世界経済の発展に欠かせない女の子のポテンシャル

プラン・インターナショナル

世界銀行が2018年に発表した報告(※1)では、「女の子の教育機会が奪われる」ことによる生涯生産性と生涯所得の損失は、世界全体で15兆(約1680兆)~30兆ドル(約3360兆円)に上るという。

これは裏を返せば、世界中の女の子に対する教育機会の保障が、女の子たちへの権利が守られることはもちろん、世界経済の発展に多大な好影響をもたらし得るということだ。そのために、今あるジェンダーの課題を解決していく必要がある。特に途上国においてはジェンダーギャップが大きく、女の子、女性の権利が蔑ろにされている現状があるという。

そんな中、女の子を取り巻く課題の解決を中心に、世界70カ国以上において途上国支援を行っているのが国際NGOプラン・インターナショナルだ。今回は支援活動の内容、そして活動が社会・経済にもたらす効果について、プラン・インターナショナルでプロジェクトの案件形成、進捗管理などを担当されている馬野裕朗(うまの・ひろあき)氏にお話を伺った。

女の子は活動地域における「取り残された人々」

プラン・インターナショナル
(国際NGOプラン・インターナショナル 馬野氏)

―プラン・インターナショナルは女の子への支援に注力しながら活動しています。

日本のプラン・インターナショナルでは、「困難に直面している子どもや若者とりわけ女の子が、自分で人生を切り開いていけるよう、5年間で400万人を支援する」という目標を2018年~2022年の5ヵ年計画として定め、それに向けて活動しています。

途上国の活動地域には、様々な理由によって「尊厳のある人間らしい生活」をおくる権利が損なわれてしまっている「取り残された人々」がいます。その中の一つの大きなグループが「女の子」であるという認識です。私たちは展開する一つひとつのプロジェクトにおいて、男女の不平等な力関係のギャップを埋める、ジェンダーの視点を組み込んで活動しています。

―女の子、女性への支援によってどのような経済的効果が出るのでしょうか?

例えばWHOは「早すぎる結婚を10%減らせば、妊産婦死亡率は70%減る」という調査結果(※2)を発表しています。女の子や女性の死亡率を下げることによる社会的、経済的メリットは計り知れません。

アフリカのマラウイでは、女性が教育を受け、男性と同じように農作業の決定に参加できた場合、収穫高が約7.3%向上したという事例(※3)があります。

女の子、女性への支援が経済的なメリットを生むことは、これまでの統計を見ても明らかになっています。

―途上国支援による経済的インパクトはありますでしょうか?

途上国は経済的に大きなポテンシャルを秘めています。「BOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)」という言葉をご存知でしょうか。世界の中で、所得が最も低いが、人口の比率では多数を占める層のことです。世界人口78億人のうち、途上国人口の割合は約7割にも上ります。その7割のBOP層にもアクセスできるサービスやものが提供できれば、多くの人の生活環境の改善につながるだけでなく、世界の経済規模を拡大させる鍵にもなります。

ポテンシャルのあるBOP層が、より経済活動に関われるような環境を作っていくことが重要です。

女性の可能性を実感したネパールでの衛生改善プロジェクト

プラン・インターナショナル

―女の子、女性への支援によってもたらされる経済効果について、具体的な事例はありますでしょうか。

私自身が印象に残っている事例として、ネパールでの衛生改善プロジェクトがあります。

活動地域はほとんどが山と谷でできているような場所。遠くの井戸まで激しい高低差のある道を歩いていかなければ、水を手に入れることができないという状況でした。そして重労働の水汲みの役目は、不平等にも女の子、女性の仕事とされていたのです。一日平均5〜6回、朝から晩まで遠くの井戸まで何度も往復しなければならないという過酷な状況でした。

私たちの支援により、その地域で井戸から各々の家まで水道管を繋ぎ、家庭で水道の蛇口の水が使えるようになりました。

家まで水道が通ったことによって、1日に女性が水汲みに費やしていた時間が丸々空きました。 それによる一番の変化は、女性が外に出て経済的、社会的な活動に多くの時間を使うようになったことです。自分で商売を始めたり、水管理委員会のメンバーとして井戸の維持管理や水道料金の設定、徴収などの運営に関わったり、村の会議で積極的に発言するようになりました。

それを見ていた男性たちは、「すごい、女の人もこういうことができるんだ」と、女性が家の外で活動することによる地域への貢献や経済的なメリットがあることに気づいたのです。それ以降、男性が女性に敬意を持つようになり、女性が忙しい時は男性が代わりに料理や掃除をするなど、役割分担が次第に見直されるようになりました。

男女がお互いに尊敬し合うことが不平等な役割分担の是正につながり、女性が経済活動に参加することで、家庭の可処分所得が大きくなる。ひいては地域経済の水準も高まっていく。 女性の活躍がジェンダー平等を推進し、地域に経済効果をもたらす、大変印象に残る事例でした。

―プラン・インターナショナルの今後の活動についてお聞かせください。

途上国では現在、新型コロナウイルスの流行による移動の制限、学校の休校などによって、家にいるしかない女の子、女性が家庭内で暴力にさらされたり、不当に家事労働をさせられ学校再開後も復学できなかったりといったリスクも高まっています。女の子はコロナ前よりもさらに厳しい状況に置かれ、ジェンダー平等のために私たちが今まで積み上げてきたものが後戻りしてしまっているような現状があるのです。

そんな厳しい状況の中で、いざ学校が再開されても女の子が男の子と同様に学校に行けるような環境をあらかじめ作っておくなど、通常よりも意識的に、女の子が安心して学校に通うことができるような環境を作り、女の子の将来を閉ざさないよう取り組む必要があります。

より現地との連携を強め、ジェンダー平等促進のための活動を一生懸命行っていきたいと思っています。

プラン・インターナショナル
(国際NGOプラン・インターナショナル 馬野氏)

一人ひとりの寄付が女の子への支援、世界の経済発展の一助に

近年、欧米に比べ寄付文化が希薄だと言われてきた日本でも、徐々に個人寄付総額が増えてきているデータがある。東日本大震災を受けての意識変化や、ふるさと納税、クラウドファンディングといった新たな寄付の選択肢が増えたことが要因だ。また、寄付の対象によっては、税金が控除されるケースがあり、これも寄付額増加の要因になっていると言われている。

プラン・インターナショナルへの寄付は、寄付金控除の対象だ。申告によって寄付金の最大約4割の還付を受けられる。途上国への支援と自らの節税対策を両立して行うことが可能だ。

途上国の女の子への支援に注力しながら活動を続けるプラン・インターナショナル。馬野氏のお話からも、彼らが女の子や女性の社会参画を助け、世界経済の更なる成長を促す可能性を秘めた活動をしていることがお分かりいただけただろう。

一人ひとりの寄付が、その活動の一助となる。プラン・インターナショナルへの寄付をぜひ検討してみてほしい。

(※1) World Bank, 2018 July MISSED OPPORTUNITIES:THE HIGH COST OF NOTEDUCATING GIRLS https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/29956/HighCostOfNotEducatingGirls.pdf?sequence=6&isAllowed=y
(※2) Adolescentpregnancy,WHO,18Feb.2019.
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs364/en/
(※3) THE COST OF THE GENDER GAP IN AGRICULTURAL PRODUCTIVITY in Malawi, Tanzania, and Uganda (UN Women, UNDP, UNEP, and the World Bank Group, 2015)