本記事は、野呂 エイシロウ氏の著書『「話がつまらない」をなくす技術』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
- 頭がよく見える人は、企画書の3ページ目から説明する
- おバカに見える人は、1ページ目から説明する
最初の15分が経過したあとの、次の15分、つまり第2のパートでは、いきなり本題に入るべきです。用意していた提案書は、ここで初めてバッグから取り出します。オフラインなら画面の共有です。
初めから資料を机の上に出しておくと、相手は冒頭からその存在がずっと気になるため、第1のパートが盛り上がりに欠けてしまいます。だから提案書は、第2パートで本題に転じるときに出します。
しかしさすがに、提案書に、
企画案 タイトル/○○○○ 概要/別途説明します 価格/300万円
とだけ書くわけにはいきません。相手が会社に帰ってからその提案を上司にきちんと説明できるように、ペーパーには本題に入る前にデータやトレンドなどの前フリを書いておいたほうがいいわけです。
余談ですが、大物になってくると、こんな超簡潔な提案書さえないことも。
某大物脚本家の長期ドラマ(誰もが知っている人気ドラマ!)の企画書は、ペラ1枚に、タイトル、脚本・演出家の名前、主なキャストが書かれているだけだったそうです。
テリー伊藤さんによる『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の企画書を以前見せていただいたのですが、わずか2、3ページの紙に、番組タイトルと出演陣、そして「世の中は元気がないから、テレビの力で元気にしよう!」的な企画趣旨が書いてあっただけでした。にもかかわらず、それで問題なく通ったそうです!
でも、そんなことが許されるのは、誰でも名前を知っている著名な人を使った、絶対にはずさないであろう企画だけです。
企画書は3ページ目から読んでもらう
先ほどもお話ししたように、企画書は、提案の場にいなかった人があとから読んでもアウトラインがわかる程度に、企画趣旨や内容の詳細、根拠となるデータや資料などの段階を踏んで、最後に価格や条件を書くのがマナーです。
でも、現場で説明を始める際には、前フリをくどくどと説明するのはNGです。これをやってしまうと、相手はすぐに飽きて、ページをどんどんめくっていってしまいます。
企画趣旨というものは、1ページ目に「新型コロナの感染拡大以降混迷の度合いを深めていた日本経済は、GoToキャンペーンでようやく復活の道を歩きはじめたかに見えます…… うんぬん」などのように書かれていることが多いものですが、これははっきり言って、ただのイントロであり、もっと言ってしまえばお飾りです。
僕なら、第2パートの冒頭で本題に触れたら、すぐに、
「お手元の企画書ですが、最初は飛ばして3ページ目からでよろしいですか?」
と確認を求めます。相手もすぐに僕の意図を察してOKを出してくれます。
相手だってビジネスパーソンです。企画書は読み慣れていますし、作り慣れてもいます。最初に書かれている企画趣旨はえてして形式を整えるためのものであり、大した意味がないことを知っています。
そんなものは飛ばして早く本題に入ったほうがいいし、そのほうが実のある話をする時間が増えます。そして何より、お互いそのほうがスマートに見えます。
途中の資料も飛ばしてしまうことがあります。マーケティングのデータなど、しっかりした相手であれば百も承知のことです。しかし紙の企画書では一応収録しておかなければいけませんから、「もちろんご存じですよね」と軽く触れるだけで次に移ります。
これは、「あなたの実力を認めています」という、敬意の表明にもなるわけです。
ワシづかみポイント
企画書には、形式を整えるための前フリが多い
口頭で説明するときは、大胆に省いて本題から入れ!
