメリットとして知っておくべきなのは、1人1口座までというルールです。金融機関の口座は1年単位でしか変更できないので、実質的には全期間を同じ金融機関で利用するのが好ましいでしょう。
また、NISAの専用口座での運用で損失を出したとしても、その損失を本業収入や他の投資による収入などと損益通算することはできません。こちらもデメリットに含まれるでしょう。
一般NISAで株式を購入する際に意識したいこと
株式投資に一般NISAを適用する場合には、注意したいことがあります。それは、年間120万円の非課税枠です。個別株を購入する際に、その購入代金が120万円を超えるとNISAを適用することができません。
たとえば、購入価格が130万円の個別株を購入すると、それは非課税枠を超えているのでNISAの適用外です。購入価格が50万円程度になる個別株を2銘柄買ったとすると、残りの非課税枠は20万円程度なので、3つめの銘柄を購入するのに50万円を使ったとすると3つめについてはNISA適用外になります。
株を選ぶのが難しい人は「つみたてNISA」や「iDeCo」で「投資信託」を
株式投資の成否は銘柄選びで大半が決まるわけですが、数千銘柄あるなかから理想的な銘柄を見つけるのは決して簡単なことではありません。特に初心者の方は銘柄選びで苦労してしまうかもしれません。
そんな方におすすめなのが、投資信託です。投資信託であれば自分で個別銘柄を選ぶ必要がありませんし、つみたてNISAやiDeCoといった税金面での優遇を受けることができます。
投資信託とは?
投資家から集めた資金をファンドマネージャーと呼ばれる担当者が運用し、その利益を投資額に応じて分配するのが投資信託です。投資信託にはさまざまな銘柄があって、それぞれ「何で運用するか」が設定されています。
運用対象には株式や債券、不動産などがありますが、そのなかから株式で運用する投資信託を選べば、実質的に株式投資をしているのと同じことになります。
つみたてNISAとは?
NISAの一種に、つみたてNISAがあります。これは名称のとおり長期的に資産を積み立てていくのに適した制度で、非課税枠は毎年40万円までと一般NISAと比べると少ないですが、最長で20年間まで適用することができます。少しずつ積み立てて資産形成をするには、一般NISAよりもつみたてNISAのほうが適しているといえるでしょう。
一般NISAでは株式投資による利益も対象になりますが、つみたてNISAは投資信託とETFのみです。このことも、投資信託を用いて間接的な株式投資をしたい方に適している部分です。
つみたてNISAの対象商品は、金融庁のホームページからいつでも参照することができます。
iDeCoとは?
つみたてNISAと並んで、税制優遇を受けながら資産形成ができる制度として有名なのがiDeCoです。積み立てによって投資信託を購入するとそれが自分専用の年金の掛け金となり、その掛け金は全額が所得から控除されます。そして運用益も非課税になるため、つみたてNISAよりもトータルでの節税メリットは大きくなります。
iDeCoでは投資信託だけでなく定期預金や保険商品も対象になりますが、利用者から最も人気があるのは投資信託です。インデックス型といって株価指数など市場全体の値動きと連動するタイプの投資信託を長期的に積立投資していけば、市場全体の成長を資産増につなげていくことができます。
iDeCoの対象商品、取扱商品については銀行や証券会社など金融機関によって異なるため、それぞれの会社のホームページでご確認ください。金融機関のなかでもネット証券は取扱商品数が多いので、より多くの選択肢から選びたい方はSBI証券や楽天証券などのネット証券がおすすめです。
まとめ:これから儲けたいなら「株」を「長期投資」で狙おう!
市場全体が今も成長を続けており、値上がり益だけでなく配当収入も狙える株式投資は、最もリターンを獲得しやすい投資です。しかも長期投資であればリスクをうまく分散しながら着実に資産を増やしていけるので、間接的な投資方法である投資信託も含めて税制優遇制度を活用しながら資産形成をすすめていくのがよいのではないでしょうか。
文・田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。