- 頭がよく見える人は、アポが早く終わることを「いいこと」と考える
- おバカに見える人は、アポが早く終わると不安になる
さて、残りの30分、3番目と4番目のパートをどう使えばいいのか。第2パートで説明を終えられれば、第3パート以降は雑談でも世間話でもいいですし、打ち合わせ自体を早く切り上げてしまっても構いません。
もし第2パートでビジネスの話が終わらず、相手にもまだ聞こうとする気持ちが残っていると感じられるなら、次のパートも引き続き説明に費やしてください。ただ、僕なら場の緊張をゆるめたり、おみやげのお菓子をすすめたりするでしょう。
なぜ、1時間のテレビ番組には4回のCMゾーンがあるのか? CMの本数さえ変えなければ、別に2回でも、5回でもいい気がします。
15分ごとになっている理由は、多くの人にとってそのくらいの時間が集中力を持続できる限界だと考えられているからです。
自分からの提案が一通り終わっても、相手がそそくさと席を立つ様子がなければ、「今日はこんなところです。ありがとうございます。ところで、最近ゴルフの調子はいかがですか?」などと世間話を振ってみます。
第2パートでは、身を乗り出して話をするイメージですが、この第3パートでは緊張をゆるめて席に寄りかかって話すイメージです。
すると空気までゆるんで、「野呂くん、さっき300万って言ってたけれど、少し要素を削って200万くらいのパッケージにすることはできないかなあ」なんて、核心めいた本音が漏れてくることもあります。または、次回以降の商談を提案されたり、「とっておきの情報」を教えてもらえたりすることもあります。
できるビジネスマンは颯爽と去っていく
第3パートで、ひとしきり雑談も終わりました。こうして予定の終了まで15分余ってしまったら、「じゃあ、ちょっと早いですけど今日はこのへんで」という感じで締めてしまえばいいと思います。
極端な話、第1のパート15分のネタが5分で爆笑を取り、第2のパートの15分でビジネスの話も滞とどこおりなく終了したのであれば、1時間の約束を20分で終わらせることになります。無理に1時間をフルに使うより、僕はむしろこのほうが有益だと思います。時間が余るのを不安に思う必要はありません。
1時間の予定が20分で片づけば、それは相手に40分の時間をプレゼントしたことになります。相手の収入を時間あたりに直せば、40分拘束した場合の料金がいくらになることか。それが複数人いれば相当のコストです。そのコストを使わせずに、かつ自分にも40分の余裕ができたのですから、みんな得したことになります。
空いた時間を使って、ネタ作りのために、街に出ればいいのです。
こういうビジネスパーソンこそ、相手には魅力的に映ります。パッと笑わせてくれて、ビシッとビジネスの話をし、颯爽と去っていくんですから。
反対に気をつけなければいけないのは、すでに本題が終わっているのに、雑談が盛り上がっていることでアポの時間を勝手にはみ出してしまうこと。
相手が喜んでいるからといって、断りもなく勝手に時間を延ばすのはNGです。必ずアポの時間が終わる前に「そろそろお時間ですが、大丈夫ですか?」と声をかけるようにしてください。
ワシづかみポイント
早く終わったら、相手次第で雑談を振るのもよし
ただし、無断延長はNG!
学生時代に「現役の学生」を武器に電機メーカー、広告代理店との会議に参加。学生向け家電企画の立案、宣伝、PRに携わる。その後、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。『ザ!鉄腕!DASH!!』『奇跡体験!アンビリバボー』『ズームイン!!SUPER』などに携わり、テレビ局独特の“笑い”にあふれた会議で、話し方や雑談力、提案力を鍛えられる。放送作家としての「番組をおもしろくするネタづくりのノウハウ」をいかし、30歳の時から“戦略的PRコンサルタント"としての仕事をスタート。
企業の商品やサービスを一般の人に「おもしろそう!」「欲しい!」と思ってもらうような独自の戦略立案を行っている。
クライアントには、「SoftBank」「ライフネット生命」「GROUPON」「Expedia」「ギルト・グループ」「hulu」「Folli Follie」「ビズリーチ」「ルクサ」をはじめ、金融機関、自動車会社、アパレルブランド、飲食店など、国内外の企業250社以上があり、“かげの仕掛人”として活躍している。笑える講演も人気を呼んでいるが、引き受けるのは月に1度まで。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
- 話のおもしろい人は「相手」を主語にする! さんまに学ぶ会話術
- 「共犯関係」に仕立て、相手を巻き込む方法とは
- 「ボケ」が最強の武器になる! 笑いを生む連想ゲームとは
- 「会社の名前」ではなく自分を語る、会話が続く人の自己紹介術
- 頭がいい人のプレゼン法とデキるビジネスマンの「時間泥棒」回避術
- 「結論」を語らない.... なぜか好かれる人の会話の秘密
- メールは「タイトル」で9割決まる! SNS時代の最強メールとは
